第40話
まな視点
全部思い出した。
私の両親は事故でもうっ・・・!
何もやる気が起きない。私は何をしているんだろう。
空くんが手を握ってくれている。どうでもいい。
工藤くんたちの声が聞こえる。どうでもいい。
お腹が空いた。りんごの匂いがする。
「あ・・・」
誰かがりんごを食べさせてくれている。
だれだろう。どうでもいい。
体がだるい。眠ろう。
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「まな、ぱぱたちはこれからお仕事に行かないといけないんだ。すぐに帰ってくるからそれまで待っててくれるかな?」
「うん! 早く帰ってきてね!」
「まなはいい子ね~。帰ってきたら一緒にお洋服でも買いに行きましょうね」
「わかった! もう飛行機の時間でしょ? いってらっしゃい」
「ああ、行ってくるよ。それじゃあえりこ、この子を頼んだ」
「わかってるよ、気をつけてな」
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「まな、お前の両親が、飛行機事故に巻き込まれて*****」
「え・・・・・・? 嘘だ! 帰ってくるって言ってたもん! そんなはずない! ぱぱが、ままが・・・・・・!!!」
ドン
「まな? まな!」
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「えりこさん、お父さんたちはいつ帰ってくるの? もう一年も帰ってきてないよ。すぐに帰ってくるって言ったのに」
「そうだな。きっとあっちの仕事が忙しいんだよ。でも、この間連絡があって、頻繁には帰れないけど、一年に一回は帰れるように頑張るよ、だってさ」
「そうなの?」
「ああ。だからまなは二人が帰ってきたときに喜んでもらえるように、いい子で待ってような」
「うーん、わかった!」
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「ねええりこさん。結局入学式も来てくれなかった。もしかして私、捨てられたの?」
「そんなはずないだろ? 大丈夫。二人は元気にしてるよ。だからそんなに落ち込むな」
「わかった。それじゃあ私、二人に喜んでもらえるように勉強とか頑張る」
「そうだな、あとは、最近私の口の悪さがうつってるみたいだから、それも直したほうがいいぞ」
「わかった」
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「結局今年も帰ってきませんでしたね。今日でもう五年、本当に私は捨てられてしまったようです。えりこさんはそんなことないって言うけれど、私に連絡を一度もくれないことを考えれば・・・・・・。いや、私は待ち続けないと。いい子にしていれば、きっといつか帰ってきてくれるはずです」
「・・・・・・。くそっ!」
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「えりこさん、私結婚することにします」
「は?」
「クラスのある方からプロポーズされたんです。どうやら本人は勢い余って言ってしまっただけのようですが、私もあの方は気になっていましたし、私は、家族がほしいです・・・」
「そうか、わかったよ。それじゃあ明日、その子の家に行っておいで」
「はい」
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まな、俺はずっとそばにいるよ。
どうしてそんなことを言い切れるの?
二人は結局私のそばからいなくなったのに。
どうせみんな私から離れていくんだ。私はただそれを見ていることしかできない。
どうして私をおいていくの?
やめて、おいていかないで! 私も・・・、私も連れて行ってよ・・・・・・。
大丈夫だよ、俺はいつまでもまなと一緒だ。
手が、手が温かい。
本当にずっとそばにいてくれるの?
もし私がいい子じゃ無くなっても?
ずっと、ずっと私の隣にいてくれる?
手は温かいままだった。
私を連れて行ってくれるなら。
二人のように私をおいていかないでいてくれるなら。
私は。
私はあなたのために、頑張れる。
空くん。
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