第760話 卒業式



「えー、であるからして……君たちの未来には、光と希望が満ち溢れ、無限の可能性が……」



「以上、学園長による式辞でした」



「あの、ワシまだ話して……」



「続きまして理事長の挨拶です」



「いえ~い! やはり卒業はめでたいのう! 実はワシも今年度で定年退」



「理事長に定年とかありませんので一生働いてください」



「えっ」



「以上、理事長の挨拶でした。続きまして……」



 春の終わり、学園の講堂に集められた俺たちは、長ったらしい学園長のお話しと絶望する理事長の顔を見ながらこれまでの学園生活を思い返していた。

今日は王立冒険者育成学園の卒業式。

遂に俺も、学園を卒業して冒険者になるときがやってきた。



「オレたちも卒業か……長かったような、短かったような……」



「……もう少し、薬草園で研究がしたかった」



「俺も、もう少し学食で研究がしたかったな」



「それは研究じゃなくてただのメシだろ……」



 ここまで一緒に頑張ってきた友人たちも、学園生活に思い思いの感想を呟いている。

入学式の時に40人だったクラスメイトは、3年経った今は30人ほどになってしまった。

入学試験の段階で狭き門な王立学園だけど、入ってからも厳しい授業や実習についていけずに学園を去ってしまった生徒がどうしても出てしまう。

それでも今年の卒業生は例年よりも多いらしく、俺の友人たちも全員一緒に卒業できた。



「卒業祝いに朝イチで色々仕込んできたネ。寮母さん達も料理作ってくれてるみたいだから、式が終わったら食堂でパーティーするネ」



「やったー!!」



「そこの卒業生、学園を出れることがそんなに嬉しいのですか?」



「あ、すいません……」



「「「あはははは!!」」」



 ツイルがテンション上がることを言ってきたから思わず式中なのを忘れて叫んじゃったよ。

いやー楽しみだなーツイルと寮母さんたちの料理。

卒業したら気軽に食べられなくなっちゃうし、ここでしっかり堪能しておかないと。



 とはいえ、やっぱ茶々丸くんたちの料理が食べられなくなるのは辛いなあ……食堂も季節限定メニューとかたまに出してくれるし、俺が卒業してから新メニューなんか出されたら羨ましくてしょうがないや。



「卒業しても、普通に学園来てメシ食ったりしていいのかな?」



「……シュータは、王立学園を宿付きの食堂かなにかと勘違いしてる?」



 まあ、俺にとってはこの世はでっかい食堂だからね。

どこにいたってメシを食う。食材が無くてもメシを食う。

クレパンは、食わない。



「続きまして、卒業生答辞。3年ゲオルク組代表、サテンさん。3年ザルティス組代表、シュータさん」



「「はい!」」



 あ、そういえば俺も答辞やるんだった。

いやー緊張するね。前世の時に小学校の卒業式出てた時は在校生側だったし、代表で送辞のスピーチとかもやんなかったし。

『たのしかったー』『しゅーがくりょこー』みたいなのやりたかったな……



「……以上で答辞を終わります。3年ゲオルク組、サテン」



 パチパチパチパチ!!



「よし、次は俺の番だな」



 サテンと入れ替わりで壇上に上がり、覚えてきたセリフを思い出す。

やっぱこういうのは紙を見ないで皆の目を見て大きな声で言わなきゃね。



「王立学園で過ごした3年間は、本当に美味しかったです!」



「楽しかっただろそこは……」



「……でも、シュータはずっと食べてた」



 ちょっと嚙んじゃったね。



「特に印象に残った思い出は、王立学園祭で行なわれたホットホグノーズ早食い大会で優勝できたことです!」



「直近すぎるネ」



「もっと他にあるだろ……」



 いえ~い! 卒業めでたい!



 __ __




 早食い大会の賞品で上層区の高級レストランに行って美味しいごはんを堪能した修汰……いや、修子ちゃん。

ちょっと時空水鏡の映像が乱れてその後の行動が分からなかったけど、食事マナーを特訓した甲斐があって良かったの。



 それはさておき、卒業おめでと~な第27章、完!

修汰くんの転生ライフはまだまだこれからだ! って感じなの。



 次章……遂に学園を卒業した修汰くん。

まずは冒険者ランクを上げるために色々なクエストを受けてみるみたいなの。

って、修汰くん! それは採取依頼の高級食材だから食べちゃダなの!

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