最強オタクおっさん異世界転生する

長可

第1話

一条為朝、42才サラリーマン

身長175㎝、体重63㎏

日本人、兵庫県出身、東京在住

地元で小中高を卒業

卒業とともに親子でイギリスに移住

20才でイギリス軍へ入隊、32才で脱退

33才で日本へ帰国

34才で衣料品系会社に入る

36才でVtuberを知りのめりこむ

給料のほとんどを現在までの6年間つぎ込む

総視聴時間は5000時間超

推しはVtuber事務所スターライン6期生雨水やまと


「これが暗殺対象か」


12年の従軍経歴があるが10年のブランクと体の衰えのあるこの男を殺すのが俺の今回の仕事である。

正直に言って簡単な仕事である、軍隊経験者も10年のブランクはそれを忘れさせることのできるものである。すなわち一般人を殺すのと同義の仕事だ。

なぜ殺すかなどの理由は俺の知るところではない。ただ殺すだけだ。

資料を隅から隅まで確認し、行動を開始する。


まず1か月かけ対象を観察し生活ルーティーンを割り出す。

情報屋などでおおよそを把握。


朝6時に起床

朝食と着替えを済ませ動画サイトを確認

8時に家を外出、9時に出社

7時の定時に即退社し8時に帰宅

夕食を食べ、配信の視聴

終了と同時に就寝


これが基本的な彼の生活習慣である。

暗殺するならば就寝時、もしくは配信視聴時だな。

割り出せたなら、あとは決行である。


平日の昼間に配達物に紛れ家に接近、誰にも見られぬよう、痕跡を残さぬよう細心の注意を払いながら家宅へ侵入。

把握しておいた通りの賃貸の1LDK。

頭の中の見取り図を頼りにあまり彼の使用していない衣類のあるクローゼットに隠れ、彼の帰宅を待つ用意しておいたサイレンサー付きの拳銃を用意し彼のいつも配信を視聴するPCの狙える場所に悟られぬ程度の隙間を開ける。

あとは彼を待つだけだ。



午後8時、ガチャッと扉の開く音がし彼が帰宅する。

荷物を食卓に置き、スーツを椅子に掛ける。

荷物の一つのコンビニの袋から総菜を食べる。

ゴミを捨て彼の墓標となる予定のPC前の椅子に座る。

PCを起動し、ヘッドフォンを装着。

マウスを操作し動画サイトを起動する。

雨水やまとのチャンネルを開き、今日の配信の待機画面に移る。

5分程度たつと配信が始まり。彼はコメントやスパチャなどをしていく。

30分程度たてば彼は完全に配信に、ライバーに夢中だ。

確実に一撃で殺せるよう、後頭部、脳幹に狙いを定め。

引き金に指をかけ・・・引く。


ピュン


――――――


俺、一条為朝は今日も会社に出社し、いつも通りのサラリーマン生活を過ごした。

営業先から会社へ連絡を入れそのまま退社。

時刻は7時30分。

定時を30分過ぎている、いつもは確実に定時上がりなので少し変な感じもする。

幸い営業先から自宅まではそう遠くないので歩いて帰る。

賃貸の階段を上り自宅の鍵を開ける・・・、が何か変な感じだ。

よくよく鍵穴を見ると今まででは見られない小さな傷が見られる。

ピッキングされた痕跡だ。

空き巣にでも入られたか?

でも取られるようなものもないしな・・・。

まあ、明日警察にでも連絡するか。


そう思いながら扉を開けると、意外にも部屋の中は荒らされた痕跡はない。

だが・・・。


殺気を感じるな。

しかも、素人のそれじゃない。

ピッキングのきれいさからもそこら辺の腕ではないとわかるが、かなりできるやつだな。

だが、今のタイミングで獲りに来ないとなるとおそらく俺が配信を見始めた時に撃つつもりだな。

そうなると、ポイントは・・・あそこか。

クローゼットが少し動いている。

気を付けて観察しないとわからない程少しだ。

警戒心を引き上げながら、それを悟られぬよう平然といつも通りを装う。

荷物を食卓に置き、スーツを椅子に掛ける。

荷物の一つのコンビニの袋から総菜を食べそのごみを捨てる。

推しのチャンネルを動画サイトで開きヘッドフォンをし待機。

配信が始まると俺は一気に警戒心を引き上げた。


殺しに来るタイミングはここしかない。

殺気の高まりを背中で感じろ。

5分、10分、20分、確実に来る敵の攻撃に備える。

そして30分・・・。


殺気の高まり!!

