第12話

緊急事態ということで、コーク・ローチと部下の騎士たちを送り出したリリィはため息を吐いた。



「……マグーマ様には本当に呆れ果てるわね」


「いっそのこと引導を渡しにいきますか?」


「そうね。それもいいかもしれないわね。ちょっとお父様に相談してみましょう」



『バカ王子に引導を渡したい』とリリィは父親に頼んでみると、あっさり許可が下りた。



「ジェシカが一緒なら大丈夫だろう。いい加減に無能王子を永遠に黙らせたいだろうしな。今度は男爵にでもしてしまえ」


「流石はお父様です。分かっておらっしゃる」


「すでにダブール商会の者たちからも目撃情報をもらっている。居場所も特定できそうだ」


「まあ、それではアッキーがやってくれたのね!」


「……お前の人脈こそ流石だよ。隣国の商会の会長と友人だなんて」



普通なら王太子に返り咲こうとして失敗するような馬鹿な男の捜索など、父親なら誰もが不愉快に感じるだろうが娘のリリィのずぶとさとジェシカの戦闘能力を知るフランク・プラチナムは笑顔で送り出した。



「リリィはもはや私よりも有能というわけか。天真爛漫に見えて頭は本当にキレるものだ」





プラチナム公爵家が独自に入手したダブール商会の情報から、ティレックスの領地に続く数少ない道の一つに怪しげな集団を見かけたという。その中にマグーマとアノマの姿が目撃されたらしい。その情報を元にリリィとジェシカは   コーク・ローチやトライセラ王子に内緒で先回りしていた。



そして、怪しい場所を探る前に最初に問題の二人を見つけ出した。



「見つけましたわよ。マグーマ・ティレックス伯爵。そして、アノマ・ティレックス伯爵夫人」


「げぇ!? お前はリリィ! 何故ここが!? うわっ!?」


「何でまたあんたたちが!? きゃあっ!?」



貴族服のままのマグーマとメイド服のアノマは、馬車を走らせる馬に乗っていた。だが、二人はリリィたちの姿を見るや驚いて馬から転げ落ちてしまった。



「いてて……何故こんなに早く……!?」


「すでに父がダブール商会に捜索の協力をお願いしたから見つけられたのですよ。目撃情報と貴方の性格から逆算してここを調べるつもりでいましたが、結構早く見つけられたわけです」


「そんな! くっそー! 何がダブール商会、余計なことをしやがって! 他国の成り上がりのくせにー!」


「なんて嫌な商会なの! 他国に踏み込むなんて生意気じゃないのかしら! あんたたちまで頼むなんて!」



マグーマは憤りながら地団駄を踏む。アノマも憎々し気にリリィたちを睨めつける。

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