第参話 箒(ほうき)

放課後、一緒に図書係をしている時、転校生の少女は言った。


「私、魔法を使えるの」


彼女が手にしていた本が、ファンタジー小説だったので、冗談かと思って僕は話を合わせた。


「魔法使えるって、便利で良いよね」

「そうでもないよ、例えば、箒で移動するより、自転車の方が楽な時もある」


彼女は、かなり本気な顔して言った。

彼女の横顔を見て僕は

「下ネタトークをしてみよう」

とふと思った。


だって彼女の横顔、凄く色っぽかったんだもん。


初めての下ネタトーク・・・・。


今日の昼休み、彼女&その他大勢と鬼ごっこをしたから、テンションは上がったままだ。


チャンスだ!

クラスの変態野郎みたいに、下ネタトークで場を盛り上げるんだ!


「僕、箒になりたいかも・・・・」


なんか微妙な下加減の言葉を、僕は言ってしまった。


「いいよ」

「ん?」


僕は、状況を理解する前に、箒になっていた。

彼女は、箒になった僕をバトンの様に、くるりと回すと、僕に跨った。

僕は、「ムッキーーー 」と、怒りをあらわにした。


一応・・・本心とは裏腹に・・・ニヤニヤ。


だって、彼女の身体がすっごく柔らかいんだもん・・・


そんな僕に構うことなく、彼女はふわりと浮かぶと、図書室の窓を抜け、一気に雲の上まで上昇した。


その速さは、光速を超えるんじゃないかと思うほどの速さだった。

一瞬で、雲の上に到達して、彼女は僕から離脱。


僕だけ、さらに大気圏を突破、宇宙空間へ・・・

そして、僕はそのまま、箒星になってしまいましたとさ♪

って言うてる場合じゃない!


箒星ってのは、彗星の事。


大気圏を突破する寸前、彼女は僕に言った。


「あなたが地球に戻るのは1000年後よ。

戻ってきたら、私の子孫に人間に戻してもらってね。」

「なんて無茶振りだ!」


と言う僕のツッコミは、静かな宇宙空間にこだました。




つづく



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