第八章 閉幕 妙子

「止めるんだ!透さん!」


 


ドーン!


 


爆音が聞こえると直ぐにその場に勢い良くハイジャック犯が倒れ込み、左胸から大量の赤い液体が流れ、床に垂れ落ちる。




鉄臭い匂いが部屋に充満し、直ぐには唖然として皆誰も声を発せない。




とっ、透さん!幾らハイジャック犯だからといって何をやっているの!




「透さん!責任を取るってこういう事だったのですか!」


 


怒りに満ちた御神の大声が静寂の空気を裂く。




「ハイジャック犯達は我々人質達からこういう反撃が来ると分かっていて一人残した筈です。ですから私は当然の事をしたまでですよ。それにこのまま黙って、ハイジャック犯達の言う通りにしていては、我々は殺害されるかもしれないのですよ。大体、こんな事をされて、こっちだって良い迷惑なのです。よって、これは我々のオープンパーティーを阻害した当然の報いだと思う。それに私は、最高責任者として山光興業の社運を懸けたこのスカイタワーを守らなくてはならない」




 


一理あるがやはり私とは違う人種だと思った。




そう思っていると突然、防音扉が開かれた。




一瞬にして部屋に緊張が走る。




「おっ、おい、貴様!何をしたんだ!」


 


部屋に戻って来たハイジャック犯が倒れて血を流している仲間の無残な姿を見て、銃を右手に持っている透さんに向かって怒声を浴びさせた。




他にも二人仲間が来ている。




状況が暗転し、私の心は恐怖しかない。




「貴様!取り敢えず銃を床に置け!」




「・・・・・分かった」




「さっさと部屋から出ろ!貴様達全員だ!」




私達が大人しく言われた通り部屋から出る。




この場で全員射殺されなかったのは有難い。




いや、部屋を出てから全員殺されるかもしれない。




そう思うと再び怖くなった。




しかし、御神君は部屋を出る前に後ろを振り返って、床に倒れているハイジャック犯を見つめた。




「俺はこいつを連れて行く!」


 


リーダー格のハイジャック犯が透さんに銃を突き付ける。




左手には透さんが床に置いた銃も持っている。




「残りの貴様達はこの三人に付いて行け!さぁ、さっさとしろ!」


 


どうやら助かったようだ。




そう言われた私達八人はハイジャック犯三人に付いて行く。   




道中誰も喋らなかった。




恐怖と不安が入り混じった空気だ。








私達八人は十階の1007号室に連れて来られた。




さっきまでの部屋と比べると質素感は否めない。




いや、今はそんな事を言っている場合ではない。




「良いか!全員この部屋に入っていろ!今度誰か一人でも逃げ出したり、妙なまねを起こしたらロビーにいる人質諸共全員殺すからな!俺達の中の誰かが交代でお前らがそうしないか外から監視する!分かったな!」




「一つお願いがあるのだが」


 


御神が目の前にいるハイジャック犯に言った。




「なんだ!」




「この部屋には食料がないから何か自分の部屋から持って来ても良いか?」




「・・・・良いだろう。但し、俺も付いて行く」




「あっ、あの・・・・・わっ、私も付いて行っても良いでしょうか?」


 


御神君が心配だった。




いや、一時でも御神君と離れたくなかったが本音だ。




「まぁ、良いだろう」




「あのー、私も煙草を取って来ても良いですか?」


 


ヘビースモーカーの今川がそう懇願した。




「調子に乗るな!食料を取りに行く事もなしにするぞ」




「すみません」




私と御神君、そしてハイジャック犯一人が宿泊している2404号室と2406号室に食料を取りに行った。




部屋に着くと、鞄の中から袋を取り出した。




当然、ハイジャック犯も御神君もその姿を見ている。




「あっ、あのー、ど、どうぞ」


 


私は大須で買ったクッキーの袋を開け、その中から五つ程を手に取り、ハイジャック犯に差し出した。


 


私は何をしているのだろう?




何故、敵に塩を送っているのだろう?




食料を取りに行く事を許可したこの人はそんなに悪い人ではないと思ったのか?




透さんに銃で撃たれ恐らく死亡したハイジャック犯の仲間が本能的に可哀そうに思えたのか?




いや、私達を殺さなかった事に対する謝礼か?




