第39話

アレンは汗を流して母屋に戻った。


アリアの部屋の方からギシギシと物音がする。


気にはなったものの勝手に入っては怒られそうなので我慢する。


それに都合もいい。


先ほど先輩から受け取った水晶を台座にセットして再生する。


映像はすぐに再生される。


水晶の中にはアリアが映っていた。


映像のアリアは一礼して素振りをはじめる。


素振りをするアリアはやはり綺麗だった。


夢中で映像を眺める。




「アレン・・・?」


後ろからアリアに声をかけられ、慌てて映像の再生を止める。


「アリア?」


「そんなに慌ててどうしたの?あっ。また、ユーリさんを見てたんでしょ」


「そうなんだ。道主みたいに綺麗な剣筋だから参考になるんだよ」


「そう・・・」


アリアはどこかほっとしているような気もする。


「先輩は?」


「先輩ならとっくに帰ったわよ」


「気が付かなかった・・・」


「私、汗かいちゃったから水浴びてくるね」


「うん」


アレンはアリアの水晶を隠してから食事の準備をする為に移動した。








食事をしつつアリアとアレンは雑談する。


「ずっと部屋にいたみたいだけどどうだったの?」


「うん・・・。色々教えられたわ・・・」


そう言うアリアの顔を少し赤い。


「そうなんだ」


「アレンの方はどうだったの?」


「今日は先輩達と素振りしてたよ」


「へぇ・・・。あの先輩達がねぇ」


「後はユーリさんの話をしたかな。皆から慕われてたんでしょ?」


「ユーリさんかぁ。そう言えば先輩達が荒れだしたのってユーリさんがいなくなってからのような・・・」


「僕もアリアがいなくなったら荒れちゃうのかな?」


「なにそれ・・・。大丈夫。私はいなくなったりしないから」


「うん・・・」


どちらともなく2人の距離は近づきキスをする。


唇と唇があわさっただけだが2人にはそれだけで十分だった。








食事も終わり後は寝るだけだと思ったらアリアが出かける準備をしている。


「今日も先輩達と・・・?」


「うん。教えられたことが出来てるかテストするって・・・」


「そっか。それじゃ、先に寝てるね」


「アレン。おやすみなさい」


「おやすみ」




アレンはアリアが出かけたのを確認してアリアの水晶を取り出す。


台座にセットして映像を眺める。


映像のアリアは真剣な顔で素振りを繰り返している。


眺め続けていると映像が終わり最初に戻る。


アレンはそろそろ寝ようと水晶を台座から外して隠してから横になった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る