人は猿から進化したというのは嘘である
「人は猿から進化した」という言葉を聞いたことはありませんか?
この言葉は、進化論の代表的なイメージとして広く流布されていますが、実は間違いです。正しくは、「人は猿と共通の祖先から枝分かれして進化した」ということです。
では、なぜこのような誤解が生じたのでしょうか。その原因は、19世紀に発表されたチャールズ・ダーウィンの『種の起源』という著書にあります。
チャールズ・ダーウィンは、イギリスの自然科学者であり、進化論の父と呼ばれています。
彼は1859年に『種の起源』という著書で進化論を発表しました。この本では、生物は自然淘汰という過程を通じて変化し、新しい種が生まれるという考え方を提唱しました。また、人類も他の動物と同じく自然淘汰によって進化したと主張しました。
しかし、ダーウィンが『種の起源』で提示したのは、「猿と人間には共通の祖先がいる。猿と人間はその祖先から枝分かれしてそれぞれに進化した」という論であり、「人が猿から進化した」という言葉は一言も書いていませんでした。
「人は猿から進化した」という誤解には、以下のような背景があります。
19世紀の学界での考え方
当時の学界では、人類の系譜を直線的に捉えがちであり、人の進化の過程を様々な図式で紹介していました。
例えば、一番下の猿から、階段を一段登るごとに現人類に近づく表し方や、直立するにつれて体毛がなくなり、現代人の姿に近くなっていくように描かれた絵などです。これらの図式は視覚的に印象的であり、進化の過程を直線的に理解させる効果がありました。
キリスト教信者やマスコミの反応
キリスト教信者の中には、聖書の記述=史実と考え、「人間は神が創造した」と信じる人たちが少なくありませんでした。
ダーウィンが『種の起源』を著した時、彼らは著作をまともに読まないまま、「人が猿から進化したはずがない」とダーウィンを責め立てました。特に新聞報道が「種の起源」の主題を「人が猿から進化した」論と決めつけ、大々的に報道しました。
これにまた著作を読まない人々が呼応して声をあげたため、いつしか誤った常識が定着してしまったのです。
「人は猿から進化した」という誤解を正すためには、人類と類人猿の共通祖先に関する最新の研究を知ることが重要です。
現在、科学者たちは化石や遺伝子などの手がかりから、人類と類人猿の共通祖先がいつ、どこで、どのように分岐したかを解明しようとしています。
例えば、2017年には、ケニアで1300万年前の幼い類人猿の頭蓋骨化石が発見されました。
この化石は、ニャンザピテクス属の新種であり、テナガザル科に属する動物でした。この動物は、人類と遠い類縁関係にあるテナガザルの顔に似ていましたが、動き方は異なっていました。この発見は、人類と類人猿の共通祖先がアフリカに起源を持つ可能性を示唆しています。
また、2014年には、チンパンジーの遺伝子突然変異率に関する初の研究が発表されました。
この研究では、チンパンジーの遺伝子突然変異率はヒトと変わらないことがわかりましたが、オスのチンパンジーはメスよりも多くの突然変異を子どもに伝えることがわかりました。このことは、チンパンジーの精巣で細胞分裂が速く行われるためだと考えられています。
この研究は、チンパンジーとヒトの遺伝的分化が始まった時期を推定する手がかりになります。
「人は猿から進化した」という誤った情報は、ダーウィンの『種の起源』や進化論を正しく理解しないまま広まってしまったものです。
しかし、科学的な事実や最新の研究を知ることで、「人は猿と共通の祖先から枝分かれして進化した」という正しい情報を得ることができます。
進化論は、生物の多様性や歴史を説明する有力な理論です。
しかし、進化論は決して完成されたものではなく、常に新しい発見や証拠によって修正されたり補強されたりしています。そのため、進化論を正しく理解するためには、常に最新の科学的知識や情報を得ることが大切なのです。
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