「・・・・・一応貰っておく。だが俺が敵だという事を忘れるな!」




「・・・・・はい」




私は小さくそう返事をした。








一方その頃、1007号室では残された人質達による会話が繰り広げていた。




「あーあ、VIPルームから格下げになっちゃいましたね」




「二宮さん、そんな事を言っている場合ですか?」


 


榎本がそう訓戒した。




「皆さんの気分を和ませようとしたのですよ」




「そうですね。こんな時だからこそ明るくしましょう」


 


今川が煙草に火を点け、そう言った。




「明るくですか」


 


榎本の表情は険しいままだ。


 


佳純はショックで黙り込み、それを誠が慰めている。


 


篠坂は黙ってソファーに座り込んでいる。


 


五分後、御神と妙子が1007号室に戻って来た。




「お菓子しかありませんが皆さんご自由に召し上がって下さい」




「そう言えば朝食まだでしたね。有難う御座います。秋山さん」


 


今川が礼を言った。


 


それから、人質達は菓子をつまみながら時間を過ごしていた。




「御神君、透さんはどうなると思うかい?」


 


突然、篠坂が御神に透の反抗に対する処分についての意見を求めた。




「まだ、何とも言えませんが一人だけハイジャック犯に連れて行かれたとなるとそれなりの何かを要求されたり、仕打ちをされなければ折り合いが合わないと思います」




「私も透さんはただでは済まされないと思います」


 


今川が煙草を吸いながら、篠坂と御神の会話に混じる。




「と言いますと?」


 


無表情で篠坂が訊く。




「ハイジャック犯達はこんな事をしているので謂わば以心伝心した同志達です。その同士が人質に殺害されたのですよ。よって、透さんはただでは済まされないと思います。私達だって誰か仲間を傷つけられたり、殺されたりしたらその相手に対して殺意が抱く事は当たり前の事です。私達からすればハイジャック犯達は悪ですが、ハイジャック犯達から私達を見れば私達は悪そのものなのですから」




「・・・・・そうですね」


 


御神が佳純の様子を気にしながらそう答えた。




「御神君、兎に角君には期待しているよ」


 


篠坂さんは少し横柄なだけで本当は良い人ではないだろうか?




私はふと昨日考えていた事を思い出し、今日も後悔した。




「しかし、本当に透さんがやる事は理解出来ない。一週間前に突然、両ホテルのオープンパーティーの日程を一日遅らせたり、さっきのハイジャック犯への突然の反撃やら」


 


突然、榎本がそう発した。




「どういう事ですか?透さんがオープンパーティーの日程を一日遅らせたのですか?それはグランドタワーの方もですか?」


 


御神がそう訊く。




「はい、そうです」




「その理由をもしご存知でしたら教えて頂けませんか?」




「えーと、確か金曜日にオープンパーティーを予定していたら一週間前に予想以上に都合が付かない人が多く、人があまり集まらない事が判明したので休日の土曜日にやる事にした筈です。その方が人も集まりやすいですからね。君達高校生などもそうでしょう」




「ええ、そうですね。お話して頂いて有難う御座いました」




「ええ、どういたしまして」


 


暫く沈黙の時間が流れる。




私はずっとここに来てから一言も発しない佳純さんが心配だった。




「佳純さん、大丈夫ですか?良かったら召し上がって下さい」


 


ずっとソファーに座って俯いている無言の佳純さんにお菓子を持って行き、テーブルの上に置いた。




「はい、大丈夫です。有難う御座います。・・・・・御免なさいね、秋山さん。こんな事に巻き込ませちゃって」




「いっ、いいえ、佳純さんのせいではないです。悪いのはハイジャック犯達です。謝らないで下さい」




「有難うね。・・・・・透さん普段は本当に良い人なんです。いろいろと良くして貰って・・・・・だから、さっきの事が信じられなくて・・・・・」


 


佳純さんの表情が少し和らいだ気がした。




私は安堵すると共に無性に早く亜理紗やお母さんやお父さんに会いたくなった。




「二宮さん、だいぶお疲れのように見えますが大丈夫ですか?良かったらこれ、召し上がって下さい」




御神がずっと無言で壁にもたれている二宮に近寄り、チョコレートを勧める。




「有難う、御神君」




「二宮さんはずっとこの近くにお住まいなのですか?」




「そうよ」




「でしたら、もしかしたら昔、俺達知らない間に何処かで会っているかもしれませんね」








「皆さん、気分転換にトランプでもやりませんか?」


 


九時。




唐突に誠が七人にトランプの提案をした。




「そうですね」


 


私がそれに乗る。




「じゃあ、ばば抜きでもやりましょう」


 


今川さんがそう提案した。




「賛成です。佳純さんもやりませんか?」


 


私がさっきよりもまた少し明るくなった様子の佳純さんにそう訊いた。




「はい・・・・・そうですね」


 


今回は八人全員がトランプに参加する事になった。




誠さんが嬉しそうにトランプを切り、皆に配り始める。




皆、苦しいながらも精一杯明るく振る舞っている。




私の気分は少し晴れた。


 


十時。




トランプ大会は大成功で終了し、八人がそれぞれ相手を見付け会話している。




御神は今川の相手をしていた。




「私、もし生きて帰れたら、もう一度自分の人生について考え直そうかと思います」




「・・・・・そうですね。こんな貴重な経験、今後の人生に生かさない手はないですね」




「御神君、ちょっと二人っきり話したい事があるから良いかな?」




「ええ、良いですよ。篠坂さん」


 


会話を篠坂さんが遮り、そう言って二人は脱衣所に消えて行った。




一体話って何だろう?




