16話

結局、最後の戦いからは魔物に遭遇することもなく、無事セーフエリアに到着。

魔力も含めて、体を休めて翌日。プルソハへ出発することに。


────────────────


「どう? 魔物の気配はある?」

セーフエリアから出て、歩きながらナタリアは俺の方を向いて聞いてくる。

俺は、魔力探知を発動するが特段気になるようなものはない。

「いや、大丈夫そうだ。 これなら戦闘なしで森を抜けられるかもしれない。」

「そっか、じゃあもうすぐお別れだね。」


「あ、あぁ...そうだな」

数日一緒に戦ってプルソハへ共に向かっていたわけだが、いつの間にかお互いの本来の目的を忘れかけていた。

正直、森での戦闘が随分楽になったし、年も近かったしな。

下手に他の冒険者と一緒よりかは全然よかったと思う。

そもそも、ケメリカでは冒険者に見つかったらとんでもないことになってたとは思うが。


「そういえば、出会ったときは聞きそびれたけど...結局、レオンはプルソハに何しに行くの?」

げっ...そういえば、特に言ってなかったな。

ま、後で困らない程度に適当に言っておくか。


「あぁ、俺はちょっと調べ物をしにな。ケメリカ王国の文献を漁ってみたんだけど、なかなか目的のものが見つからなかったからさ。」

「へー、何調べてるのかは聞いても?」


なんなんだ、この人...

どんどん俺の痛いところだけ突いてくるじゃん...


「魔法だよ。魔法の研究。」

「魔法かー、でも戦うときは魔法使ってないよね。剣ばっか使ってたし。」

「まぁ、それは森だとどうしても周りへの影響がな。」


はぁ、そのうちポロッと余計なこと言っちゃいそうで、会話中に気が休まらないな。


「お、そろそろ森は終わりか?」

木々の間から、眩しい光と畑が見える。


「そうだね、本当に魔物は出てこなかったし」

ちょっとナタリアは残念そうにしているようだ。

俺としては会話を乗り切れて、ほっとしているんだけど。


そして、さらに歩き進んでいくと目の前に城壁が見えてくる。

「でけぇな...」

ケメリカ王国も決して小さくはないと思うが、それでもかなり差があるように感じる。



城壁の方へ近づいていくと、入り口の方には荷物を馬車に載せた商人らしき人たちに、他の冒険者の姿も見える。

やっぱり、人は多いしこれなら当分は見つからずに済むかもな。


「ここに並べばいいのか?」

「そ、冒険者登録証はあるよね」

「あぁ、荷物の中に入ってるはずだ。」


順番が回ってきて...

入国者の管理をしている兵士が話しかけてくる。

「冒険者の方ですか?」

「「はい。」」

二人そろって答える。


「それではお一人ずつ冒険者登録証の提示をお願いします。」

「じゃあ、私からでいい?」

「あぁ。」

ナタリアは俺に確認を取って慣れた手つきで登録証を渡す。


俺も今のうちに荷物の中から出しておかないとな。




「はい、お二人とも確認が終わりました。こちら入国許可証です。何かあった場合は、この国にいる間はこれで身分証明が可能になりますので、くれぐれもなくさないようにお願いしますね。」

「わかりました。」


「それと...」

と、兵士は一つ間を置いて


「冒険者の方でしたら、おわかりだろうとは思いますが、入国後冒険者ギルドの方でも認証を行うようにお願いしますね。そうしないと、この国にいる間冒険者としての活動は出来ませんので。」

「はーい、大丈夫です」


ナタリアは、こういうのに慣れているのか問題なさそうだが...

そこまで確認をしっかりやる必要があるのか?


いや、あんまりそういうのは表に出したりはしない方がいいな。

これで問題につながっても困るし。

それに、冒険者活動が出来ないと街で何かに巻き込まれたときとかにも、戦いだしたら...例え正当防衛だったとしても処理が面倒なことになりそうだしな。

一般人が冒険者を倒した!?とか騒ぎになっても面倒だし。


「じゃ、私はもう行くね」

「あ、あぁ」

「一緒に戦ってくれてありがとね!心強かったよ!」

「それは俺も一緒だ、ありがとな。」


ナタリアはそこで軽く微笑んで、

「じゃ、ギルド行くの忘れないようにね」

「あぁ、本当にありがとな」


手を振って、友達のところに行くのか、嬉しそうに走って行った。


さて、俺もちゃんと目的を果たさないとな。

もう、ここで見つからずに一生平凡に暮らせたらいいんだけどな...

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