ACT♦2 -01 ふたりの〝女渡り〟
まだ太陽が正中の位置に掛かるよりも前に、ふたりの〝女渡り〟は
オレリーとマルレーン…――女ふたりだけで訪ねることにしたのは、最初から相手を刺激するようなことを避ける意図からだった。少なくとも〝ドク〟・アチュカルロが、その得物――イーストエンドM2873 大口径ライフル銃――の長銃身を
もっとも、エミールばかりは
大
少しばかり
隣を歩くマルレーンは、すらりと長い手足をした長身の娘で、頭にのせた鍔の大きな麦藁帽から伸びた〝向日葵のような金髪〟が目を
流行の赤白ツートーンのボディ・コンシャスな旅行ドレス。フレアスカートの右側には大胆なスリットが入っていて、白い太腿と、細い腰のガンベルトから吊るされたホルスターが覗いているのだが、こちらもやはり〝凄腕〟の
そんな乙女ふたりが、伝道所跡までの道すがらに交わした会話はこんなものだった――。
「オレリー? ……サンドリーヌ?
「ミス・ラングラン!」
まとわりつくように訊いてくるマルレーンに、オレリーは面倒そうに応じる。だがマルレーンはめげない。
「んー、かわいい顔に、そんな老け込んだ呼び名は似合わなーい」
長身を屈め、オレリーの横顔を覗き込むようにしてくる。
「…………」
「サンドリーヌも〝かっこかわいい〟けど、ちょっとお堅いかなー」 などと独りでぶつぶつと続け、挙句、「……うん、やっぱりオレリーがいいです」
と笑顔になって言ったものである。
「――…あなたの
人目を惹いて余りあるマルレーンの艶やかな金髪に、赤毛のオレリーが、ぶす、と返す。マルレーンは、手をぱたぱたとやって応えた。
「や、や…――そんなことない、ない。あなたは外面よりも内面が〝
オレリーは、もう何も言わなかった。
そうして歩いているうちにも、ふたりは南の道の端に建つ伝道所跡にやってきていた。
建物へと到る小路の入口には、ヴィンチェストライフルを手にした見張りが立っている。
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すっかり【あとがき】は得物(アームス)の解説コーナーの趣きとなりつつありますね。(笑顔)
さて、今回は〝ドク〟ことアチュカルロの得物―― イーストエンド M2873〝トラップドア〟です。
イメージモデルは「スプリングフィールドM1873」
単発の後装式ライフルで使用弾は .45-70-405
ボルトアクションではなく跳ね上げ扉のあるブリーチブロックというギミックの尾栓の小銃です。ちょっと古い感じの、右寄りの位置のハンマーを〝カチリ〟と起こして撃つアレ。
大陸の東端イーストエンドにある工廠で造られた長銃身(32.5 in)の狙撃銃で、かつては大陸の各地に〝対ビースト用〟として配布された大威力のライフル銃、という設定。
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