もしかして、今回の事件と関係がある事なのか?




「御神君はこの事件が普通のハイジャック事件ではないと踏んでいるんだろう?」




「はい、そう思っています」




「だから、何かヒントになる事を伝えようと思って呼び出したんだ」




「何か心当たりでもあるんですか?」




「・・・・・ああ、あるよ」




篠坂が少し笑みを浮かべ溜めてそう言った。




「私は今回の事件は裏で手を引いている者がいると思うんだ。それはこの事件が通常のハイジャック事件ではないと考えている君も思っているだろう?そして、ハイジャック事件を利用して、今回のオープンパーティーの主催者である透さんに対して、大規模な悪事を働かせた」




「つまり、今回のハイジャック事件がこのメンバーの内の誰かによって引き起こされたと?」




「ああ、透さんに仕打ちをする為にね。いや、今の座から引き下ろす為にね」




「誰がこんな大それた事をするのですか?その理由は一体?」




「例えば、弟の誠さん。噂では本当は業界№1の山光興業に入社したかったらしい。しかし、入れなかった。そして、その理由は兄の透さんが弾いたから。その後、何とか業界№2の山鍋興業に入社出来たが、今でもその事を根に持っているから今回の事件に踏み切った」


 


篠坂の話に御神の表情を曇る。




「次に弁護士の榎本さん。彼はプライベートで透さんに相当弱みを握られている噂がある。そして、タダ同然の契約料で透さんの案件を受け持っている。だから、透さんに日頃の仕返しがしたかった」


 


御神は無言のままだ。




「次に今川さん。彼は特別透さんを恨む理由はないが、山鍋社長からライバル会社を潰す為に命令が下ったかもしれないね。だから、代行した」


 


御神の表情は変わらない。




「最後に佳純さん。彼女も特別透さんを恨む理由に心当たりはないが、これも今川さんと同じくお父さんから、ライバル会社を潰す為に命令が下った。また、個人的に透さんを恨む理由があるとしたら婚約者の誠さんに対する過去の仕打ちが許せなくて、彼の代わりに今回の事件を起こした」




「・・・・・佳純はそんな事しませんし、他の人達も考え過ぎではないのですか?それに一体、どうやって犯人はこの人質のグループに潜り込んだのですか?」




「それは今は解らない。だけどまぁ、兎に角、透さん始めここに集まった人達をあまり過信しない方が良い。まぁ、今も透さんが生きていればの話だけどね」


 


そう告げ終わると、篠坂は部屋に戻って行った。








十一時四十分。




相変わらずただ時間が流れているだけであったが、この時のある一人の発言により、ここから急展開を見せる事となった。




「あの、さっきから外に人がいる気配がありませんよ。・・・・・私、ちょっと外の様子を見てみます」


 


扉付近に立っていた今川が唐突にそう言い出した。




「それは止めておいた方が良いと思いますよ」


 


榎本が反対する。




「ちょっと、隙間から外の様子を見るだけですよ」


 


今川さんが少し微笑んでいる。




この人はこの状況を楽しんでいるのか?




全く良く分からない人だ。




「御神君、君からも何か言って下さい」


 


榎本が助けを求めた。




「・・・・・まぁ、見るだけなら良いのではないでしょうか?」




「・・・・・分かりましたよ」


 


榎本が御神に説得させられると今川が少し扉を開け、五秒程、ハイジャック犯達の有無を確認し、閉めた。




「やはり、廊下には誰もいません。もしかしたら透さんを助けに行く事も出来るかもしれませんし、ホテルから脱出も出来るかもしれませんよ」


 


微笑みながら今川が七人にそう発言した。




「ハイジャック犯達がこの部屋の近くの何処かに隠れていて我々が脱出するかしないかを見る為の罠だったらどうするのですか?もしそれが見付かったらその場で全員が射殺されるのですよ。それに、仮に運良く透さんを助け、ホテルから脱出出来たとしても、一階のロビーにいる人質の皆さんはどうなるのですか?それがハイジャック犯達に警察に突入する前にばれたらロビーを爆発されるかもしれないのですよ」


 


榎本が強く反対した。




「そうね。それは流石に反対だわ」


 


二宮もそれに難色を示した。




「しかし、透さんをこのまま放っといて良いのですか?それにもし一階のロビーを爆発させたら、ハイジャック犯達は人質を全員失う事になるんですよ。そうなれば目的も糞もありませんし、ハイジャック犯達が山光興業や警察に何かを要求した事が全て水の泡になってしまうのですよ」




