ACT♥2 -11 〝蛇の道は蛇〟
〝女渡り〟ふたりが保安官事務所を訪ねた日の夜――
町長の邸には、ルズベリーで〝有力者〟と目される面々が集まっていた。
賭博場を元締め、自警団の長、土地の牛飼い、銀行家、町で最も大きな雑貨店の経営者……。
その中にはラーキンズ保安官も当然おり、そしてカウペルス判事も同席していた。
「それじゃ、レンジャーに話を持ち込まれるのか?」
ラーキンズから昼間の騒ぎとその顛末についてを聞かされ、彼らのうちの半分ほどが不安そうな声を上げた。
「――話が違うじゃないか。〝問題〟はタウンシップで食い止まるんじゃなかったのか?」
「そもそもなんで、あの〝渡り〟はバッカルーに肩入れするんだね?」「……だからロータリにも金を握らせればよかったんだ」「そもそも……」
彼らは、
それがタウンシップを超えてフロンティア・レンジャーの調停に待ちこまれることになるとは……。そんなことは、この場にいるほとんどの者にとって寝耳に水だった。
「なぜ、こういうことが、我々の知らぬところで決まるんだ、町長?」
「……選りにも選ってレンジャーだと。タウンシップと違って〝駆け引き〟の通じんところだ」
「ご心配には及びませんよ」
いよいよ収拾がつかなくなりかけたとき、応接の長椅子からグラス片手のカウペルスが、気取ったふうに声を上げた。それで場の耳目が集まる。張りのあるハイバリトンが続けた。
「ローイード営地の
「と、いうと?」
そう訊いた銀行家の声は、微かにいらいらとしたものを含んでいた。
この場に招かれてはいるが、カウペルスは余所者には違いない。この場に、必要以上に彼に好意的な者はいなかった。
さてカウペルスは、そういう空気には馴れている、という感じに落ち着いた対応を見せた。
「――大尉は〝政治〟に打って出ようと考えてます。それには金が必要ですからね……」
そう言ってグラスを口許に運ぶ。その仕草に、町長は不愉快そうとなった表情を押し隠し、ラーキンズは口の端を歪めた。
他方、銀行家はその言葉を信じたものかどうか仲間の顔を窺うのだったが、もちろん誰からも答えを得ることはできなかった。
カウペルスは薄く哂って言を足した。
「〝蛇の道は蛇〟、と言います。
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