第21話 次の一手はショート動画で行くぞ!!
ショート動画。有名動画投稿サイトが新しく始めた機能で、各サイトがこぞって採用している今人気のコンテンツだ。数十秒の縦長の動画で、スマホでの視聴に特化している。なんでも若い子向けのコンテンツで、気に入らない動画はスワイプして飛ばしながら延々と短い動画を見るのが流行っているらしい。色々調べてみたが、最近のブームであることは間違いないようだ。ショート動画で成功してチャンネルも有名になる、登録者が増えるというパターンは最早あるあるらしい。
この波に乗るしかない!そう考え俺は色々なショート動画を見て分析を始める。一定の音楽とテンポよく進む動画。ショート解説動画によると最初の6秒で惹きつけなければスワイプされてしまうらしい。スワイプされるとどうなるか? 動画投稿サイトが「この動画はいけてない」と判断して、他者のおすすめ欄に表示される機会が減るとのこと。逆に言うと、色々な人にしっかり見てもらえれば動画投稿サイトが「これはいい動画だ」と判断されて伸びるようだ。
『次の一手はショート動画でいくぞ!!』
メッセージアプリのグループ画面に投稿したが、既読はついたものの誰からも反応はなかった。悲しい。とりあえず自分で一本作ってみて、効果を出すのがいいのだろうな。
さてどんな動画を作るか? これに関しては色々調べてみたところ、最初の6秒で惹きつけること以外には数を投稿することと、投稿動画に統一性があることが大事だとのことだ。逆に言うと他には何もない。思ったより難題かもしれないな。ぜっとさんのショート動画を見てみる。確かにどれも同じフォーマットで、同じ音楽、だが中身は違う。テンポよく小話が進んでいくところも特徴だ。どんな動画を作ろうか。
それから1時間…… 考え続けたがいいアイデアは出てこない。まあアイデアが出てくれば苦労しないか。今週の宿題として考えておこう。俺は床についた。
朝、メッセージが届いている。綾香からだ。
『ショート動画向けの曲ならちょうどいいのがあるから送るよ。私が作ったやつ』
聞いてみると、確かに良い。意図的か狙ってかわからないが、最初に盛り上がりがくるいい音楽だ。そして数十秒の短さで再度盛り上がりがくる。これは使えるな。
『さんきゅー!! 使わせてもらう!』
『動画は私が作るんですか?』
『いや、俺が作ってみるよ。下井草は歌ってみた動画に集中してくれ!』
勢いよく宣言してみたものの、動画など作ったこともない。まあ数十秒の動画であればそこまで大変ではないだろう。問題はやはりどんなテーマのどんな内容にするかだ。ぜっとさんは自己紹介のようなものをしているが、Vtuberによってはあるあるネタをしていたり、クイズをしていたり、ゲームの失敗シーンを切り抜いていたり色々なパターンがある。これらをパクるというのもあるが芸がないし、変なヘイトが向くかもしれない。ここはオリジナルで何かを考えよう。
「ねえねえ、服部さんとはどう? 上手くいってる?」
教室で話しかけてきたのは山村だ。
「ああ、すごいお世話になってるよ。曲作れるってすごいな、マジで助かってる!」
「そうなんだ、良かった。服部さん結構癖ある感じだから上手くやれるかなって心配してたんだけど大丈夫そうだね」
「ああ、今のところ問題ない。いい人を紹介してくれて嬉しいよ」
「お役に立てて良かった。ねえ、曲使って何するの?」
「ああ、詳しくは言えないんだが…… ライブみたいな感じだな」
「おおー高校生バンドか。青春だねえ」
「軽音部は皆やってるだろ! 一緒だよ一緒」
「いやあ、部活動と自主的な活動は違うよ。青春度が高いって感じ?」
「まあ、自主的な活動ではあるからそうかもしれないが、そんな陽キャな話ではないぞ」
「いいのよ、自分が楽しければなんだって。せっかくの青春なんだから楽しめるだけ楽しまないとね!」
青春というワードがチラッと頭をよぎる。青春。誰もが経験するが、その度合いにはかなりの差がある言葉。恋愛を想定する者もいれば、部活動を想定する者もいるし、勉強を思い出すものもいるだろう。これは使えるワードかもしれないな。
「なあ、またお願いになるんだが…… 軽音学部で一番青春を謳歌してるな、っていう人を紹介してくれないか?」
「青春? 恋愛とか?」
「でもいいし、それ以外でもいい。何かに全力だったり、とか忙しく活動している人とかどんな人でもいいぞ」
「それだったら……青山さんかな。彼女は部活にバイトに勉強に一生懸命だし、彼氏もいるし、友達も多いし。青春っぽくない? でも紹介してどうするの?」
「いいね、ぜひ紹介してくれ。いや何、青春について色々聞かせてもらうだけだ」
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