「透さんが危ない状況に置かされていると決まった訳ではないでしょう。それに御神君も言っていましたけど彼らは普通の目的とするハイジャック犯達ではないのです。そんな人達が何をしでかすのか何て分かりませんよ。例えもしハイジャック犯達が身代金、海外への逃亡、仲間の釈放等が目的であったとしても先程も言いましたが、我々が逃亡した事が彼らにばれたら、逆上し、要求した目的を無視して平気で一階のロビーを爆発させる可能性だって低くはないですよ」


 


榎本が再び反論する。




「あの奇矯じみたハイジャック犯達が最終的に大量の人質達を殺害する事が目的だったらどうなるんですか?貴方の言うような愚直な事をし、このままじっとしていても殺されるのを待つだけですよ。それに御神君もちょっと前に透さんはただでは済まされないと言っていましたし、助けに行った方が・・・・・そうだ。御神君はどうしたら良いかと思うかい?」


 


白熱する榎本との口論に堪らず今川が助け船を求めた。


 


私は何故いきなりこういう事になってしまったのか戸惑った。




このままずっと待っていれば、いずれ警察が助けてくれるのに。




「・・・・・確かにどちらの行動を執っても一階のロビーで人質にされている人達を含め我々の命が助かる保証はないと思います。そこでどうでしょうか?どちらの行動を執るのか全員で多数決を採りませんか?」


 


御神君まで・・・・・。




「私はそれで良いですよ」


 


榎本がそれに同意した。




「・・・・・分かりました。そうしましょう」


 


暫くして今川もそれに同意した。




「皆さんもそれで良いですか?」




「はい」とどうやら多数決を採る事に全員一致のようだ。


 


いや、私は御神君の言う通りにしていれば・・・・・。




「今は取り敢えずこのホテルからの脱出は考えずに透さんを助けに行く事だけにし、もし透さんを詮索しに行く事になってもこの部屋に誰か一人でも残る事はしない事にしましょう。また、多数決で採用された選択肢が例え結果的に間違っていたとしても、その時は恨みっこなしにしましょう」




「そうですね。誰か残ってもしハイジャック犯達がこの部屋に戻って来たら、その残った人が真っ先に殺害されてしまう」


 


今川が御神の考えにそう補足した。




「全員が自分の意見が固まったら多数決を行いたいと思います。良いですか。自分はどっちでも良いという選択肢はなしにしましょう」


 


三分が経過した。




どうやら全員の自分の意見が固まったようだ。




「それでは多数決を採ります。まず、透さんを救出しに行く事に賛成の方、挙手をして下さい」


 


御神が相変わらず場を仕切る。




「・・・・・どうやら決まりのようですね」


 


今川さんがそう告げた。




周りを見渡すと私の他に手が四本挙がっている。




五人の賛成派衆は御神君、私、佳純さん、誠さん、そして、勿論今川さんであった。




「榎本さん、篠坂さん、二宮さんは本当にこれで良いですか?」


 


御神が反対意見を出した三人に最終確認をする。




「まぁ、多数決で決まった事だし仕方ないわ」


 


二宮がそれに同意した。




「私も構わないよ」


 


篠坂もそれに同意する。




後は榎本だけだ。




「・・・・・分かりました。こういう結果になった以上、納得は出来ませんが同意はします。でも透さんを詮索しに行くならそれなりの約束事や条件、作戦を決めてからにしませんか?」


 


ずっと自分の意見に頑なに固執していた榎本もついにそれを認めた。




「それは当然です」


 


御神も榎本が言わなかったら自分が言い出そうとしていた様子だ。




「じゃあ、全員でグループ行動にしましょう」


 


二宮が七人にそう促す。




「それは如何なものでしょうか?」


 


今川がそれに懐疑的な意見がある様子だ。




そして、相変わらず煙草を口に加えている。




「何故です?」




「もし全員で一緒に行動を執ってしまったら大きな集団となりハイジャック犯達に見付かる可能性が高いですし、もしそうなれば全滅する可能性が高いからです」




「そうですね。流石に全員一緒に動くとなるとハイジャック犯達に見付かる可能性が高いですね」


 


誠もその意見に賛成する。




「じゃあ、全員が単独行動しろとでも?それこそ私達の内一人でもハイジャック犯達に見付かってしまう可能性が高くなるわよ」


 


二宮が今川と誠に反論する。




「分かりました。どちらの行動を執ってもそれなりのリスクがあるって事ですね。でしたら単独行動を執る人達、グループ行動を執る人達とで分かれませんか?」


 


今川がそう七人に提案した。




「分かりました。これ以上話し合いをしても不毛ですから私はそれで良いわ」




「俺もその案で問題ないと思います」


 


御神も賛成した。




「他の皆さんもそれで良いですか?」




「はい」とどうやら全員納得したようだ。




「でしたら個人の意思で単独行動にするのかグループ行動にするのかを決めましょう」




 


今川さんがそう提案する。




さっきから話はこの人と御神君を中心として回っている。




「分かったわ」


 


