第9話 私の豪運は魔導兵器を届ける。

奴隷ちゃんの不運は、明日には伝説級モンスターをこの街に呼び寄せるそうだ。

スペック的には、私の豪運と同等といった所か・・・。


「では、今晩中に山脈に退避するということで告知してもいいですか?」


「それが良いにゃ。」


「はっ、王国にもそのように伝達いたします。」


「ギルド長の就任日にお前も運のないやつにゃ。」


「ねー」

むしろ、有り余ってるぐらいです・・・。


「もっと危機感もてにゃ。奴隷を連れて避難するにゃ。」


「りょ。」


ギルドを出た私はすぐさま手をかざす。

すると奴隷ちゃんが出現した。

「ご、ご主人様!?どうしたんですか!?」


「マグナ・クエークが来るみたい!」


「えぇ、伝説の!?やっぱり私のせい・・・ですか・・。」

やはり貴族の出らしく、そこら辺の知識はあるようだ。


「大丈夫!とりあえず魔導兵器ってどんなのか教えて!」


「はい!」



街中で数回コケながらやっとのところで、私と奴隷ちゃんは城壁に設置された魔導兵器の前にたどり着いた。


それは前世のレールガンのような形状をしており同時に禍々しさを感じるデザインだ。


「付き合わせちゃってごめんね。奴隷ちゃん。」


「私なら大丈夫です。ご主人様と一緒ならどこでも付いていきますから。」

やっぱり奴隷ちゃんは私にとっての天使だった。


私はマグナ・クエークをまじまじと見る。

クジラぐらいかなーと思っていたが遠方から見てもわかる大きさだった。

「にしてもでかいねー。山が動いてる!」


「はい、本で見たことはありますが・・・大きいですね。」


「これの使い方わかる?」


「はい・・・昔、学舎で習ったことあります。」


「ならお願いね。」


「はい!」


奴隷ちゃんは魔導兵器に近づき黒いパネルに手を当て何かをつぶやいている。

しばらくすると機械の駆動音が聞こえた。


「おー」


「あ、あれ!?画面が・・起動しない・・・。」


どうやら不運が発動したようだ。

私はこのような状況を解決する方法を知っていた。


魔導兵器を殴る。

「えいっ」


ゴンッ。


「あっ、付きましたよ!ご主人様。これならいけます。」


「おー」


「あっ。内蔵魔力が無いみたいです。充填しないと。」

奴隷ちゃんが再び手を黒いパネルに当ててつぶやき始める。


魔導兵器を殴る。

「えいっ」


奴隷ちゃんは不思議な顔をして首をかしげる。

「あっ、あれ!?内蔵魔力が充填されたみたいです。なんでしょうね。」


「後は・・・こ、このボタンを押せば行けると思います!」


私は間髪入れずにボタンを押した。

「了解。発射ー!!」


魔導兵器が輝きだし一筋のレーザーを遠方のマグナ・クエークの頭上に向かって放つ。


次の瞬間、着地点から凄まじい閃光と稲妻が走り広範囲に爆発した。

さながらネットの映像で見た核兵器のようだ。


「おー。」


それを見た奴隷ちゃんはその威力に驚く。

「えっ、えええええ!お、おかしいですよ威力が!対魔獣用を超えてます!」


やはり、数回に渡って重ねがけされた豪運によって威力が増幅されているようだ。


次の瞬間、マグナ・クエークが煙の中から姿を現す。

「あちゃー」


「あれ?ちょっと動き遅くなってません?」


「そうかなぁ。」


どうやら不運と伝説級モンスターの組み合わせもあって、とっておきの豪運でも十分ではないようだ。


聞き慣れた声が響き渡る。

「お前たち、居ないと思ったら!何やってるにゃ。」


「クッション!?どうして此処に!」


「どうもこうも無いにゃ。アレだけ派手にぶっ放したら誰でも気がつくにゃ。」


奴隷ちゃんが申し訳なさそうに謝る。

「す、すいません。」


「避難するにゃよ。」


私は更に重ねがけをすればいけそうな予感がしたのでクッションにお願いする。

「もう一発!もう一発だけね。お願い!」


クッションは呆れた顔で魔導兵器の方を指差す。

「にゃぁ・・・・。」


豪運により、出せる最大火力を捻り出したであろう魔導兵器の先端が、

ラッパの形に変形していた。


これでは使い物にならない・・・ほぼ詰んでないか?


「あちゃー。」


ゴゴゴゴ。


不気味な音が地上に響き渡る。


「何にゃ!?」


マグナ・クエークがこちらに向けて大量の土砂を吐き出していた。

「ちょ、ちょ、ちょ!」


次の瞬間砂嵐がテウリアを襲う。

砂嵐と言っても突風に近いもので、近くの民家が一斉に中に舞う。


「これはマグナ・クエークの攻撃かにゃ!?」


「と、飛ばされますーっ!」


私とクッション、奴隷ちゃんは互いに手をつなぐも引き離されて空に飛んでいった。

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