第778話 クイーンの容態
「クイーンよ、少し身体に触るぞ」
「……グルル」
俺に対して警戒しているエンペラーウルフのクイーンも旧知の仲であるキャンディには心を開いているようで、俺の代わりにキャンディにクイーンの容態を確認してもらう。
「ふむ、目立った外傷はなさそうじゃな。じゃが身体の張りが悪い……かなり痩せておる」
「そうなの? 見た感じ結構ボリュームあるけど」
「エンペラーウルフの肌は密度の高い獣毛で覆われておるからな。見ただけでは分からんよ」
「なるほどなるほど……お、確かに」
「ワオン?」
試しにイッヌの身体を触ってみると、もふもふの奥に実際の身体の大きさを感じ取ることが出来た。
イッヌは……別に痩せてるって感じはないかも。さっきごはんも食べたし。
「体内の魔力の流れが滞っておるの……もしかしたら魔素代謝阻害やもしれん」
「魔素代謝阻害?」
「魔物は人間族と違い、大気や食物に含まれる魔素を栄養として摂取し、体内で魔力エネルギーに変換しておる。この流れがうまいこと機能していないようじゃ」
「魔素を摂取しても、身体の中でエネルギーに変換出来なくて栄養失調みたいになってるってこと?」
「そういうことじゃ」
ごはんを食べても栄養に出来てないのか……それは辛いな。
あ、でもいっぱい食べても太らないからダイエットしてる人には羨ましい症状かも。
まあ魔物はダイエットとか考えないと思うけどね。
「魔素代謝障害は老衰によっても発生するが、それでも今のクイーンのようにまったく栄養に変換できないくらい重度の症状になるのは通常ではほぼありえん。ましてや、クイーンはエンペラーウルフとしてはまだそこまで年老いてはおらん」
「何か原因があるってこと?」
「そうじゃな」
なんだろう、消化できない毒のある物を食べちゃったとか……お腹に寄生虫がいるとか?
でも栄養を寄生虫に盗られてるんじゃなくて、魔素はあるけど魔力に変換出来てないだけだからそれは違うか……
「フンフン!」
「どうしたのイッヌ?」
イッヌが小屋の外に移動し、何かを咥えてくる。
それは細長い金属製の容器だった。
「なにこれ」
「む? それは……もしや『魔弾』の薬莢か?」
「魔弾?」
「魔石に魔法効果を付与したものじゃ。風の魔石と火の魔石を組み込んだ魔道具を用いて高速で射出する攻撃アイテムじゃな」
「攻撃アイテム……」
もしかして、そういった魔道具を使って戦う冒険者がこの辺りに来たのだろうか。
「なるほど、クイーンが苦しんでおるのはこの魔弾のせいじゃな。おそらく魔素代謝阻害の効果を付与したものじゃろう」
「クイーンはこの魔弾を撃ち込まれてるってこと?」
「おそらくの。もう少し詳しく調べんと弾の位置などは分からんが、体内に埋没している場合、取り除かない限りこの症状は改善せんじゃろう……しかし魔弾を取り除くにも体力を消耗させてしまうかもしれん。せめてもう少し回復させてやりたいが……」
「回復かあ……」
なんかいい方法はないかな……魔素代謝阻害を一時的にでも無効化して、その間に栄養を補給してもらえればいんだけど。
エナジーディールを食べてくれる元気もなさそうだしなあ……点滴で栄養補給とか。
「ん、一時的に無効化か……」
そういえば昔、毒状態になってた魔物を俺のスキルで助けた記憶が……
「あ! 解毒生成だ!」
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