飴使いの異世界入り

八雲琥珀

第1話 転生


 ある冬の日のこと、六角京友ろっかくけいゆうは雪かきをしていた。


 「いつになったら終わるんだよ。毎日毎日飽きるわ。だから雪の降る地域になんて、引っ越すの嫌だったのに。さっさと終わらせて飴でも食べよ。」

 

 京友が住む地域は、豪雪地帯な為、毎日の雪かきが当たり前だった。母親の転勤に合わせて、引っ越したのは良いものの、大変な作業だ。その日も、雪かきをして家の中に入るだけのはずだった。


 「ズゴッ、ゴゴッ」(今の音は、、まさか‼︎)その音に気づいた時はもう遅く、京友は白い闇に包まれた。



         天界



 夥しい数の魂の列、その列に京友は並んでいた。「多分、この列に並べば良いんだよな?」目を覚ました時には、目の前で多くの魂が彷徨っており驚いた。


 しかし、列を見つけるなり、魂たちは並んでいた。その流れに沿って、京友も並んだ。

自分の体を目視?すると、他の魂と同じような見た目だった。


 「....やっぱり、あの時の音は、、、屋根の雪が降りてきたのか。屋根の雪降ろすの、忘れてたんだな。」


 「もう少し飴を食べてから死にたかったな。」自分の体を見て、思い出し、後悔する。「母さん、、泣いてるかな。」

 

 京友は母子家庭だった。あの日は、台所に隠してあった、大好きな飴を食べ過ぎ、怒られ、罰として1週間の雪かきをしていた。最終日だった。


 母は、平日に仕事へ出て、土日と雪の多い日には雪かきをしていた。京友は、菓子を貪り部屋でだらけていた。そんな京友が、食べ過ぎない様に隠してあった飴を食べていたため、母親は激怒し雪かきの罰を与えていた。

 

 「.....親不孝の息子だな、先に逝っちまった、、、これ以上考えても無駄だな。」


 長蛇の列の先が見えてきた。「今からあの中に入るのか?」列の先には大きな赤い門があり、伝承に登場する鬼の様な者達が、門番をしており、その奥に建物が聳え立っていた。


 京友に門を潜る時がきた。チラチラ鬼と思う者を見ながら進もうとすると、声をかけられた。


 「待て、お前意識があるのか?」

 

 「はい。はっきりと。」


 「列を外れ、門の前で待っておけ。」


 鬼と思われる者は、それだけ言うと、奥の建物へ走って行った。


 「500年程門番をしているが、久しぶりに見たぞ。意識がある魂なんて。」先程話をした者より、小柄なもう1体の鬼と思われるものが、話しかけてきた。

 

 「あなた方は鬼ですか?僕みたい奴は珍しいのですか?」


 「俺達は鬼で間違えないぞ。お前みたいな奴は、確か、、300年程まえに1人見たきりだ。」


 「....僕はどうなるんですか?」京友は体を震わせながら聞いた。


 「そんなに怯えるな。閻魔様が考えてくださる。悪いことにはならないはずだ。噂をすれば、兄貴が帰ってきたな。」


 「さっきの魂はどこだ?..いたいた、こっちにこい。閻魔様がお待ちだ。」大きな鬼が門の中に招く、そのまま門を通り抜け、建物の中に入り込んだ。



         閻魔邸



 「閻魔様、この者が先程話したものです。」列に並ぶ魂たちに割り込み、先頭で閻魔様と呼ばれる者を見る。


 「お前の名は何と言う。」


 「京友です。六角京友って名前です。」


 僕の名前を聞いた閻魔様は、本の様な物を開くと何かを探し始めた。「......六角、、京友、、、やはり、閻魔張によるとお前は、まだ20年は生きていたはずだ。事故で死んでから、ここに来るはずだった。」


 「何故、、、僕は死んだんでしょうか?(これぐらい聞いても怒られないよな?)


 「おそらく、オマ「私のせいで死んだの。」...だ、そうだ。」閻魔様が言い終わる前に、伝承で出てきそうな女神に言われた。


 「ごめんね。私の世界の魂のリソースが足りなくてね、君を殺して連れて行こうと思ったの。」


 「え?その為に僕は死んだんですか?(は?何言ってんだこの人?人?....魂のリソースって何?)」


 「魂のリソースってやつは、世界の存続に必要なものさ。君が最初に思った通り私は神だよ。」


 「やっぱり神なんだ。心も読んでるみたいだし。」


 「まぁーね?これでもワタ「ここで長話をするな、仕事の邪魔だ。」はいはい、すぐに終わらせますよーーーだ。ごめんね?君には選択肢がないんだ。そのまま私の世界に転生してもらうよ。」


 「ちょっと待ってください、話はマ「またねーー。」うわぁぁぁぁぁ。」眩い光に包まれ京友は消えた。


 「お前は相変わらず酷い奴だな。私でも、もう少し話をしてから転生させるぞ。」


 「だって、、エンちゃんが早くしろって言うから。早くしなきゃって思って。」


 「エンちゃんと呼ぶな。ここで話をするなとしか言っておらん。300年前の時には、お前の世界の狭間で、転生者と話をしていただろう。あの時、狭間とここを繋げたままにしていたから、お前の話が長いと思って言ったんだ。」


 「あれ?そうだっけ?あ、門番君も久しぶり〜〜〜。」


「お久しぶりです、女神様。今は門番長と呼ばれています。」


「あれ?いつの間に昇級したの?おめでとう。今から私がプレゼントを、あ、ゲ「早く帰れ、仕事の邪魔だ。」はーい。門番君もまたねぇぇ。」眩い光に包まれ女神は消える。


 「お前も災難だったな、門番長。仕事へ戻って良いぞ。私もしっかり再開する。」


 「閻魔様ほどじゃありません。それに、あの者の方が災難かと....仕事へ戻ります。」


 「あの者も可哀想にな。....ん?確か前に連れて行かれた者は、何か偉業を成し遂げた者じゃなかったか?なんであの者を連れて行ったんだ?....閻魔張を見直すか、、六角京友だったな。特におかしなところは、ないはずだが....ん?この者、何も成し遂げておらんはずなのに、魂のリソースが多いぞ。これを狙って連れて行ったのか。まぁ、その程度なら、あの女神のしてきたことの中じゃましだな。よし、仕事を再開するか。」


       ⭐︎何処かの空間⭐︎

 「ふ、ふ、ふぅ、どうせエンちゃんのことだし、閻魔張をちょっと見て、魂のリソースが多いなってぐらいしか、思ってないんだろうけど、閻魔帳を私が細工して、桁を変えたのに気付いたら怒るんだろうなぁ。」

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