二宮を中心に全員が同意した。








結局グループ行動を希望したのは御神君、私、二宮さん、佳純さんで単独行動を希望したのは誠さん、今川さん、榎本さん、篠坂さんであった。




私は婚約者である佳純さんと一緒に行動しない誠さんを意外と、いや正直、薄情と思った。 




「但し、一階のロビーへは監視カメラに我々の姿が映る可能性があるという事で行かない事と透さんを見付けられなくても全員一旦、十三時にこの部屋の前に集合しましょう。また、もし透さんがハイジャック犯達と一緒だったらそれを見付けても手を出さずに一旦逃げて下さい。そして、エレベーターを使わない事、出来るだけ声を出さない事を約束し、慎重に行動しましょう」


 


今川さんがさっきからこの場の主導権を握っている。この人の性格は本来こうなのか?




「私達は二十階から捜索するわ」




「では私は三十階から捜索します」




「私は十階から捜索します」




「私は二階から捜索します」




「私は最上階から捜索します」


 


十二時。




全員が透を詮索しに一斉に動き出した。


 


全員が動き出してから五分が経過した。




「山光興業が同種の他社からヘッドハンティングを行っている?それは確かな情報なのですか?」




「私も初めてそんな話、聞きました」


 


御神と佳純が唐突にそう言い出した二宮に小声で反応した。




「ええ、間違いないわ。これでもれ歴としたジャーナリストなんだから」


 


二宮も小声でそう答える。




「そうですか。・・・・・うん?今、何か「ドーン」とした音が聞こえませんでしたか?」


 


御神が小声で三人に確認した。




「いや、私は聞こえなかったけど。佳純さんと秋山さんは聞こえた?」




「・・・・・いえ、私も聞こえませんでしたけど」




「私もです」


 


私と佳純さんが二宮さんに同意する。




御神君は何か聞こえたのかな?




顔を見ると腑に落ちない様子だ。




「・・・・・そうですか」


 


それから二十分程が経過した。




私達は二十七階を詮索している。




この階にも透さんはいないのか?




そう諦めかけた時、二宮さんが突然立ち止まり、御神君の肩を軽く叩き、右手で十メートル程先を指差した。




その指の指す方を見ると、部屋の扉の隙間から明かりが漏れている事に気付いた。




「・・・・・行きましょう」


 


二宮さんが小声で私達に指示する。




私達はゆっくり足音を立てないようその光が差す方へ向かって歩く。




何か鉄臭い匂いがして来た。




他の三人もそれに気付いている様子だ。




先程嗅いだ同じ匂いに私は不安になってきた。佳純さんの表情を見ると私と同じような感じだ。




もしかして・・・・・。




大きな不安を抱えながら私達はその明かりが指す部屋の前まで着いた。




その部屋は2714号室であった。




当然、部屋の中からは私達の声は聞こえないであろうが普通の大きさの声を出してしまったら、近くの廊下にハイジャック犯達がもしいたら私達の存在に気付く筈だ。




私達はそれを心の中で疎通し、小声で極力短く会話する。




「・・・・・下から覗いてみます」


 


三人が頷き、御神が扉の隙間から部屋の中を覗く。




「・・・・・やっぱり血の匂いがしますが、ここからでは中の様子は見えません」




「扉は当然開けられないよね」


 


二宮さんにそう言われた御神君がドアノブに手を掛け、下におろし少し手前に引っ張った。




「・・・・・かっ、鍵が掛かっていない!」




「ほっ、本当に?」


 


驚きながら二宮さんが御神君に確認した。




「恐らくオートロックストッパーがしているんでしょう。・・・・・入りましょう」




「そっ、そうね」




私は恐怖と不安で一杯だった。




いや、それは私だけではない筈だ。




特に佳純さんは・・・・・。




横を見ると、やはりそうだった。




しかし、私達は覚悟を決めた。




御神君も一緒だ。




きっと大丈夫に違いない。








御神君が扉を開けた。




・・・・・真っ先に私達の目に飛び込んできた光景は血を流して床に倒れているハイジャック犯三人だった。




床には夥しい量の血が散らばっている。




肩の力が抜け落ちた。




「・・・・・死んでいます」


 


御神君がその死体の一体に近づき、しゃがみ込みそう発する。




私を含む三人はただただその場に立ち止まっている事で精一杯だった。




・・・・・そう言えばさっきから暑い。




恐らく、暖房が掛かっているに違いない。




でも何故この時期に暖房が掛かっているのだろう。




いやそんな事より、今はこの状況に驚かなければならないのが普通だ。




そう思ったら御神君がベッドとベッドの間に付いているエアコンの切りボタンを押していた。




「取り敢えず、まだハイジャック犯は一人生きているかもしれませんから部屋の扉を閉めます」




そう言うと御神君は立ち上がり、扉を閉めた。




御神君は何故こんなにも冷静なのだろう。




「二人は左胸、一人は右の顳顬を銃で撃たれています」


 


私はテーブルの上に置かれた二丁の銃と一人のハイジャック犯の手に握られた銃と床に置いてあるハイジャック犯達が被っていた三枚の黒いニット帽に目をやった。




ハイジャック犯達は自殺したのか?




