痛い系なレイヤードスキル
ポムは、何度も何度も血を吐いた。
アンドレーの攻撃は、彼の予想を超えていた。
(まさかここまでやりやがるとは……)
命に別状はないが、後遺症を免れそうにない。
それほどの痛みであった。
ポムの仲間のひとりが、エアメールのスキルを使った。
彼は、冒険者の恰好をしていなかったが、
彼が、保安局に向かってエアメールを送り、通報したのだ。
ポムたちは、アンドレーにわざと暴力事件を起こさせ、警察に逮捕させようと目論んでいた。
アンドレーをはめて、牢屋にブチ込むつもりだったのだ。
想像以上の攻撃を受けてしまったが、狙い通りの結果になりそうだった。
アンドレーは、べつに逃げようとはしなかった。
すぐ近くに待機していたエミーリアたち3人と合流し、エディタを託した。
3人はエディタを連れて、避難した。
そうこうしていると保安官が駆けつけてきた。
アンドレーは、堂々と、自分のやったことを白状した。
彼には手錠がかけられ、猿轡がはめられた。
ソードマジカでは、逮捕されたものは、物理スキルを封じる手錠と、魔法スキルを封じる猿轡を強制される。
アンドレーはその恰好で、保安局に連行された。
その逮捕劇を見物するために、野次馬の人だかりが出来ていた。
彼ら彼女らは、アンドレーの唇と拳の色から、違反者だときづき、罵詈雑言を浴びせた。
「このクソ違反者! とうとう人に危害を加えたか!」
「おまえはソードマジカの敵だ!」
「そんな奴死刑にしちまえッ!」
当然のことだが、アンドレーは、顔色ひとつ変えなかった。
ポムは病院に緊急搬送された。
彼の応急処置にあたった病院の
「これはなかなか治りませんね」
ベッドで苦しむポムが言う。
「ふざけんなよ、ヤブ医者がッ!
ただの
さもないと父さんに頼んで職業ライセンスを剥奪してもらうぞ!」
「ただの物理攻撃スキルじゃない。
ポムの顔が固まった。
(レイヤードスキルだと!?)
レイヤードスキルは、スキル規制法によって禁止されている危険行為。
発動したスキルが終了する前に、別のスキルを発動させる行為のこと。
二つのスキルを重ねて使うことだ。
これをすると、スキルパワーのエネルギー波動が干渉しあい、予想不能の現象を起こしかねない。
予期せぬ災害が起きる恐れがある。
だから、絶対禁止なのだ。
アンドレーは、その禁忌を破った。
ポムを滅多打ちにした際、
このスキルは、回復能力を停止させる魔法だ。
アンドレーは、そのスキルを
その結果、ポムの腸に治療困難な傷がついたのだ。
飲み食いができない一大事だ。
ポムは、医師から症状の説明を受けると、もう人間とは思えない、鬼のような顔になった。
(おのれッ! アンドレー!)
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます