第7話 望まぬ再会は 幼女のせいで
「あー。ウンウン。お前達が何を言ってるのか分からん。が、このチビはこっちで預かる。お前んとこに任せると チビの将来が心配になる。」
ローブの裾の女性に手を引かれ 無事に森から連れ出された。そう…、無事に。
ローブの裾は 随分と疲れた様子で、終始 呼吸が荒かったのは きっと子供のオレのサポートが大変だったのだろう。
照れたり緊張したり恥ずかしくなったりで すっかり忘れてた武器達は、【自動帰還】の機能が働き 勝手に【収納】の中に入ってた。
「そんなぁ…私の天使ちゃんが 魔王の手に堕ちた…」
何か聞こえたが、なんのことだか分からない。
問題は今のオレの視点。
2メートル以上の高さにある。そして、そのオレの横には傷だらけのモヒカン頭が ある。
つまり モヒカン頭の男の肩に座らされている。
「で、信じがたい事実の確認だが、このチビがゴブリンの群れを殲滅したと?
こんなちっこいのが…か?」
チビ チビうるさいから 黙らせてやろうと、モヒカン頭の目の前にブラチンのドロップ品をぶちまけてやった。
「ぬっ⁉︎これ…は。クッサ!臭過ぎる…。が、確かにこの臭さはゴブリンのドロップ品だな。しかもこの量は臭過ぎる…。
てか、チビ!お前 魔法鞄持ってたのか?くさ!何処に…ダメだ、臭過ぎる。すまんがしまってくれるか?」
臭ければ逃げれば良いのに…。と思うも、収納するには 接触しなければならない。御免被る‼︎こんな物触りたくない。なので 言ってやった。
「臭いなら ここから離れたら良い。オレも臭いし それに触りたくないから 要らない」
まあ、それも理由の1つではあるが、この場には それ相応の人数が集まっている。
結果論だが、オレはその人数の仕事を奪った。その補填に当てて欲しい。
「それはスマン。俺が臭ければチビもそうだよな。」
✳︎☆✳︎☆✳︎☆✳︎☆✳︎
ブラチンのドロップ品の譲渡を断られるかと思ったが、押し問答すらなく 素直に持って行かれた。
面倒が無くて良いんだけど なんか釈然としない。少しでも『手柄が〜』とか『取り分が〜』とか 揉めてみたかった。なにか事情があるのだろうか?
そして この集団は やはりと言うか定番の『冒険者』らしい。そしてこのモヒカン頭が、冒険者ギルドの長だそうだ。
「信じられんな…。チビが1人でゴブリン1000匹以上って…。夢でも見てるのか?
無いな。この臭さは本物だ。」
どうやら この冒険者集団の中のランクの低い人達に、ドロップ品の勘定をさせた結果、討伐個数が出たとの事。その総数1087枚。
「へぇ。そりゃ臭いわけだ。あの汚ない布がそんなにあったのか」
「あん?腰布だけの数か?これ…。」
「そうですね。腰布だけ…。あれ?魔核は?臭過ぎて忘れてた…。」
モヒカン頭の問いに若手冒険者のリーダー格の青年が答えた。
「な…なぁ、おチビさんよ。あの腰布しか無かったのか?
魔核…、と言っても分からないか。そうだな…。指の爪くらいの大きさの薄い紫色の丸い石は拾わなかったのか?」
「うん?拾ってはいないな。だが それがどうした?」
「どうしたって…。知らないのならば仕方ないが、あのな?腰布のドロップ率は5割程度なんだよ。魔核…さっき説明した石な。これは確実にドロップする物なんだ。
って事は…だ。おチビは おそらく2000匹以上のゴブリンに襲われて、その全てを返討ちにした事になる。
だとすると、ここの面子でその数の相手をしていたら、マズい事になっていただろうな…」
「あ〜〜…。うん。そうみたいだねぇ。」
【収納】の中は 意識すれば しっかり把握出来る。モヒカン頭の言う『魔核』が2200ちょっとある。
刃物武器達の斬れ味が楽し過ぎて 夢中になってたから 気にしなかった。
「そうみたいってな…。まぁ どうやら礼を言わなきゃならん様だな。助かったよ。ありがとう。チビ助」
呼びが『チビ助』に変わった。だが 拒絶したら あのローブの裾の女性達に付けられた『空回り君』と呼ばれてしまいそうなので 仕方なく好きに呼ばせる。
早く自分の名前を思い出さなければならない。
「うむ。苦しゅうない。苦しゅうないがな、いつまでオレを肩に乗せてるつもりだ?
オレはモヒカンのペットになるつもりはないぞ?」
「んぁ?モヒカンって誰の事だ?俺か?あ、俺か。
言うに事欠いてペットってな…。俺にそんな趣味は無い。
ただ チビ助の移動速度に不安があるから 乗せてたんだが…不満なら 下ろすが?」
視界が高くて 悪い気はしないが、自由が無いのはイケない。
先ほど 気になる人物を見つけたのだ。ぜひ近くで見学したい人物が。
だから、モヒカンとはここでお別れだ。きっとすぐに再会するだろうが、それは仕方のない事だ。
「うむ。不満だ!自分の足で自由に歩きたい。下ろしてくれ」
「さっきから その喋り方…ってか ずっとだな。子供らしくないぞ。
まぁそれは良い。だがひとつだけ忠告だ。お前を連れて来たローブの女には なるべく近寄るな。喰われて 乾涸びるまでしゃぶり尽くされるぞ。わかったな?」
ヴァンパイヤかな?バンパイヤ?え〜いもう吸血鬼で良いや。日光に弱いからローブ姿なのか…。
「え…?アイツ、そういう趣味があるのか。わかった。覚悟が決まるまでは 近寄らない事にする。なにしろ40年以上大切にしてきたモノだからな。簡単には捨てられない。」
ローブの裾の女性は、オレの知らない世界への行き先案内人だったらしい。いろんな意味で…。
✳︎☆✳︎☆✳︎☆✳︎☆✳︎
モヒカンのペット候補をなんとか逃げ切り、自由を満喫する。小さい身体を利用して目的の人物の
「キツネか犬か?モフモフ具合から見て キツネの線が濃厚だな。どうにか仲良くなりたいところだが…、どうやったら仲良くなれるんだろ?
昔読んだマニュアル本だと……。自己紹介が いの一番!とか書いてあったな?」
自己紹介。自分の名前も覚えて無いのに自己紹介もないだろう。
『無ければ自分で創り出す!』
がモットーの現在名無しの『空回り君』。
目的は不純だが、その為に必死に考える。考える。頭が沸騰して湯気が出そうでも 考える。
そして 気がつく。
『あ。ステータス見れば自分の名前くらい乗ってるんじゃね?』と。
さっそくステータスを開こうとするが、上手く事が運ばない。
「う〜ん…。やっぱりここでも定番が必要なのか?恥ずかしいけど やるしか無いか?」
「なにするつもりなの?
あぶないことは おとなを たよればいいんだよ?」
「ん?あぁステータスの確認をね…したかったんだけどさ、やり方が分からないんだよ」
「かくにん?じゃあ オッちゃんに たのめば おしえてくれるよ?」
気が付いた時には ケモミミ幼女に手を引かれていた。
「はっ⁈ちょ?あれ??」
「オッちゃーん!まいご つれてきた〜!なんか ステータス みたいんだって」
モヒカン頭の前に連れて来られ、望まぬ再会となった。
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