第18話 地球型惑星

 タローは輸送船トランスに乗って一か八いちかばちかかのワープで地球型惑星に向かった。

 積み荷の移動は1日で終わったから、まだ頭に傷がある。

 その状態でのワープは大丈夫かどうか心配だったが、取り越し苦労だったようだ。

 輸送船トランプから惑星に向かって偵察機を何機も落とす。

 

 また、多目的軌道衛星を何十機も衛星軌道上に飛ばした。

 通信や地表の写真に天気予報にその他あらゆる事に使用される衛星だ。

 この手の衛星は赤ちゃんの手のひらに3個程載るぐらいに小型化している。

 勿論、軌道を支えたり移動したり当たってくるデブリから身を守るシールド付きの上に動力付きでだ。

 

 そうして惑星の情報を集めた結果、タローに似ている人種の居る地域が選ばれた。

 それにその地域に宇宙船からのワープ付き脱出カプセルらしき物が見えたのも原因の一つである。

 降下前、楓に宇宙ネットで無事に着いたとメッセージを送っておいた。

 降下地点は近くにある村から10km離れた開けた野原である。

 育成カプセルで降下したタローは思ったよりも揺れや衝撃がないので驚いた物である。


 到着して最初にした事は空間圧縮技術で小さくなる事と周囲の偵察である。

 これは危険な物体が無いかよりも目撃者がいないかといった目的の方が大きい。

 偵察して分かったのは着陸の余波で気絶している兎が居る事だった。

 兎を絞めて血抜きをして内臓を取り川に浸けて熱を取り、1時間経ったら頭や足先を取り皮を剥いで肉と骨を空間圧縮技術を少しだけ解除して大きくなった育成カプセルの分解専用のボックスの中に入れて各栄養素に分解する。

 狩りの工程や解体をするのはタローのサバイバル技術の教習の為だ。

 他にも果実や実を収穫して遺伝子を調べ、食べられる物なら育成カプセルの中に入れて栄養素に分解する。

 また、その際に擬態に使えそうな実や果物の遺伝子や形状を記憶しておく。

 そうして日々を暮らしている内に果実や実の中の遺伝子を見ると元は地球産と見られる物が数多くあった。

 

 そうこうして2ヶ月を過ごしたが、ここの惑星では奇妙な動物や植物も居るが育成カプセルの相手になるような物は居なかった事が分かった。

 そうして崖にある遺伝子が元が地球産である桃を取ろうとした時に桃を取ると同時に足を滑らせて崖の下の川に落ちてしまった。

 急流な川で、地上は遙か上となると上るのは燃料が要る。

 それならば空間圧縮技術で赤ん坊が中に入っている程度の大きさになり、重力装置でカプセルの中は1Gで外は取った桃と同じぐらいの重さになる重力に変更した。

 そうすれば、川に流れてやがて川原や流れの緩い所に出るだろうと思ったのだ。


 そうしてどんぶらこどんぶらこと川に流されている内に川の勢いは緩やかになったが村に近づいているのが分かったので取った桃を素材に大きな縦長の桃に擬態した。

 そうして川に流されていると、ピンと張った紐に当たり流れるの緒を止められました。

 何だろうと周囲を観察すると、お婆さんが紐を木々に張り、桃を紐で受け止めていました。

 お婆さんは川に入ると桃に擬態した育成カプセルを両手で持ち上げて川から上がりました。

 そしてお婆さんは背負子しょいこに育成カプセルを入りきらないが入れる分だけ入れると、桃を受け止めた紐を木々から解いてほどいて育成カプセルと背負子に落ちないように括り付けました。

 そしてお婆さんの家に桃を置きに行きました。


 お婆さんは家の中に桃を置くと、”川に洗濯物の最中じゃった”と言って紐を持って川に戻っていきました。

 タローと育成カプセルは大慌てです。

 

「これからどうするんだよ。育成カプセル」

「タローさん、黙って逃げ出しましょうか?」

「あの婆さんが帰ってこないうちに逃げ出すとしようぜ」

「それが1番ですね」


 こうしてタローと育成カプセルが逃げだそうとすると、扉が開いてお爺さんが入ってきました。

 タローと育成カプセルの計画は破綻しました。

 お爺さんは枝のような物を大量に持っていて、それをかまどのそばに置きました。

 そして此方を見るなり”とても大きい桃じゃのう。食いでがありそうじゃわい”と言って包丁を研ぎ始めました。

 しゃーこ、しゃーこ、お爺さんが包丁を研ぐ度に音がします。

 実際には食べられる事はないでしょうが育成カプセルとタローはいずれ食べられるような気がしておののきました。


 そうこうしている内にお婆さんが帰ってきて洗濯物を干したので”大桃でも食べないか”とお爺さんに言います。

 お爺さんは”そうしよう”と言うと、桃の頂点に包丁を振り落としました。

 ガキンという音がして包丁が跳ね返されました。

 お爺さんは一瞬呆然とした後、力の限り何度も桃と思われてる育成カプセルに叩き付けます。

 その度にガキン! キン! と言った音がして跳ね替えされます。

 幾たびの時間が流れたでしょうか、お爺さんは疲れて包丁を放り出して言いました。


「駄目じゃ、耄碌したのか妖怪か大桃1つ切れん様になってしもうた」

「あなた。あなたが悪いんじゃないの。きっとこの大桃は化生の類いなのだわ!」


 そんな事を言われた育成カプセルは思わず喋ってしまいました。


「失礼ですね!仮にも天からやってきた私に使う言葉では無いでしょう!」


 お爺さんとお婆さんは揃って言いました。


「「大桃が喋った~!」」


―――――――――――――――――――――――――――――

育成カプセルが勝手に喋ったせいでとんでもない方向に話は行くよ!

次回の内容は若返りです。

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