第14話諦めかける
夏休みも終わる頃。
佳代と七瀬は僕の家のリビングで寛いでいた。
「コンビニ行ってくるけど。何かいる?」
佳代がソファから立ち上がると僕らに問いかける。
「僕が代わりに行くよ」
そう提案をしても佳代は首を左右に振った。
「この間、怖い思いしたばかりでしょ?おとなしく家に居なよ」
「そうだけど…」
言葉に詰まっている僕の言いたいことを理解したのか七瀬もソファから立ち上がった。
「一人で行かせるのが心配なんでしょ?私も一緒に行ってくるよ」
「何かあったらすぐに連絡して」
彼女らはそれに気軽い返事をすると家を出ていくのであった。
コンビニまでの道のりで私達の目の前に中野美桜を中心とした女子グループが現れる。
「付いてきたほうが良いと思うよ」
中野は強気な態度で私達と相対する。
「白樺は関係ないけど。餌になるだろうから一緒に来な」
中野の言葉を受けて否定の言葉を口にしようとするのだが、彼女の取り巻きが私達を囲んだ。
「仁吾は女子を殴ったりしないから安心しなよ。でも痛い目は見るかもね」
中野グループに囲まれた私達は仕方なく彼女らについていく。
自宅からコンビニまでの間に存在するマンションに入っていくと部屋に案内される。
「ここで大人しくしてな」
「ここって誰の家なの?仁吾の家じゃないでしょ?」
「私の家だよ。これから仁吾が来るから」
そこで私は嫌な予感を覚える。
確かに仁吾は警戒されているし、その不良グループも同じ様に警戒されているのだが。
中野は無警戒だ。
仁吾が中野の家を訪れたとしても父親は気付かないだろう。
しまったと眉根を寄せていると中野はこちらに向けて歩いてくる。
「一応スマホ渡して」
中野の言葉に従って私達はスマホを渡す。
「じゃあもうすぐ来るから。変な気を起こさないでよ?」
それに頷いて応えるとこれからのことを考えた。
私達の身に何が起こるのだろうか。
安全に帰宅することは出来るのか。
そんな不安に駆られているのは隣りにいる七瀬も同様だった。
部屋に閉じ込められて十分もしない内に仁吾は姿を現す。
「ご苦労さん。女子を傷つけることはないから安心しな。お前たちは人質だ」
仁吾は私達のことをスマホの機能で写真に収めると鴇に送り付けたようだった。
「すぐに来るだろう。あいつには痛い目に合ってもらう。お前たちは何も出来ずにそれを眺めていろ」
仁吾の強気な態度と発言に苛立ちが募るが彼の言っていることは事実だろう。
私達は何も出来ずに鴇が痛めつけられる姿を眺めていることしか出来ない。
無力な自分を恨むが自分が巻いた種でもある。
どうにか出来ないかと思考を巡らせているとチャイムが鳴った。
きっと鴇が来たのだろう。
私達はしっぺ返しを食らって一生消えないトラウマを抱えることとなる。
項垂れかけたところで部屋の外が少しだけ騒がしかった。
少しの希望を抱くが何かを期待するだけ無駄な気もした。
そう諦めかけたところで…。
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