異世界蒐集家の走り書き〜原稿用紙1枚でもファンタジーは書けるんです!〜

せなね

彷徨う鎧


 あるダンジョンには彷徨う鎧が出現する。


 彼、もしくは彼女は、悪いモンスターではない。ダンジョン内でピンチに陥っている冒険者を見つけると、どこからともなく現れ、助けてくれるのだ。

 故に、彷徨う鎧はダンジョンの守り神としてそこで生計を立てる冒険者たちに愛されていたのだがーー


 ある日、1人の聖職者が現れた。


 「このダンジョンには邪悪な魔物が巣食っている。今すぐ祓わねばならない!」


 彷徨う鎧のことを言っているらしい。冒険者たちは鼻で笑って誰も相手にしない。聖職者は憤慨し、「自分1人でやる」と言ってダンジョンに潜っていった。


 数十分後。


 聖職者の悲鳴が聞こえた。近くにいた冒険者が駆けつけると、そこには血の海に沈む聖職者の姿があった。近くにモンスターの姿はない。


 ガシャンガシャン、という音が聞こえた。


 冒険者のいる反対側から、彷徨う鎧が現れた。


 その鎧が、微かに血に濡れているような気がした。









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