エルフの長耳


 昔、ある所に蛮族の治める国があった。


 その国では殺した敵の耳の数で褒賞が決まる。

 ある時、その国と隣国との間で戦争が起こった。

 戦争は蛮族の勝利で終わった。


 終結後、ある頭の足りぬ蛮族が、たくさんの耳を持って陣営にやってきた。


 その中に、エルフの長耳が混ざっていた。


 陣営にいた全員の顔が、さっと青くなる。

 蛮族の国はエルフの支配下にある国だ。エルフを殺してしまったとあれば、報復として、最悪、国ごと滅ぼされる恐れがある。


 蛮族の王は、彼らの王国に許しを乞いに向かった。


 すると、エルフの王は困惑げにこう言った。


 「これはまさしくエルフの耳だ。しかし、我らは最早百人といない。その中に、耳を失ったものも、死んだ者もいない」


 ーーーこれはいったい、誰なのだ?


 戦場の死体は腐乱し、誰が誰かも判別がつかない。耳を持ってきた男も処刑されてしまっている。


 エルフの長耳の持ち主は誰だったのか?


 それは、永遠の謎になってしまった。




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