それとも誰かに殺害されたのか?




「ちょっと、御神君、何しているの?」


 


二宮さんが怪訝そうに言った。




見てみると、三人のハイジャック犯達の顔を覆っている黒い不気味なマスクを取っているではないか。




「ハイジャック犯達の正体と体温の確認です」


 


そう言いながら御神はハイジャック犯の顔に手を当てる。




「・・・・・少し冷たい」




「あっ」


 


その顔を見て私は戦慄した。




「どうしたの?」


 


二宮さんがそう訊いてきた。




「わっ、私、この人達、知っています」




「本当か妙子!一体誰なんだい?」


 


御神君が私に強い口調で訊く。




「ええ、確か二週間位前に東京の港区で行方不明になった会社員の五人の内の一人だわ」


 


私はあの時、偶々観ていたニュースに出ていた顔を覚えていた。




「思い出した。確かにそうだわ」


 


二宮さんもどうやら知っていたようだ。




それを聞いた御神君は更に他の二人のマスクを取る。




「妙子、この二人もそうなのか?」




「・・・・・うん」


 


御神君にそう訊かれた私はじっくり二人の顔を確認し、頷く。




「・・・・・そして、この二人も少し冷たい」


 


御神がまた両ハイジャック犯の顔を触り、そう呟いた。




「死んでいるんだからそれは当たり前じゃないの?」


 


二宮がそう説明した。




「れっ、蓮司君、これからどうするの?」


 


今まで黙っていた佳純がそう訊いた。




「・・・・・取り敢えずもう直ぐ十三時だ。一旦、他の皆と集合しよう」


 


部屋の時計を見ると十二時五十五分だった。




「そうね。このグッドニュースを早く皆に報告しなくちゃね」


 


二宮さんが一先ず安堵し、私達は十階の1007号室の前に向かう為に部屋を出た。




私も正直少し安心した。










十三時。




1007号室の外の前には七人が集まっている。




まだ一人来ていない。




今川さんだ。


 


五分後、廊下の向こうから今川さんがこっちにやって来た。




このビックニュースを知る由もなく。




「すみません。遅れちゃって。・・・・・おや、皆さん、どうしたんですか?」




今川が七人の様子の異変に気付く。




御神が今川にさっき三人にした同じ説明をした。




「・・・・・そんな、まさか」




 


今川が驚きの表情を隠せない様子だ。




「我々だって驚いているんですよ」


 


篠坂がそう言った。




「残りのハイジャック犯が仲間達を裏切って殺害したのでしょうか?それともハイジャック犯全員がこの状況に絶望となって自殺したのでしょうか?」


 


今川が御神の方を見てそう訊ねた。




「それはまだ判りません。しかし、これで生きているハイジャック犯は一人です。ここからは全員で透さんを探しに行きましょう」


 


御神が七人にそう促し、七人が頷いた。


 


私達が動き出してから二十分が経過した。




一向に透さんを見付けられないが、必ず何処かにいる筈だ。




「本当に何処に連れて行かれたのかしら?」


 


二宮さんがそう呟いた。


 


暫くし、私達は三十階まで上がった。




「皆さん、何か、臭いませんか?」


 


突然、誠が御神達にそう訊いた。




「ほっ、本当だ。何か鉄臭い匂いが何処からか」


 


篠坂を皮切りに全員が鼻を研ぎ澄まさせ、その鉄臭い匂いを確認する。




「・・・・・残る一人のハイジャック犯の死体から出ている血の匂いですかね・・・・・?」


 


榎本がそう推測した。




「それよりもどの部屋からするのか全員で手分けして探しましょう」


 


篠坂さんが皆にそう指示する。私はまた嫌な予感がした。




「皆さんこっちに来て下さい。どうやらこの部屋のようです」


 


一分後、誠さんがその匂いがする部屋を見付けた。




どうやら匂いの元は3008号室のようだ。




その部屋を目の前にして私の不安はピークに達する。




「閉まっていますね」


 


榎本がドアノブを回し、確認した。




「男性陣で無理矢理こじ開けますか?」


 


今川が男達にそう提案した。




「そうですね」


 


誠がそれに賛成する。




他の三人の男達もそのようだ。




「せーの!」


 


五人が一斉に扉に向かって体当たりする。




しかし、まだ扉の鍵は壊れない。




「よし、今度は位置を変えてやりましょう」


 


今川が四人にそう言うと、五人が適当にポジションチェンジし、衝撃に備え、体を少し動かした。




「せーの!」


 


バシッ!扉から破壊音が鳴る。




十三回目の体当たりで扉が開かれた。




その勢いで、五人が部屋の中へ傾れ込んだ。




「寒」


 


