聴取音声データ 1-2

「・・・浅倉さん、あなたも卵子の提供をしたのね」


「はい」


「MISSION β betaベータとはなに?」


「ヒトの精子を実験体への受精。この試みは失敗ばかりだったと、わたしが配属したあとに過去の報告書を見ました。つぎの実験段階へ移るため、大野教授の助手、教え子でもあったわたしが研究での要素としても適任であり、必要だとも言われ・・・バックアップおよび卵子提供者としても定期的にドナーとして行いました。ベータとは・・・『実験体の精子を』ことです」


「なるほど・・・だから実験体のオスと、ヒトの卵子が必要だったのね」


「はい。同時に実験体のメスと、すでに受精した卵子、つまり受精卵の必要性は、もうすこし実験体の改良が必要だともおっしゃっていました。ゲノムの解析、遺伝子操作も。つぎに実行される研究の場合に備えてだそうです」


「あなたは、その・・・嫌じゃなかったの?」


「え?」


「じぶんの卵子・・・遺伝子を好きかってに使われることよ」


「・・・もちろん、一縷の不安、抵抗がないといえばウソになります。でもあのときは・・・また、大野教授とお仕事ができるほうが光栄だと思いました。そのずっと前から志願もしていましたし」


「たいしたものね」


「でも・・・まさかこんなことになるなんて。こんなのは・・・望んでいなかった・・・・・・」


「・・・その後はどうなったの?」


「以前の実験体での新鮮胚移植、および凍結融解胚移植は、どうしても胚の分割停止などがおきてしまい失敗ばかりでした。でも・・・・・・」


「どうしたの?」


「・・・私にも詳細はわかりません。でも、”健康な人間の女性”はじゃなかった・・・のです」


「あなた以外にもドナー・・・女の人がきたのね」


「はい。私以外に3人いました」


「・・・その3人はどうなったの?」


「・・・わかりません。私の知るかぎり研究所内で最初の同伴いこう、すがたを見たことはありませんでした」


「なるほど・・・その報告も上がってきていませんね」


「大野さん、単独でも研究していて、その詳細はだれにも分かりませんでっした。概ね、わたしが配属してから3年~4年ぐらい経ったころに、大野さんは新しい実験体を連れてきました。その子たちは・・・・・・」


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