男心を完璧に理解してるはずのTS美少女が隣の席の男の子のせいでえっちな感じに完堕ちしちゃうまで

わわわわっふる

男の子全員私に惚れちゃえ!

 1


「にへへ、わたし…可愛すぎない…?」


 夜が深まる中、1人の少女が鏡に向かって呟いた。


 瞳に広がる海のように深い碧の目と黒髪が織りなすウェーブのかかった髪型を持つ美少女、その口元はだらしなく緩みきっていて、それでも可愛いというのは悪魔的な可愛さの裏付けであった。


 彼女は地球と酷似した名も知らぬ世界へと新たなる生を受けた。それももう17年も前のことだ。

 彼女、いや彼と言うべきだろうか。

 彼はもともと男であった。転生した時に性別が変わっていたのである。最初こそ困惑に晒されていたが今ではもう慣れたものである。


「ふんふふんふふーん…ふへへ」


 男がやったら気色悪い行為に他ならないのだが、見た目だけは超絶美少女なのでそれでも可愛いで済まされてしまう。むしろいつもより可愛いと言えるであろう。


「せっかく美少女転生したんだから、色んな人にチヤホヤされたい!!!」


 このような発想から突如始まったのは


『男の子全員私に惚れちゃえ大作戦』


 この小学生が考えたような無理難題を彼女は押し通すことにした。彼女は決意に満ちあふれた目をしていた。

 すると彼女の部屋の扉が突然開いた。


「姫華?まだ起きてるの?早く寝なさい、明日から学校始まるんでしょ?夏休みの宿題は終わったの?」


「あ、ママ…しゅ、しゅくだい?終わったに決まってるじゃん...あと部屋入る時はノックしてよ!」


「はいはいごめんなさいね、早く寝るのよ」


 この日彼女は寝ずに4時まで勉強していた。


 ////


 思い立ったからには実行しないと!!

 夏休みの明けの新学期早々、目にできたクマを化粧で隠しつつとある゙計画゙の為に慌てて支度をした。


「ママ!!行ってくる!!」


「気をつけなさいよー」


 私ば計画゙の為に「眠いよ」という身体に鞭を打ち玄関から飛び出した。転んだ。


 それはもう盛大にずっこけたのである。


 あっ、死んだ....


 ...


 ....


 あれ??


「大丈夫...ですか?」


 私はたまたま家の前にいた少年に転んだところを受け止められていた。


 ただその受け止め方が悪かった。


「あの...胸...」


「あ...これは違くて...」


「...柔らかい?」


「別に...興味無いですし...」


「…いつ離してくれるの?」


「あ、すみません」


やばい。恥ずかしすぎる。

転んで、受け止められて、私は咄嗟に顔を腕で隠していた。彼に視線を向けないように、彼に目を見られないように、俯いた。


 てか胸に興味無いって、え?これツンデレ...??私一応美少女だよ??かなり可愛い部類の美少女だよ??傾国しちゃうよ?

 興味ないって何?あるでしょ?


黙っていると、彼が言った。


「いや、その、柔らかかった...です...よ?」


「いやそれ普通にセクハラだからね?!」


「聞いてきたの...あなた...」


 恥ずかしすぎて、相変わらず彼に視線を向けられないでいると、私が眺めていた地面へピンク色のハンカチが落ちてきた。私はそれを拾い上げた。

 ウサギが刺繍されていた。


「え?!ギャップすご!?」


「や、やめてください。僕学校があるので、また」


「え、ああ、うん。はいこれ、今度は落とさないようにね、まあ落としたの私のせいなんだけどさ」


 私にも非はあるだろう。だが美少女の胸を触った気分はどうだい?少年よ。



 あ、名前聞き忘れた。なんなら顔も見てない。誰なんだ、あいつ。



 //////


 2度目の人生で私は碧澄姫華という名前を授かった。

 あおずみひめか!17さいでしゅ!

 まず第1ターゲットの話をしようと思う。

 私が第1ターゲットとして狙っているのは隣の席の佐々木悠真くん。目は前髪に隠れて猫背であり、話す時はボソボソ。君は完璧で究極の陰キャ!前世で彼のような陰キャだった私は彼の気持ちが手に取るようにわかる。十中八九童貞......あれ、涙が…

 ダッシュで学校に向かった私ば計画゙のために朝早くから机で待機していた。

 隣の男の子が来るまで息を潜める。まさにアサシン...


 っ!!来た!!


「佐々木くん!おはよう!!」


「...」


 は?無視した??ツンデレかな?隣の席の美少女だよ??

 あ、わかった。わかったぞ

 彼がどういう思考をしているかよく分かる。大方「なんであの美少女の碧澄さんが僕なんかに…?!」という感じであろう。わかる…わかるぞ…照れちゃったんだよな?


「うん?佐々木くん、わたしだよ?わかるでしょ?」


「おはよう...ございます...」


「ふふ、佐々木くん緊張してる?もしかして私がかわいすぎて照れちゃったのかな?」


 どうだ…どうだ!私のギャルゲーで培った美少女力は!!!!即堕ちであろう?即堕ちであろう?ふはははははは!!!!


「いえ、それはないです。」


 ん?急に口調がハキハキとしたものに...

 顔を真っ赤にして....ない?あれ?照れてない....

 いや、ツンデレってやつよな??そうだよな??


「...」


 そんなことどうでも良くて今日の計画を皆様に説明しようかと思う。


 1、隣の美少女から挨拶される→好きになる。


 2、隣の美少女に優しくされる→好きになる。


 3、隣の美少女のえっちなとこを見る→好きになる。


 どうだ!!この隙のない構え!!好きの3段活用だ!!彼女いない歴=年齢だった私が考案した完璧な作戦...前世男だった私は男のことなど全てお見通しなのだよ!!1は成功として次は2と3だな....


てか、声めっちゃ朝の男の子に似てたな。もしかして佐々木くんがそうなのだろうか。


 とにかく、私は『男の子全員私に惚れちゃえ大作戦』改め『隣の席の男の子完堕ちしちゃえ!大作戦』を決行することにした。

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