来る!


ピュン


コンマ一秒、その間に俺は身をひねり床に転がる。

と、同時に放たれたクローゼットに接近し一瞬で体勢をとりクローゼットの扉を蹴り破り相手を後ろの壁にたたきつける。

扉と壁の二枚ばさみ、そこに蹴りの威力で敵の鼻はひしゃげたと思う。

レールを外れ倒れこんだ扉を即座にどけ持っていた拳銃をディザームする。

が、敵もプロだ。花がひしゃげたことなど気にせず足につけてあったナイフを抜きみぞおちに突き出してきた。それを右に半身にして回避。

少しハスったがどうということはないだろう。

そのまま拳を握り相手の喉に突き刺す。

カヒュという息のすれる音と同時に相手の喉がつぶれ、ナイフを手放す。

呼吸ができず苦しんでいる敵にさらに、攻撃を加えようとしたが顔面めがけて突き出した拳は空を切り敵は俺の股間に向けてL字に曲げた手を突き上げる。

それを左手で受け止めて首をひねり上げ拘束しようとすると、ボキッと音がして奴の肩が外れた技は不発に終わり、敵は腹筋力だけで上体を起こし俺の鼻頭に頭突きをかましてきた。避けることができずにまともに食らうとキーンという香りが鼻腔を満たし鼻血が流れ出る。

思わず手を緩めるとそのすきに敵は左肩を強引にはめ俺の手から外しナイフを握って突き刺そうとする。が、俺はその向きを敵側に向けさせ相手の右肩に突き刺すそれを蹴って貫通させ右腕とナイフを使用不能に。

一瞬のことで手を離すの忘れた敵の肘の下側を掌底で押し上げ床に腕と胸骨を一緒において自身の膝に体重をかけて取り押さえる。


「制圧完了」


動かせる足と体のひねりで敵も逃げ出そうとするが、顔面をタコ殴りにして黙らせる。ナイフを肩口から引き抜いて健を切り完全に無力化すると俺は問いかけた。


「何者だおまえ」

「・・・」

「まあ正直に答えるわけないよな、けど平々凡々な俺を殺しに来るなんて美学の美の字も知らなそうだな」

「・・・」

「だんまりかよ、しょうもねぇ。まあ答えるなら三流だからな・・・っておまえ!!」


敵は口を大きく開け舌を出すと、そのまま舌をかみちぎり死にやがった。

迷わず死を選ぶってことは、やっぱりかなりの手練れだな。

しかし、これは事後処理が面倒だ。

なんてったって人が死んだからな。

正当防衛で罪には問われないと思うが、警察との応対が面倒くさくなる。


「しゃあない、110番に連絡・・・」


ドクンッ


「ぐぅ!!」


ドクンッ


「げはぁ!!」


急に心臓が強く波打ち俺は口から吐血する。

これは・・・。


「毒塗りやがったな」


転がっているナイフをよく見ると薄く液体が塗られているのが見えた。

あの時だ完全によけきれずにハスったとき・・・。

食らった毒の量は多くないだろうがそれだけでも死ぬ毒のようだ。

つまり肩口に思いっきり刺さったこいつは遅かれ早かれ死ぬっはずだったてことか。

血を吐いたときに落としたスマホに手を伸ばし119番を押そうとするがプルプルと震えてうまく押せない。


神経毒だな、殺意はマシマシってことか。

指先に力が入らなくなり脱力感が俺を襲う。

俺は前のめりに倒れこみ、ハアハアと肩で息をするようになった。


上手く呼吸できねぇ、こんなところにも影響を及ぼすのか・・・。

助けも呼ばせないつもりか・・・?

用意周到だな。

何度か毒は食らったことがある・・・が、ここまで強力なのはなかなかないな。

というか食らったことがない。


なんか・・・体が冷たくなってきた。

死ぬんだなぁ俺。

42才童貞で死ぬ、恥ずかしいなぁおい。

親に顔向けできねぇじゃねぇか。

親不孝者の罪な男だよ・・・俺は。

まぁ、来世とやらを信じてその罪は償えることを祈ろう。


そうして、俺は息を引き取った・・・。

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