第24話 神殿

 僕達が起こされたのは、夜が明ける少し前のことだった。

 馬車からおりると、目の前にはただただ真っ白でひたすらに大きな横長の直方体の建物がそびえていた。

 空がまだ、うす暗い紺色をしていた。まだ星がいくつか光っていて、雲は暗い灰色をしていた。そんな空の下、建物はまるで光っているように白さが際立っていた。

 すずしい潮風を浴びながら建物に入る。

 海が近いんだ。

 この世界の、最果ての海の反対側の海が。

 

 建物の中は全部同じつくりをしていて、外側と同じ真っ白で角ばった柱がいくつも立っていて高すぎて見えない天井へつながっていた。ろうかは真っ黒な石で出来ていて、巫女に連れられて歩いているのに、ひたすら同じながめが続いて自分がどこをどう通っているのか全く分からなかった。

 なるほど。住んでいる巫女でも、これなら思い通りに外出なんて出来ないだろうな。


 いつの間にかろうかと同じく真っ黒で大きなかべが目の前に現れて、良く目をこらさないと分からないこげ茶色の戸を巫女は開いた。

 その先にある部屋は、どこかしこも灰色の石造りで、どこからか明かりがさしている。

 僕は、この光を知っている。海が日の光をはね返して出来る光だ。最果ての海の集落でよく見た、なつかしい光。

 部屋の中は真ん中に向かって段差が出来て高くなっていて、その一番上に赤茶色の髪と白髪が混じった女性が立っていた。ふくよかな体つきと丸い目と、口元のしわが親しみやすさを感じさせる人だった。

「ようこそ、ココヤシの息子、アダン。そして夢魚の王よ。我々は貴方がたをかんげいします」

「夢魚の王?あの、僕はクロタカナミで飲まれた僕の集落の人達を返してほしくて」

「順をおって話しましょう。少し長くなりますが、聞いてもらえますね」

 軽く僕の話をやさしく、しかし上手にさえぎって、巫女が言う。

 いやだ。本当は早く返してほしい。母さんを、アマモを、友達を、集落の皆を。話なんていいから。

 そう思っているのを感じ取ったのだろう。

「手間だけど聞いてちょうだいね」

 あやすように僕をさとした。なぜかそれを聞くと僕はそうしないといけない気がした。

 こうやって、たくさんの人にカミエ様の意思を伝えてきたり、巫女たちをしたがえてきたのだろう。経験をつんで、その人が聞き入れる細かい表情や口調の作り方を覚えた人なのだろう。

 僕もそれを分かったうえで、うなずいた。


「ありがとうございます。それではずっとむかしの事からお話ししましょうか」


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