【急募】いずれ破滅する少女を救う方法

西基央

スタート・バッドエンド



 リオール・ザグナはまだ22歳という若さで二つ名を持つ魔法使いだ。

 世界最高位の魔法使いに師事し、“雷光”と謳われる強者。こと戦闘においては同年代どころか歴戦の術師とも肩を並べられる自負があった。


「……はず、なんだけど、なぁ」


 それが、十七歳の少女に、こうも後れを取る。

 既にリオールの右腕はない。あの少女に力づくで引き千切られた。

 断面から覗く骨と赤黒い肉。応急処置として治療魔法はかけたが完治には至らない。  


『オォ……』


 見目麗しいが目に光はなく、獣のような呻きを漏らす。

 暴れ狂う少女はリオールにとっては妹分のような存在だった。それなりに面倒は見てきたし、仲もよかったと思う。

 なのに、面影を残しながらも、彼女はその腕で騎士の首を掴み吊り上げる。


「やめ、てくれ……。君は、そんな子じゃ、ないだろう?」


 騎士の名はゼノス・デア・ガディ。

 マジメで清廉潔白で……たぶん少女に、ほのかな慕情を抱いていた男性だ。

 それが他ならぬ想い人の手でその生涯を終えようとしている。


「が、あ……!?」


 騎士の体が粒子に変換され、少女に吸収されていく。

 ああ、これだ。

 あの少女は生きとし生けるものを魔力に変えて“食う”ことができる。リオールの腕も食われてしまった。

 命の天敵となった妹分は、無表情のまま周囲に滅びを押し付ける。


「なあ。僕は、君のことが……」


 騎士は最後の言葉を紡ぐも伝えきれず途切れる。

 粒子となり、少女に取り込まれ、死体さえ残らなかった。

 命を持つ者は、どれだけ強くてもアレには敵わない。


「なんで、こうなんのかなぁ……。俺は、あの子に。ケーキをご馳走する、約束が」


 けれど交わした約束も、人の目ではとらえきれない速度で迫る少女にかき消された。

 ごきり。

 一瞬でリオールの首はへし折られ、暗転。

 

 少女が得た称号は<滅びを告げるモノ>。


 それに相応しく、迷宮都市トランジリオドは滅びた。 

 最後には歓喜のような、嘆きのような、少女の雄叫びだけが響いていた。

 





 ◆






 初めまして。

 僕の名前はオウマ・エッラ

 黒猫の姿をしているが、一応使い魔ということになる。

 ご主人様はテネス・フェルロイ。

 剣と魔法の異世界ファルセリアにおいて、世界一の魔法使いなんて呼ばれているお方だ。

 

 僕はこの物語において傍観者……とまでは言わないが、あくまでも脇役でしかない。

 主人公と言えるのはご主人様が造り上げた一人の少女だ。

 だから僕の本名は忘れて、【語り部さん】と気軽に呼んでくれると嬉しい。


 魔導生命体、高次霊体。

 言い方はいくつかあるが、その少女は簡単に言うと「物質化した魔力で構成された人間」。

 と言っても一度固着してしまえば魔力に戻ることもなし。

 肉を持ちて生き、死ねば土に還る。過程が違うだけで、この世に産み落とされた尊い“ただの生命”と考えていい。


 しかし問題もある。

 その子は母胎で成長するわけではなく、ご主人様が魔術式を組んで産み出した。

 結果、誕生した時点で外見は十三歳前後。保護者に育成されたわけではないため、言葉を喋り意思疎通も図れるが、他はまっさらな状態だった。

 とはいえ傑作のひとつ。才能という点では飛び抜けており、その気になればあらゆる技術を習得できるだろう。


 さて、ここで僕のご主人様の話に戻す。

 ご主人様の『右目』は少し特殊だ。これは不確定な未来を見通す『先見の魔眼』。だからこそ、分かってしまう。


『私は、彼女の育成に失敗する。そう遠くない未来、この子は無残な最期を迎えるだろう』

 

