第765話 リフォーム
「おお、久しぶりじゃのうシュータ。最後に会ったのは20年前……」
「それ絶対違う人だから。ってか昨日も会ったじゃん」
スラムの広場でトンホーン丸焼き祭りを開催した翌日、アイテム職人のリッツさんが俺のアジトまでやってきた。
「ほっほっほ、ちょっとしたボケじゃよ」
「それはお笑いの意味? それともガチのやつ?」
「ワシの脳みそはまだまだ元気じゃよ」
「にゃ~」
「ねこたろうも久しぶりじゃな」
「ねこのすけだよ」
うーん、やっぱちょっとボケてきてる気が……あとでボケ防止のポーションを魔女のタフタさんにでも作ってもらおうかな。
「それで、うちに何か用?」
「昨日、雨漏りに困っとると言ってたじゃろ?」
「そういえばそんなこと言ったかも」
俺は王都下層区の北東にあるスラム街に住んでるんだけど、昨日そこの住民たちとトンホーンの丸焼きを食べながら最近の悩みとかを話し合ったんだよね。
そこで俺が住んでるガレキ山のアジトは雨漏りと隙間風が~っていう愚痴を言った気がする。
当たり前だけど、ただガレキが積み上がってる所に無理やり空間を作って住んでるだけだから不便なのは仕方がない事。
昔だったらそこまで気にしなかったかもしれないけど、今の俺はクロガネ寮での暮らしに慣れちゃったからちょっと気になるんだよね。
「昨日の料理のお礼がしたいっちゅうことで、スラムの連中からリフォーム工事の依頼を受けたのじゃ」
「俺の家の雨漏りを直してくれるってこと?」
「にゃー」
「せっかくじゃし、もっと快適にしてやろう。リッツ工房、久々の大仕事じゃ。お前らも気合を入れるのじゃぞ」
「「「おう!!」」」
アジトの外に出ると、そこには昨日会ったスラムの人たちが。
どうやらみんなで協力して俺の家をリフォームしてくれるらしい。
「みんな……ありがとう! よろしくお願いします!」
こうして、ガレキ山ハウスの劇的ビフォーアフター作戦が始まるのであった……まあ、普通に違法建築なんだけどね。
スラム街は王都の下層区周辺にあるごみ捨て場扱いで、一応王都の建築許可ルールの影響は受けないってことでスルーされてるらしいけど。
上手いこと王政をやっていくにはこういうエリアも必要なんだろうな。
……。
…………。
「さあやってきました、ガキ的ビフォーアフター。本日の悩めるお宅はこちらでーす」
「ガキ的やめてね」
ガレキ山ハウスのリフォーム工事が始まってから2日後、工事が完了したとリッツさんから連絡を貰った俺はねこのすけとふたりでスラム街へと帰ってきた。
ちなみにこの二日間は茶々丸くんの経営する『樂狗亭』で寝泊まりしてた。
まあ、正直言ってスラムじゃなくて樂狗亭にいれば雨漏りも隙間風も無いんだけどね。
「ナレーションを務めるリネンでーす。それでは早速リフォームが完了したシュータくんの家を見てみましょー」
「リネン姉さん、また仕事サボって変なことして……」
なんかよく分からないけど、リネンさんがリフォームしたガレキ山ハウスを勝手に紹介してくれるらしい。
「シルクは何しに来たの?」
「トラちゃんをモフりに来たのよ。2日間モフれてないから栄養失調で……」
「にゃ~」
シルクは何から栄養を摂取してるの?
「なんということでしょう! あれだけガレキが積み上がってゴミ山のようだった外観が……変わってないね」
「まあ、外観はね」
「続きまして、内装を見てみましょー。なんということでしょう! こちら……玄関兼、リビング兼、寝室兼、キッチンのワンルームですねー」
「にゃー」
「あっ間違えました、ニャンルームですねー」
「なにさニャンルームって」
リネンさんのお家紹介はめちゃくちゃだった。
っていうかさっきからなんかお酒臭いんだよな……飲んでるなこの人。
「おおーすごい! なんか壁とかちゃんと出来てる!」
「魔石の効果である程度気温調節をしてくれる壁を使ったから、夏でも冬でも快適じゃよ。魔力で点灯するランタンもサービスじゃ」
「ありがとうリッツさん!」
リネンさんの紹介はめちゃくちゃだったけど、家の中はかなりしっかりとリフォームされて快適空間になっていた。
リッツさんと、工事に協力してくれたスラム住民のみんなに感謝だね。
っていうかこれ、かなり良い素材使ってそうだけど……もしかしスラム住民って意外とお金持ちが多かったりするのだろうか。
「お! こっちはおトイレですねー。水洗魔道具は付いてないようですが、中々立派ですねー」
「それは地下牢遺跡と下水道に繋がってる穴だよ」
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