第9話仁吾の復讐計画

仁吾の取り巻きの生徒は停学になり、夏休みの最初の一週間を補習となるようだった。

そこに仁吾も加わる予定だったのだが…。

彼は学校を自主退学していた。

そこまで傷付くことだとは僕には思えなかったのだが、プライドの高い彼の行動としては頷けたりもする。

噂によると彼はこの街の不良グループに所属したようだ。

夜には溜まり場に集まり、バイクに乗って街を流したり多少の悪さもしているようだ。

噂で聞いただけであり目にしたことはない。

そもそも高校生である僕が夜に外に出ることは少ない。

だから噂で知っているだけだった。

そして本日から夏休み。

何かが起こりそうな予感を覚える。

そんな高校二年生の夏休みが始まったのであった。


いつものように佳代と七瀬と三人で僕の家で遊ぶと夜の帳が降りていた。

両親が仕事から帰ってくる前に彼女らを家に送り届けなければならない。

佳代は隣に住んでいるため、そのまま即帰宅で済んだのだが七瀬は歩いて二十分程の場所に住んでいる。

「暗いから送っていくよ」

「良いの?ありがとう」

七瀬は礼を口にすると佳代は僕らに別れを告げて隣の自宅へと入っていく。

「最近、ここら辺は物騒だからね。夕方あたりに送り届けたかったんだけど。遅くなったね」

「三人で楽しみすぎて時間を忘れてたね」

七瀬は自分自身を呆れるように嘆息すると僕の手を引いた。

「不良グループが色々と悪さをしているみたいだね。危ないからあまり夜は外に出ないようにね」

「分かってるよ。夜中にコンビニでアイスを買いたくなっても我慢する」

「そうして。日中にアイスを買い込んで冷凍庫にストックしておきなね」

「うん。鴇も色々気を付けてね?」

「大丈夫だよ。僕を狙うような不良は居ないでしょ」

「そうかな…仁吾が恨んでるんじゃない?」

「そんなに暇じゃないでしょ」

「楽観視しすぎ。気を付けてね?」

それに頷くと僕は七瀬を家まで送り届けるのであった。


七瀬を自宅まで送り届けた帰り道。

目の前に見覚えのある顔ぶれがあり少しだけ身を潜めた。

仁吾とその取り巻きであり僕の存在に気付いたら彼らは再び暴力を振るってくることだろう。

彼らと目を合わさないように帰り道を歩いていると取り巻きの一人が僕に気付いたようだった。

「あれ?草摩じゃね?」

取り巻きの一人の言葉を合図に彼らは僕の方へと視線を移した。

知らないふりをして前を歩いていくと仁吾が僕の前に現れて道を塞いだ。

「おぉ〜本当に草摩じゃねぇか。どうしてくれようかな」

仁吾は明らかに悪に染まっているようで見た目も変化していた。

見た目から悪が滲み出ており今にも僕に暴力を振るいそうな予感がした。

「まぁ良いや。出すもの出したら許してやるよ」

仁吾の言葉を合図に取り巻きは笑いだしていた。

「出すもの?そんなものはないけど…」

否定の言葉を口にした途端に仁吾は僕の腹を殴りニヤニヤと笑っていた。

「ここは学校じゃねぇぞ?教師も居なければ助けも来ない」

仁吾は気が済むまで僕のことを殴り続ける。

「もうやめよ。気が済んだだろ」

僕の情けない言葉を耳にした仁吾は取り巻きと笑い続けて地面に這いつくばっている僕を写真に収めていた。

「いやぁ。気が済んだわ。じゃあな」

彼らはそれだけ言い残すと先へと進む。

そこで残された僕は情けない話だが暴力が終わり少し安堵していた。

そのまま帰宅するとシャワーで痛む箇所を冷やす。

自室に戻ると遣る瀬無い気分に駆られながらベッドで横になるのであった。


「帰り遅かったみたいだけど…七瀬ちゃんとなにかあった?」

佳代からの連絡に僕は否定の返事をする。

「じゃあ他に何かトラブルでもあった?」

それにも否定の返事をすると適当なスタンプを送って眠りにつくのであった。

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