第12話 カラオケ1

橋爪静香、32歳。

カラオケキング若葉駅前店の店長である。


今日も健全なお店を目指し、店員一丸となって頑張っていた。


*    *    *    *


その2人は16時30分頃にやってきた。


2人とも近くにある若葉高校の制服を身にまとっている。

1人は普通の男の子、もう1人は露出度高めに着崩した金髪のギャルであった。


私は店員である大橋君に合図を送る。


大橋君も私の合図を見て頷いている。


ちなみにこの合図は、要注意人物が来店した際に出されるサインだ。


この店舗ではまだないが、別の店舗ではカラオケボックス内で行為に及ぶ者が現れた事があるらしい。


だが、私がこの店舗の店長になって5年。

そんないかがわしい行為を私の愛する店舗でさせるわけにはいかない!

絶対に未然に防いでやると心に誓うのであった。


*    *    *    *



「大橋君、2人はどんな感じ?」



「それが‥

入室してから10分経ちますが、まだ一曲も歌わなくて‥。」



「え?ほんと?

まさか!?

キ、キスとかしてないよね?」



「いやぁ、キスとか無理だと思いますよ。」



「???

無理ってどういうこと?」



「2人ともソファーの端と端に座ってて、かなり距離があるので‥。」



「乙女かよ!!」



思わず全力で突っ込んでしまう。

クゥゥ!気になる!!

令和の高校生がそんな大昔の高校生のような事する??



クソッ!

カラオケボックス内のカメラはあくまでも防犯カメラなので、むやみやたらみる事は出来ないのだ。



「よし!

だったらドリンクの注文の時、私が行くわ!!」



橋爪静香のパパラッチ魂に火が灯る。



「あっ、それは難しいかもです。」



「ん?どういうこと?」



「カウンターで水筒が余ってるから飲んで良いかって聞かれたのでOK出しちゃいました。」



「いや、普通にダメだから!

大橋君、ダメだよ!!勝手に持ち込み許したら。」



「いやぁ〜、普通持ち込みって缶とかペットボトルじゃないですか?

鞄から水筒出されたらキュンってなるじゃないですか?」



「何が『キュンってなるじゃないですか?』だよ!

ダメだから、持ち込み!」



店長と大橋君の監視は続いた。



*    *    *    *



「店長‥

あれから1時間経ちますが、歌声全然聞こえてきませんね。

さっき、ちらっと中を覗きましたがあんまり進展ないみたいですよ。」



「いや、カラオケ来たなら歌えよ!

それより手ぐらい握ろうぜ!!」



あ〜段々イラついてきた。



「どうすっかなぁ、酒でも呑ますか‥。」



「いや、店長ダメっすよ!

相手、未成年。

最悪、店長捕まりますよ!」



「‥‥‥

捕まるのは嫌だなぁ。

大橋君のせいにするから宜しくね。」



「店長、今日で辞めていいですか?」



「じょ冗談だよ、2割ぐらい。」



「いや、8割本気じゃないですか!?

マジで辞めていいすっか?」



「ちょっと2人とも仕事して下さい!!」



大橋君との会話に高梨さんが入ってくる。



「失礼な!!

ちょっと高校生の2人を監視してますから!!」



「いや、真顔で監視を仕事って言われても‥。

大体、高校生見て楽しいですか?」



「「楽しい!」」



「店長と大橋君、こわ!!

怖すぎ!!」



こうして、カラオケ店員が正と渚をかげながら応援しているのであった。

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