第7話 足手まといの愛莉
見知らぬ森。
暑さと湿気とで、汗が止まらない。
だが、その先入観が却って危機を招く結果となった。
空中にばかり注意が向いていたため、足元が全くお留守だったのである。
歯だ。
肉厚の植物が、ちょうどハエトリグサの要領で口を開け、
マリオシリーズのパックンフラワーを彷彿とさせるが、それとは色もサイズも違うだろう。こちらは人の背丈ほどもないし、色合いも赤ではなく、どこか青痣を思わせる。
「いやっ!」
ずるりと、
まさか、こいつは人間を引きずりこもうとしているのか。
どうするべきかなぞ、考えるまでもなく理解できた。
しかし、
いつ、どこで
ましてや、現在の班員は、
救助にどれだけ時間がかかるのか、見当もつかないうえに、その間は完全な無防備になってしまう。残念ながら助けられない、というのが
「見捨てるの!?」
そんな心の動きを察してか、
他人の悲鳴、それも女性のものを間近で聞いて黙っていられるほど、
硬い。
およそ、植物とは信じがたいほどの硬度である。
元来、この
極めて、食欲旺盛。それゆえに、
おまけに、一度、櫛状の歯に噛みつかれると、そこから逃れることは難しい。ネズミはもとより、人であっても難儀する。
懸命に、
そうやって格闘を続けていれば、さすがに見るに堪えなくなったのか、溜め息をついた
サバイバルナイフで四方八方からめった刺しにすれば、さすがに
案の定と言うべきなのだろう。
手早く、
「ありがとう、助かったわ」
「……」
助かったのかどうかはまだわからないだろうと、そんなことを言いたげに目を伏せている。
なぜ、そこまで
「歩けそうか?」
「ええ……まあ、なんとか」
だが、それが無理していることは明白だ。
とてもではないが、長距離の移動は不可能だろう。途中でギブアップするのが目に見えている。
ならば、日が落ちる前に、安全なシェルターを見つける必要がある。そこで一夜を明かすのだ。
そのあとのことについては、また別の機会にでも考えればよい。
今はとにかく、身を守れる場所を確保しなければならなかった。
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