囚われの砂漠姫は、悪魔と噂される太陽王の花嫁になる

坂合奏

プロローグ 太陽王からの勅書

「モニカ・マルドナド殿。貴殿は、太陽王の花嫁として選ばれることになった。直ちに荷物をまとめ、首都オステンデスの城へと向かうこと。これは、陛下からの勅書ちょくしょである」


 古びた亜麻色の土壁の部屋には似合わない豪華な衣装をまとった男が声を張り上げて読み上げた。

 右目に金の刺繍が施された黒い眼帯が印象的だった。男の肩まで綺麗に切りそろえられた紺青色の髪の毛がゆらりと揺れる。


 部屋の中にいる人々の視線が私に向くのを感じた。

 私が何と答えるのか、気になっているのだ。


 先代の老王アレハンドロに反旗を翻し、王宮に住まう人々のほとんどを追い出し処罰した、悪魔の生まれ変わりと噂される太陽王からの勅書を断ることはできないだろう。


 もし、断りでもしたら、次の瞬間首から上が床に転がり落ちることになるだろう。


 私は、一歩だけ前に出て頭を下げた。


「謹んでお受けいたします」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る