 そう、仰っていた。

 少女はいつか周りにいるすべての人間を皆殺しにして、食らいつくし、その果てに大陸そのものを滅ぼすのだと。

 他の手に預けようにも、世界最高位の魔法使いが生み出した魔導生命体。研究体としてあまりにも優れすぎている。

 解剖してその体組成を調べ尽くそうとする魔法使いはいくらでもいる。


 つまりご主人様は完全にこの子を持て余していた。

 もともとは研究の過程で生まれた子供。

 失敗だと分かっているなら敢えて時間を割く必要もない、と考えてしまう程度にはクズなお方でもあったし。

 だとしても一度成立した命を積極的に終わらせるのもしのびない、とは思ったのだろう。


 なのでご主人様は、少女を僕に預けた。

 テイのいい厄介払いと思わなくもないけど、任された以上はちゃんと面倒を見ないといけない。

 あいにくと猫のカラダなので出来ることに限りはある。

 だから語り部で、せいぜいが教育係くらいのものだ。


 何故僕に預けたのかって?

 そんなもの決まっている。


 僕は遠いどこかの言葉を識る使い魔。

 ご主人様ですら見通せない者の言葉を読み、どこにもない未来を紡ぐことができるからだ。


 今、少女は迷宮都市トランジリオドという、ダンジョンで経済を支える都市国家で一人暮らしをしている。


 彼女はダンジョンの探索者になるのか。

 まったく関係ない、魔法使いとして大成するのか。

 いやいや、もしかしたら稀代の娼婦として名を遺すかもしれない。


 さて、どうか彼女の道行きを決めてもらえないだろうか?

 まずは、この少女には名前がない。

 可憐な娘に相応しい名をつけてほしい。



 

※このお話はいずれ化物になる少女を真っ当な人間にすることを目的とします。

 なので少女のことを知り解決策を探しても、戦いと一切関係ない人生を歩ませることで覚醒させないでもエンディングとなります。

 話の途中【先見の魔眼】による未来予知で、「近々起こる事件」が告知されます。

 これをクリアするために、少女にスキルを習得させてください。


 まずは少女の名前を付けて頂けると嬉しいです。

 ボクっ娘、オレっ娘も序盤のうちなら変更可能。

 最後にダンジョンのある都市国家に移り住んだばかりの少女がとる行動を提案していただければ幸いです。

 荒らしはご勘弁を。



《短期の行動指針》

 ・名前、一人称を決める。※最重要。

 ・情操教育を行う

 ・街を散策してみる(買い物に出かける、知人を作る、床屋にいって髪を整える。服を買うなど)

 ・ダンジョンについて調べる。

 ・スキルの獲得。

 ・アルバイトを探す。


 などなど。





──────────────





【ステータス】

<名前>まだありません

<称号>まだありません

<性別>女

<年齢>13歳

<性格>

 弱気、機械的

<外見的特徴>

 幼い。

 髪型は伸ばしっぱなし。

 体型はガリガリ

 小汚いし、服がボロボロ。


<生活技能>

 なし

<保有スキル>

 なし

<習得魔法>

 なし


<交友関係>

 テネス・フェルロイ(男性・34歳)

 創造主。世界最高位の魔法使い。


 リオール・ザグナ(男性・18歳)

 まだ出会っていません。

 彼は魔法使いであり、魔法を習得しようとすると縁が生まれるでしょう。

 魔法系のアイテムを求めると出会う機会があるでしょう。


 ゼノス・デア・ガディ(男性・23歳)

 まだ出会っていません。

 迷宮管理機構に所属しています。

 騎士であり、武術を学ぼうとすると縁が生まれるでしょう。

 またダンジョンを調べると出会う機会があるでしょう。

 先輩に連れられて娼館に来ることがあるそうです。

 彼は十三歳から十八歳がストライクゾーンです。


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