第7幕 無敵

第25話 バッドタイミング*聖*

*聖*


 普段『神様』だなんて崇められているけれど、あながち間違いじゃないらしいのよ。


 祟り神と神聖さが同居してるんですって。


 意味が分からないわ。


 どうやったらそうなるのよ。


 私はみんなが供物として捧げてくれる心臓と血、人肉を食べているだけなのだけれど。


 まぁそのおかげで、どんどん怨念やら恨みやらを吸収したのは自覚してるわ。


 じゃあ『神聖さ』はどこからかしら。


 心当たりがあるとすれば、祠の周りを毎日掃除してくれること。


 悪霊たちの相談に乗り、あの世へ逝く手助けをしていること……ぐらいねぇ。


「さぁ、いつやって来るのかしら」


 考え事をするのも飽きたわ。


 折角結界を解いたのに。


 普段は祠にかけている、人除けの結界を。


 なんでしょう。


 これだけ言うと中二病発言ね。


 嘘じゃないのよ。


 本当に結界張ったのよ。


 張れちゃったのよ、頑張ったら。


 人間、気合を入れればなんとかなるものね。


 私はもう人間をとっくにやめて――。


「聖さぁぁぁん」


 待った。


「優ちゃん!?」


「あれ、珍しい反応ですね」


 そりゃ驚くわよ。


 なんのために音葉と遊ばせてたと思っているのよ。


 村と殺人現場に近寄らせないためなのよ!


「音葉!」


「はいっ、すみません!」


 スライディング土下座。


「やめなさい」


 もう手遅れね。


 ズボンは土まみれ。


 小鳥か琴葉、洗うの頑張ってね。


「優ちゃん、今日はちょっと話している暇はないから――」


「またまたぁ、そんなこと言って」


「人の話を最後まで聞きなさい」


 今すぐ優をここから遠ざけなければ。


 非常に面倒なことになる。


「音葉、屋敷へ」


「はっ、はい!」


 音葉は焦りながら、


「ゆーちゃん、今日はお家で遊ぼうよ」


「えー。聖さんともっと話してたい」


 説得を試みては、


「ゆーちゃんに見せたいものがあるの!」


「明日でもいい?


 失敗。


「えっと……おいしいご飯があるよ!」


「もうすぐママが帰って来るから、いらへん」


 大失敗。


「ねぇ、優ちゃ――」


「化け物!」


 しまった。


 二人に気を取られている場合じゃなかった。


 村人たちを引き連れた次男坊が優を睨みつけている。


 はぁ、やっと来た。


 だけどねぇ……今じゃないのよ。


 なんでもっと早く来なかったのよ!


 このポンコツ!


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