71. 顔に書かれています
「面白いことをしていると聞いたんだが、入っても良いだろうか?」
「ええ、鍵は開いてますわ」
閉まっていた鍵を水魔法で開けてから、返事をする私。
ちなみに、グレン様は光魔法にも適性があるから、次はグレン様にお願いしようかしら?
でも、失敗したら嫌だから、先に私が試してみる。
「……失敗だわ」
「そうみたいですね。もしかしたら、奥様の魔力が入っていないと魔道具にはならないとか……」
「あり得ますね。次は少しだけ奥様の魔力を混ぜて頂けますか?」
「分かったわ。これが成功したら、たくさん作れるようになるわね」
侍女に言われた通りに少しだけ私の魔力を混ぜてみると、今度はしっかりした手応えがあった。
ちなみに、使った魔力の量は五秒もあれば回復する量。
これで成功するだなんて、魔石さえあればいくらでも魔道具が作れそうだわ……!
でも、こうなると今度は魔石が足りなくなりそうなのよね……。
「これだけの量を使うとなると、一週間で魔石が空になりそうですね……」
「そうね……」
都合よく魔物の大群でも出てきてくれたら良いのだけど……。
「旦那様、大変です! また魔物の大群が!
今回は地平線の向こうまで魔物に埋め尽くされています!」
「なんだと……!?
その数は、流石に厳しいだろ。レイラ、魔力は足りるか?」
「魔石から取れば問題ありませんわ。今すぐに行きましょう! 魔石集めに!
危険な目には遭わせないから、魔石拾いを手伝ってもらえるかしら?」
「ええ、もちろんですわ」
「行きましょう!」
「とにかく急がないと不味い……!」
私達の話を聞いていたグレン様だけれど、魔物の数を聞いて絶望の二文字を顔に浮かべている。急いては事を仕損じるだなんて言うから、焦りは良く無いですよ、グレン様?
でも、今回の魔物は何もない場所から来ているから、守るのも容易なのよね。
早速ブランに大きくなってもらって、六人で背中に乗る。
グレン様はブランが足で運ぶことになった。
指揮官は防衛線で指示を出すという大切なお仕事があるから、仕方ないわよね?
ちなみに一度だけブランの足で運んでもらったことがあるのだけど、下を見れば地面が広がる光景だから悪寒が止まらなくなってしまったのよね。
でも、足にある羽毛のお陰で居心地は良かった。もふもふは正義だわ。
「ちょ、これ落ちないのか?」
「大丈夫! 魔法でも支えてるからね」
「ブラン、お願い!」
私が声をかけると、ふわりと宙に浮かぶ感覚に襲われた。
「ひいいぃぃぃぃ……」
下の方から悲鳴にならない声が聞こえるけれど、急ぐためなら手段を択ばないと言ったグレン様の自業自得だと思う。
でも、その怖い時間もすぐに終わり。
数秒で防衛戦についたから、グレン様を丁寧に落としてから私達は魔物の群れに向かった。
「この数、空を飛んでいなかったら足が竦みそうですね……」
「そうですね。奥様、大丈夫ですか?」
「ええ。耳、塞いだ方が良いわよ?」
防衛線からある程度離れたから、立ち上がって上級魔法の詠唱を始める私。
普段は無詠唱で魔法を使っているけれど、これから使う魔法をは無詠唱だと難しいのよね。
「詠唱付き……」
「魔物より奥様の方が恐ろしく見えるのですけど……」
そんな侍女達の反応を聞き流しながら、詠唱を続けること一分。
ようやく準備が出来たから、手を魔物の群れの真ん中に向ける。
「行くわよ」
みんなが耳を塞いだのを確認してから、私は魔法を放った。
魔石を残したいから、威力は絞っている。
でも、小さな爆発でも数が多くなれば音も大きくなるのよね……。
「す、すごいです……」
「この数を一瞬で……」
「綺麗……」
そんな感想が聞こえてくるけれど、この一回で全滅させることは出来なかったから、残る魔物めがけてブランに飛んでもらう。
「あの魔物、百人で相手してやっと倒せるというお話なのですけど……」
「奥様にとっては黒竜でも敵ではありませんから」
「そういえば、白竜様の戦いも見てみたいです!」
「ブラン、私は魔石を集めるから、残りの魔物はお願いしても良いかしら?」
ブランの戦いを見たいという声が聞こえて来たから、私は魔石集めを始めることにした。
「任せて!」
地面に降りてくれたから、翼の上を滑り降りる私達。
それから、すぐに魔石集めを始めた。
収納の魔道具から
大きい魔石は手で持てない重さだったから、魔法で持ち上げてから荷車に乗せる。
この荷車も収納の魔道具に入れておいたのよね。
「奥様! 光の魔石もたくさんあります!」
「そうみたいね。これだけあると大変だから、急ぎましょう」
魔法も使って集めているけれど、これだけの範囲だと大変だわ……。
魔石を集めるための魔道具も作った方が良いかしら?
「白竜様……!」
「よそ見もほどほどにね?」
ちなみに、私は広い範囲に散らばっている魔石を魔法で寄せ集めるために、また詠唱を始める。
これだけの魔法を何度も使うと魔力が切れそうだから、今回は近くに落ちていた魔石の魔力を使うことにした。
それから、無事に詠唱を終えて魔法を放つと、ゆっくり集まってきた魔石が私の前に山を作り始めた。
「この量は魔道具に入りきらないわ……」
「公爵家の倉庫にも入り切りませんね」
「そうなの!?」
カチーナの言葉に、思わず問い返してしまう私。
今度は魔石が多すぎて苦労しそうだわ……。
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