今川さんがこの部屋の寒さに我慢出来ずついその言葉を発してしまう。




私達も勇気を出して部屋の中へ入る。




・・・・・誰か倒れている。




カーテンが閉まっていて暗くて良く判らない。




誰かが部屋の電気をつけた。




・・・・・皆が一斉に私達に正面を向けて倒れている人物に目をやる。




・・・・・見覚えがある服だ。見覚えがある髪型だ。




見覚えがある顔だ。




あのテレビに出ていた行方不明者ではない。




つい今朝まで一緒だった人だ。




「・・・・・とっ、透さん」




第一声を上げたのは御神君だった。




「あっ、兄貴・・・・・」




「いっ、いやーーー!」


 


佳純が見るも無残になった透を見て叫喚し、震撼した。


 


佳純さん・・・・・そうか慕っていた人が喧嘩別れして、そのまま帰らぬ人となったんだ。




何でこうなってしまったんだろう?




私は自分の事ではなかったが悲しくなった。




ふと走る足音を感じ、後ろを振り向くと、佳純さんがバスルームに走っていた。




誠さんがそれを追い掛けている。




・・・・・私もそれに続こう。




「しかし、何で透さんまでが・・・・・」


 


榎本が嗟嘆した。




「右肩と左胸をそれぞれ一発ずつ撃たれています」


 


御神が十八度に設定してある冷房を止め、透の死体を調べる。




「そう・・・・・」




「きゃー!!」


 


篠坂の発言を遮り、バスルームから佳純の叫び声が再びした。




御神達が急いでその大声がした方へ向かう。




「どうしたんだ!」


 


御神が震えながら誠に肩を抱かれている佳純にそう訊いた。




「おっ、お風呂にハイジャック犯の死体が・・・・・」


 


震えながら妙子がバスルームの方を指差し代わりに答えた。




バスルームを覗き込むとそこにはシャワーを浴びながら銃で右の顳顬を撃たれ死体となって倒れているハイジャック犯がいた。




右手には銃が握られて、死体の近くに黒いニット帽が一枚落ちてある。




そして、御神がシャワーを止める前に流れている水に触れ一言、「・・・・.熱い」と呟いた。




「・・・・・妙子、落ち着いたらハイジャック犯の顔を確認して欲しい」


 


御神がハイジャック犯の顔を覆っているマスクを取り、震えている妙子にそう懇願した。




「・・・・・うん」


 


私がそう答えると一分後にバスルームを覗き「・・・・・そうだよ」と御神君に小さな声で告げた。








暫くして御神達が透の待つ部屋に戻った。




しかし、まだショックを引きずり佳純は廊下へ出ている。




誠もそれに付き添っている。




「さっきもハイジャック犯に向かって行ったので、やはり今回も向かって行き、犯人にダメージを負わせたが自身も深手を負って息絶えたのでは?」


 


篠坂がそう推論した。




「それはあり得ませんよ」


 


今川がその推理を否定する。




「何故です?」




「あのハイジャック犯は右の顳顬のみを撃たれていたのですよ。だとしたら恐らく即死です。つまり、それだったらバスルームで透さんがハイジャック犯に反撃にあった後にまだ辛うじて生きていた透さんがハイジャック犯の顳顬を撃ち殺害し、その後、透さんがここまで自力で来たが途中で息絶えたという事になります。透さんとハイジャック犯の交戦の際、何かの反動でシャワーの蛇口が回る。そんな状況あり得ますかね。しかも、透さんがバスルームからここまで来るのに必要な血を引きずった跡もありません。更に銃が二本あった事が貴方言った事が起こる事の必須条件なのに透さんの手には銃がありませんでしたし、何よりも透さんは左胸も撃たれていたので即死した筈です。ですから透さんはハイジャック犯に殺害され、そのハイジャック犯自ら自分の顳顬を撃ったが正しい筈です」




「・・・・・でもハイジャック犯達が全員自殺したのならば何処かに遺書がある筈だ」




「いずれで何処からか出てきますよ」


 


篠坂と今川の討論中、御神がさっきバスルームで死体となって倒れていたハイジャック犯の死体のポケットの中を探ったのと同様に透の死体のポケットの中を探っていた。




「透さんのスーツの内ポケットの中にIDカード、ハイジャック犯のズボンのポケットの中にこの部屋のカードキーが入っている・・・・・か、そして、バスルームに倒れていたハイジャック犯の死体は透さんの死体よりも温かかった」




御神がそう呟いた。




「なら、透さんはハイジャック犯に仲間を殺された恨みで殺され、その後、何か委曲があり、ハイジャック犯達が自殺した事ですね。死体の温度がハイジャック犯より透さんの方が冷たかったという事はそれを証明しています」


 


今川が更に自分の推理に確証を持つ。




「でも兎に角これでハイジャック犯達は全員死んだ事になった訳だな。これで我々は助かった事になる。ははははは」


 


