第11話

「君を婚約者にしようと思っているんだけれど、どう?」


「むぐっ?!」


思わずのどに詰まらせてしまった。


何度か咳き込み、水を飲んで落ち着く。


「どう、って言われましても・・・(困る)」


そんな私の意図を読み取ったのか、殿下は言う。


「俺なら君の力になれる気がするんだ」


力になる?


なんのことだろうか。


「・・・殿下が決めたことには逆らえないのでは?」


殿下は苦笑する。


「そうだけどね。強制は嫌なんだ」


「・・・お母さまが許しません」


適当にいってみたのが悪かったのか、へえ?と黒い微笑みを向けられて視線を逸らす。


「でも、その、なぜ私に?」


殿下は黙ってから観念したように口を開く。


「君には嘘をつきたくないから言うけれど、ベルデース家を血縁関係が不可欠なんだ。いつまでも王宮が豊かなわけでもあるまいし」


・・・十分豊かそうでしたけれど?


というより、元日本人としてとても気になることがありまして。


「・・・側妃さんは、めとるんですか?」


すごい大胆なこと言った気がするけど、私は気になったのでじっと彼を見つめた。


殿下はふっと笑みを出す。


「ティアラ嬢だけで十分さ。もし君が断っていたら、君を側妃にしただろうけど」


なんだ、そういうことか。


私の殿下遠ざけていた理由3つ。


1.側妃とかなんかやだ。あこれ、元日本人。


2.悪役令嬢のいじめがわりと危険そうで怖い。


3.前世からして男嫌いがある。


このうちの1番はなんとかクリアみたいだ。


3番はまあ、半分くらいか・・・


「・・・考えて、みます」


もしここで仮にも婚約者にでもなってしまえば、悪役のいじめは多分10倍くらいアップする。


「そうか・・・ま、ゆっくり考えてくれるとありがたい」


にっこりとほほ笑まれてつい視線を逸らす。


この人、自分の美貌に自覚ないのだろうか・・・

やっぱりイケメンは危険だ。


そう思いながらレストランを後にした。

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