010 面影

『アンタなんか顔も見たくない!』

彼との最後の会話は、私の捨て台詞で終わった。

その日、スピード違反の車に撥ねられ、彼は亡くなった。

かなりの衝撃らしく、ふた目と見られない顔だったそうで、ひつぎの小窓も閉じたままだった。

既にケンカの原因も思い出せない。

何なら、彼の顔も、思い出せない。

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