第2話 『都合の良い妄想的な何か』
勢いではいと答えて、連絡先を交換した。そして、今の俺は最高に浮かれていた。というのも、三嶋さんが俺の好みドストライクだったからだ。
黒髪ロングの清楚系美少女。まさに俺の理想のタイプだ。
そんな彼女と付き合うことになったのだから浮かれるなって言う方が無理がある。
だが、しかしだ。
「(………よくよく、考えてみたらこれって罰ゲームじゃね?)」
冷静になって考えてみると、そう思えてならなかった。だって面識もない美少女にいきなり『好きです』とか言われても信じられないし。これは漫画やラノベでよくある『美少女が罰ゲームで陰キャに告白してくる展開』に違いない。
じゃなかったら、あんな美人が俺みたいな陰キャを好きになるはずがない。
……でも、
「でも、この幸せを噛み締めたい……」
罰ゲームでも何でもいい。
こんなチャンス滅多にないのだから。
俺は三嶋さんと付き合ってみることにした。こうして、俺は美少女と付き合い始めた。
△▼△▼
後に調べてみた分かったのは、三嶋香澄は先輩であり、俺の一つ年上なのだが、何故か留年している為、同じ学年らしい。何故留年しているのかは知らないが成績が原因ではないことは確かだ。
何故なら三嶋香澄は容姿端麗で頭脳明晰。おまけに運動神経抜群。完璧超人である。おまけに学園一の人気者であるということ。ちなみに、ファンクラブがあるらしい。
また、男子生徒だけではなく女子からも人気があるらしく、特に下級生からの支持が厚いとのこと。
性格は温厚かつ面倒見が良く、誰に対しても優しいということだ。
対して、俺こと天野亮司は成績は中の上だし、運動音痴だし、友達はいないし、イケメンでもない。……改めて考えると、俺ってダメ人間すぎるだろ。
………そんな人がどうして俺なんかを選んだのだろうか?罰ゲームだとしても、俺を選ぶ理由が分からない。『遊びよ?』と言わた方が納得できる。
つまり、俺みたいな陰キャは彼女に相応しくないというわけだ。きっと、俺なんかよりももっと素敵な相手がいるはずだ。例えば、中村洋介とか宮沢祐介とかならお似合いだと思うけど。
「はぁー」
ため息を吐く。
今日も憂鬱だ。学校に行きたくない。けど、行かないと親に心配をかけてしまう。それは避けなければならない。
重い足取りで家を出て、学校に行く。
すると――、
「あら、おはよう。天野くん」
三嶋さんが待っていた。サラサラの黒髪を靡かせながら笑顔で挨拶してくれる。
俺は少しだけ、嬉しくなった。昨日まで笹川さんのこと考えてたのに現金なやつだよな、俺。
「お、おはようございます!三嶋さん!」
思わず声が裏返ってしまった。恥ずかしい……。
でも、彼女はクスリと笑うだけで、バカにする素振りを見せない。それどころか、優しく微笑んでくれる。
その表情に俺はドキッとした。
何これ。童貞の妄想か?それとも夢オチか何かですか?
「ふふっ。これからよろしくね?」
くるりっとスカートを翻して歩いていくその姿はとても絵になっていた。……どうしよう。
このままだと本当に惚れてしまいそうだ。駄目なのに。これ、罰ゲームかもしれないのに……。それでも良いと思ってしまう自分がいた。
△▼△▼
「(ああ……なんてこった)」
昼休みになった。俺は今現在、学園のマドンナと一緒に昼食を食べている。……なんだろう。この状況は? 俺みたいな奴が学園一の美女とお弁当を食べるなんて……
「(これはギャルゲーか?それとも、ラノベ?)」
だってあまりにも都合が良すぎる。美少女と付き合うだけでなく一緒にお昼ご飯まで食べてるんだぞ!?こんな幸せなイベントあっていいのかよ! 俺は心の中で叫びまくっていた。しかも、
「はい。あーん♡」
三嶋さんは箸で掴んでいる唐揚げを差し出してきた。
えぇ……これもしかして現実なのか?実は俺はまだ夢の中じゃないのか? そう思うくらいにはあり得ない状況だった。
でも、目の前にいる三嶋さんは確かに実在している。幻覚でもなければ偽物でもない。正真正銘の現実だ。
俺の心の中の葛藤を知ってか知らずか、三嶋さんは――。
「……もしかして唐揚げ嫌い?それとも私とは食べられない?」
悲しげな顔を浮かべていた。……ヤバい。そんな顔をされたら断れないじゃないか。俺が悪いみたいになってしまう。
俺は観念したかのように口を開けた。
そして、三嶋さんの差し出した唐揚げを口に含む。
「美味しい……です」
「良かった。いっぱいあるからどんどん食べてね?」
………ああ。もう、いいよ。罰ゲームでも何でもいいや。この後、クスクスと笑われていても構わない。今はこの幸せに浸ろう。
そう決めた俺はその後、彼女の言う通り唐揚げをたくさん食べた。
△▼△▼
そして放課後。
俺は三嶋さんと一緒に下校していた。
俺はドキドキしながら彼女と並んで歩いている。隣を見ると、三嶋さんの横顔がある。その横顔は凛々しくもあり美しくもあった。
彼女は俺のことを好きと言ってくれた。だから、俺も……
「(好き、なのか?正直まだよく分からないんだよなぁ)」
てゆうか、本当にこれが恋なのかさえ疑問に思ってしまう。俺は今まで女性経験が全く無いし、そもそも恋愛自体まともにしたことが無い。……だけど、彼女といる時間は楽しいと思っている自分もいる。それが答えなんじゃないかと思うけど、確証はない。
てゆうか、まだ付き合って一日目だし焦る必要もないしなぁ。とりあえず、もう少し様子を見よう。
そんなことを考えながら、俺は三嶋さんと肩を並べて歩いた。
こうして、俺の学園生活が少しだけ変わった。
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