第11話仁吾に思いを寄せている女子

八月に入り夏も本格的に始まってきた頃。

いつものように僕らは三人揃って自宅で過ごしている。

「そう言えば…仁吾と取り巻きが捕まったらしいよ」

リビングのソファで腰掛けていた佳代は世間話でもするように口を開く。

「え?何か悪いことでもしたの?」

「そうなんじゃない?余罪がいくつかあったから、そのまま引っ張っていったんだって」

「そっか…。じゃあ一安心なのかな?」

「そうでしょ。出てきてもすぐに張る準備をしているって」

「佳代がお父さんに頼み込んだのか?」

「当たり前じゃん。鴇に危害を加えた罪は大きいよ」

佳代の言葉にどう返事をすれば良いのか困っていると隣りに座っていた七瀬も口を開く。

「じゃあ、あいつら学校辞めるのかな?」

「退学になるでしょ。捕まったんだから」

「そうなの?夏休み明けたら平然とした顔で学校に来るんじゃない?」

「ありえないよ。学校側だって捕まった生徒をいつまでも在籍させておきたくないでしょ」

佳代と七瀬は話を進めていき最終的にどちらも納得したのか頷いていた。

「それにしても今日も暑いね…アイス食べたい」

七瀬はソファでグデっとして口を開き僕はキッチンへと向かった。

冷凍庫を開くが中には食品が冷やされているだけだった。

「ごめん。アイス切らしてる」

「そっかぁ…じゃあゲームで負けた人が買いに行く罰ゲームにしよ」

「またゲームで決めるの?」

「それが一番公平でしょ」

七瀬は面倒くさそうに口を開くと佳代は早速ソフトを選択しているようだった。

数分間悩んだ結果、運要素の強いゲームが選ばれて僕らは勝負することになるのであった。


結果的に言うと七瀬が勝負に負けて罰ゲームを受ける羽目になる。

「最悪…こんな暑い中…外に行きたくない」

泣き言を漏らす七瀬に佳代は哀れんだような表情を浮かべている。

仕方なくソファから立ち上がると僕が代わりにコンビニへと行くことになる。

「代わりに行ってくるよ」

「ホント!?じゃあ借り一つ付けておくね」

「借りだなんてやめてよ。普通に七瀬が辛そうだから行くだけだし」

それだけ言い残すと僕はマンションを出て近くのコンビニへと急いだ。

コンビニに入店すると飲み物とアイスを購入するためにレジへと向かう。

「いらっしゃいませ…って草摩じゃん」

顔を上げて店員の顔を確認するとクラスメートの中野美桜なかのみおだった。

何話目かで仁吾に絡みに行っていた女子生徒であり密かに仁吾に想いを寄せているようだ。

「こんにちは…」

適当に返事をしてやり過ごそうとするが彼女は僕を逃してはくれない。

「仁吾になにかした?」

いきなり核心を突く話題を振ってくる中野に困り果てた表情を浮かべると文句のような言葉を口にする。

「なにかされたのは僕の方だよ。散々殴られた」

「それで警察に訴えたの?」

「僕はそんな事してないよ」

「本当に?仁吾の人生を終わらせたら…タダじゃおかないから」

中野はそれだけ言い残すとレジ袋に商品を詰めて僕に手渡した。

軽く会釈をすると店の外に出てすぐに帰宅をする。

七瀬と佳代にアイスを手渡すと僕らは八月の酷暑の中で室内の冷房に感謝するのであった。

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