夏の日の思い出()

たてごと♪

夏の日の思い出()

 ある夏の日。

 炎天のなか、自転車で遠乗りに出ていた。


 日差しは強く、はだをジリジリ焦がす。

 また同時に、一帯のすべてをもよく照らし、その像をっきりと浮かび上がらせる。

 視界に鮮烈な景色が広がる。

 風もよく吹き、蒸れたくさいきれをくうまで運んでくる。


 (ああ、夏の風景だ)


 そう感じつつ、ペダルを進めていた。


 とある交差点。

 信号が赤だったから、止まって待つ。


 ふと、側道のほうでクルマが、へいかどギリギリに止まる。


 (うわー、擦らないでね……)


 そう思いつつ、信号は青に。

 ペダルを踏み込み、その場を去る。


 しばらくして、背後から大きな音が聴こえた。


 そのまま振り返らずに、前へ進んだ。

 振り返ってはいけないと思った。

 しっかりと前を向いていなければならないと思った。


 こころしか、視界は曇っていたように思う。


 ──ある夏の日の思い出。 



゠了゠

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