元カノに浮気された俺と元カレに暴力受けていた彼女
るい
プロローグ
ある日の出来事
恋愛なんて、自分の視野を狭くする心の
『私、光の事、彼氏だと思った事ないから』
高校卒業式の日に、一年半付き合った彼女に言われた言葉が
過去に二度と恋愛をしないと心に誓っていた俺は、駅前で女性と待ち合わせをするという矛盾した行動をしている。
『買いたい物があるから付き合って』
一人でも行けると思える内容だったが、彼女の圧に負けて、付き合うと約束しまった。それに、彼女と俺には、みんなに言えない、ある秘密があった。その秘密を果たすには、会わないといけない。
「お待たせー! どーん!」
立っている俺の背中を手で思いっきり押された。こんな、ゴリラもびっくりするような、コミュニケーションをとってくる女性は、彼女しかいない。
「
「なんで、フルネーム!?」
ポニーテールでまとめられた黒髪を揺らして驚いた咲は、目を丸くしてこっちを見ていた。
「なんとなくだ」
「
「なんで、俺のフルネーム」
「なんとなく?」
これ以上、突っ込むのは面倒くさいから辞めよう。確か、向かう先は、あっちだよな。さっさと買い物終わらせて帰るか。
「あ、またこじらせた考え方したでしょー。これ、これー」
咲は、そう言うと俺の頬をつつく。咲の顔を見た時、首筋にあるものが見えた、今日の咲が着ている服は、大きめな白のティーシャツ。恐らく、俺を突き飛ばした時に、服がずれてしまったんだろう。
「少し止まって」
「え」
咲にそう言うと、服のずれを直して、それが見えないようにした。
「傷が、見えていた。周りの人が、その傷を気にするのが嫌なんだろ?」
「あ、ありがとう」
咲は、頬を少し赤くして言う。この傷は、咲の元カレが付けたもの。咲は、高校時代、付き合っていた彼氏に、暴力をふられていた。これは、彼女が俺だけに明かしてくれた秘密。首元の傷以外にも何カ所か傷跡があるらしい。
「買い物、行くか」
「うん」
さっきのテンションとは違い、咲は少し大人しくなってしまう。指摘してしまったのが、まずかったか。でも、気にしている傷を周りに見せたままにすることもできない。
「ねぇ」
服の
「どうした?」
「手を
彼女は、そう言うと照れくさそうに手を差し出してきた。
「リハビリの約束だもんな」
「そう、約束。あくまでリハビリとしてね」
俺と咲は、お互い異性に恐怖心があった。そして、この恐怖心を
『私と光、協力して異性恐怖症を克服するリハビリ関係を築こう』
俺は、その時、今もかもしれないが、ひねくれていて、そこまで協力して、やる必要がないと思っていた。しかし、咲の熱量に押されて、この関係を持つことになった。
「咲、大丈夫か」
「平気よ。これぐらい」
「震えているぞ」
「うるさい」
俺は、確かに女性の事が好きになれないでいる。だけど、手を繋ぐといった、コミュニケーションは、平気だった。しかし、咲は、恋人達がする手を繋ぐといった行為が苦手になっている。だけど、好きな人がいるらしい。この関係を咲が提案したのも、恐怖心を克服して、好きな人と普通に恋愛をしたいという気持ちからきている。
でも、最初の日と比べれば、恐怖心はなくなっているみたいだ。最初の日は、手に触れた瞬間、ビンタされた。元カレに、手を引っ張っられ逃げられなくして、殴られていたことを思い出してしまったらしい。俺も女性恐怖症なんだけど、新たなトラウマ生まれかけていたという事は、口に出さないで、咲を許したのが、最初の日だ。
「咲、進歩したな」
「本当?」
咲は、目を輝かせながら、こっちを見る。
「あぁ、本当だ」
「私、異性恐怖症、克服できている?」
前のめりになって、聞いてくる。
「あぁ」
「やったー! 成長している私!」
咲は、手を繋いだまま、大きく前後に振る。肩が外れるかと思った。さっきまで、緊張気味だった彼女は、成長している事に気づいて明るくなっている。これが桜木咲、本来の性格なのだ。恐怖心と戦っている時の彼女は、殻にこもっているように大人しくなってしまう。
「ねぇ、ねぇ、帰りにご飯食べようよ!」
「それ、約束に入ってないんだが?」
「こういう、お祝いできる日は、けちけちしない! 私の記念すべき日を一緒に祝ってよ!」
このスイッチが入った咲は止められない。仕方なく、咲の言う通りに従う事にする。
「今日だけだからな」
「ありがとー! 光!」
咲は笑顔で、お礼を言う。その後、俺達は買い物を済ませて、帰りに格安で美味しいチェーン店で食事をした。
だけど、この関係は永遠に続かない。なぜなら、お互いの異性恐怖症が無くなるまでの間だからだ。もしかしたら、この関係が終わるのは明日かもしれないし、今日の夜かもしれない。いつ終わっても、おかしくないと思っている。なので、いつ関係が終わっても大丈夫なように、心の準備はしてある。
そう、これは恐怖心を持つ者同士の協力関係で、成り立っているから。
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