篠坂が顔に皺を作り、安堵の表情を浮かべた。




「いや本当は、ハイジャック犯達は六人以上でまだ何処かに隠れている可能性もあります」


 


榎本がそう警告した。




「だったら仲間割れでその生き残っているハイジャック犯が他のハイジャック犯達を殺害したという可能性もありますね。それだったら、山光興業に要求した何かを一人占めするという魂胆ですかね」


 


今川が榎本の推理にそう補足した。その間に佳純と誠が部屋に戻って来た。




「・・・・・佳純、少し落ち着いたか?」


 


それに気付いた御神が優しく訊いた。




「・・・・・うん」




「皆さん、さっきバスルームで死んでいたハイジャック犯の死体のポケットの中を調べた時、3501号室のカードキーも入っていたので、一応俺見てきます」




 


突然、御神がそう言うと右手に持っていたそのカードキーを七人に見せ、VIPルームに向けて走り出した。


 


何故なんだろう?




私は御神君の行動を不思議に思った。


 


十分後、御神君が戻って来た。




「やはり、生き残っているハイジャック犯はいませんでしたが、透さんに撃たれたハイジャック犯の死体の温度はこの部屋のバスルームで倒れていたハイジャック犯よりも冷たく、我々が発見したハイジャック犯三体の死体よりも冷たかったです」




御神君が皆にそう説明した。




そういう事だったのか。




でも何故、死体の温度の確認までしたのだろう?




「まぁ、そのハイジャック犯が死んでからもう六時間以上経過しているので、それなりに死体の体温が下がるのは仕方のない事ですよ」


 


今川がそう発言した。




「兎に角、一階のロビーにいる人質達を解放しに行きましょう」


 


篠坂がそう七人に促した。




「いや、ですからまだハイジャック犯が全滅していない可能性が残っています」


 


榎本が再度それを推す。




余程慎重な男のようだ。




「警察に突入させましょう。まだ生きているハイジャック犯がいたとしてもそう人数は多くないと思うし」


 


二宮がそう提案した。




「いや、それはまだ出来ません」


 


御神がそれに反対する。




「どうして?」




「グランドタワーがハイジャックされているかもしれないからですよ。グランドタワーからスカイタワーに突入する姿を窓から外を見ていたグランドタワー側のハイジャック犯達が憤り、グランドタワー側の人質達を殺害するかもしれません」




「でも、ここのハイジャック犯は、グランドタワーはハイジャックをしていないと言っていたじゃない?」




「・・・・・ハイジャック犯が嘘を言っていた可能性があります」




「まぁ、それはそうだけど」




「突入させてはいけない理由は他にもあります」




「何?」




「もし生き残っているハイジャック犯がいて、突入に気付いたそのハイジャック犯がもし爆破スイッチを持っていれば、それに憤り直ぐに一階のロビーに仕掛けている爆弾を爆発させられる可能性があります。まだ、その爆破スイッチは発見されていないので充分その可能性が考えられます」




「ああ、確かにそうだったね。忘れていたわ」




「じゃあ、このまま大人しく待つしかないのですか?」


 


今川がそう嗟嘆する。




「ホテルの固定電話を使って警察に「まだ突入はしないで下さい」と呼び掛けましょう」




 


御神がそう提案した。




「外部と連絡が出来る固定電話は確か一階のロビーにしかありませんでしたよ。もし監視カメラに誰かが電話を掛ける姿が写ってしまったら、生き残っているハイジャック犯に・・・・・いや、もしグランドタワーもハイジャックされているのならばそのグランドタワーのハイジャック犯に両ホテルの一階のロビーが爆発させられる可能性がありますけど」




 


榎本がそう危惧する。




「俺が監視カメラを掻い潜り、一階のロビーに行って電話を掛けます」




「そうですね、それしか手はありませんね。もし監視カメラを破壊し、まだハイジャック犯が生きていたら一階のロビーに仕掛けられている爆弾のスイッチを押される可能性がありますからね。でも本当にそんな事出来るんですか?」


 


榎本がそれに懐疑的な発言をする。




「出来る出来ないよりやるしかありません。今はこのまま何も動かないが最悪です。また、信じて貰えないかもしれませんがこう見えても俺、大体のカメラの位置、レンズの大きさや角度が分かればカメラの射影範囲が把握出来ると思います」




「・・・・・分かりました。そうしましょう。でもグランドタワーがもしハイジャックされていて、それを索敵出来なくても、せめてそれが何時終わるのか?そしてそれが何時我々に分かるのか?が分かる案や方法はないものでしょうか?」




「そうですね。もしグランドタワーがハイジャックされていたとしたら携帯電話も没収されている筈だから、当然向こうの人達と連絡が取れないと思いますし」




 


今川がそう嗟嘆すると御神が一言。




「俺に考えがあります」

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