第4話 触れられるのは(4、触れる)
夕方。
佐和商店に
(何処で拾ったんだよ……)
感嘆半分哀れみ半分で、榊は息をつく。まだ客はいない。榊は、事務所から出て来た菫を呼び止める。
「榊さん?」
榊は女の手を払うように菫の髪に触れた。柔らかく梳き、艷やかな黒の房を口元へ運び、口付ける。
「ええっ!?」
菫が目を剥くのと同時に、女は悲しげな顔をして姿を消す。それを、菫と榊は見た。
「見せつけてやったんだ。すみちゃんの髪に触れて良いのは俺だけだってな」
「榊さんに向かって来たらどうするつもりだったんですか」
榊はにやっと笑う。
「俺に何かあるなら、すみちゃんが何とかしてくれるだろ」
「そんなこと言って!」
「俺の身を想うなら、自分の身も想ってくれ。いくらでも付き合ってやるから」
愛おしそうに菫の髪を梳く榊を見、菫は反論を止めた。
「努力します……」
「期待してる。そーだ。今夜久しぶりに菫の髪乾かしたいな。家寄ってけよ」
笑う榊を釈然としない表情で見ていた菫だったが、やがて息を吐き出した。
「喜んで」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます