第4話 故意による二度目の移動
窓からトイレに帰る。
先ほど見たゴブリンと同じ様な姿勢を取ってしまった事は想定外だった。
「やっぱり かなり臭うな…。消臭スプレーも必須だったか…」
それにしても、ゴブリンの顔面は何にぶつかったんだ?
オレは すんなり出られたし、入る事もできた。
やっぱり、異世界不思議パワーか?
ルーバー窓のガラスを全てハメ直し、窓を閉める。
途端にガラスを叩く風雨に 改めて安心して、トイレから出ると 外はまだ明るかった。
「ん〜?どういう事だ?時差?と言うより 自転周期に差があるのか?
それとも、大穴で あっちにいる間、こっちでは時間経過無しだったりして?って んな訳ないな…」
分からない事は 後回しにして 取り急ぎ必要な噴霧器型消臭剤を求め ホムセンに急ぐ。
ついでに無くした2尺バールを新調。ガーデニング用品売場に足を伸ばして、剣鉈に竹割鉈、手斧も購入した。レジで 用途を確認されたが、刃物を3つも纏めて購入しようとしたせいだろうか?
「バールに、刃物三種。さらにファブリ◯ズ。うん。危険人物確定だな。」
他にも欲しい物があるが、さすがにそっちは鋼材屋の方がいいだろう。
ホムセンの駐車場で 鋼材屋に電話で確認してみたら、在庫に有るそうなので早速 受け取りに行く。
「ダメ元で電話したけど、鋼材屋に盆休みは無いのかねぇ…。助かったけど」
鋼材屋の受付で 事情を聞いたら、オレみたいなのが居るから 電話番だけはしている。との事。
非常に申し訳ない。と思いつつも、目的の物を入手。ついでに 端材らしき物が目に入ったので 使えそうなのを見繕って 買ってきた。
「フッフッフ。久し振りにオレの旋盤が活躍するぜ‼︎
作ってみたかったけど 用途が無いから諦めていた、『アルミニウム無垢材バット!気まぐれに鋼の突起を添えて』
うん。立派な凶器。狂気な凶器だね…。
…突起は やめておくか?完全に言い逃れできないほどの凶器だし…」
悩んだ挙げ句、突起は却下した。昔話の鬼が持ってそうな金棒にしたかったが、万が一の時 言い訳できる自信が無い。
しかし、却下した筈の突起が無垢材バットに付いている。
「あれ?無意識の内に やらかした?でも 良い出来だ。封印するんだけどね…。
予備用に用途の倍の長さを買って置いて良かったよ…」
夢中になると 欲望に忠実になり過ぎてしまう癖が出てしまった。
鉈の件もそう。剣鉈があれば 竹割鉈は要らないだろうに 一目惚れで、手に取ってしまった。
「旋盤大活躍だ。一家に一台旋盤機ってね。あれば良かったフライス旋盤。使い道思い付かないけど」
次は刃物の手入れ。
新品だから、まぁそれなりに使えるんだが 今回の目的にはちょっと足りない。
「手斧と竹割鉈の方は このまま…。グリップは手に馴染む様に削り直すだけでいいかな?
問題は剣鉈。こっちはきっちり研ぎ直して…。」
想定した用途にぴったりな研ぎ上がりにできた。
異世界って言ったら 魔物の解体、皮剥だろうと 夢中で研ぎ上げた。
「…ふぅ。満足。スネ毛も剃れる仕上がり…。使うのが勿体無いな!うん
うん?…ブラチンは消えた。もしかして、家畜も締めたら 消えちゃうのか?そういう設定だったら…普通に包丁で良かった?」
まぁ ヤってみれば分かる!って事で、とりあえずの準備は整った。ヤるだけヤって 足りない物はその時に!
って訳で 再びの異世界(仮)へ。
鉈を両腰、手斧はヒモで括って背中に背負う。念のため、作業中の標準装備のデニムのツナギと腰袋も。手には突起付きアルミニウム無垢材バット。そんな姿でトイレに入る。
「あッ⁉︎ 封印した筈の突起付き無垢材バットが 何故ここに?また、無意識発動か…。」
前回の失敗を元に ちゃんとした下履き、『安全靴(靴底補強入)編み上げブーツ仕様』も持って来た。
「この安全靴、買ってみたけど 出番が無かったんだよな…。普段の作業なら普通の安全靴で充分だったし。
一目惚れってやつは罪深いな…」
呟きながら トイレに設置した足場に腰掛け 安全ブーツを履き、一気に全部 我に返った。
「やらかした。やらかし過ぎた。なんでまた
涼しい便所。それだけで良かったんじゃないか?」
『まったく…』と 更にブチブチ呟き続け ブーツの紐を編み上げ終えた。
「でもさ、興味が無いって訳じゃないから また行こうとは思ってたんだけどさ…。それにしたって、武器が多過ぎじゃね?戦闘狂かな?」
口ではそう言いつつ、内心ウッキウキで ドアと窓を操作して ルーバー窓の向こうを森に変えた。
「うッ⁉︎もしかして 鉈やら手斧が引っ掛かって 通り抜けられない?」
張り切って トイレに入る前から 装備したのが裏目に出た。『どんだけ楽しみにしてるんだよ』と 思いながら、武器類を先に窓から出し、自身も窓の外に這いずり出た。
“故意による二度目の移動を確認しました。??意欲有りと見做し 転移特典を付与します。反動で意識を失ったり、微小な弊害等がありますが 安全地帯を設置しますので安心してお眠りください。尚、任意での帰還は不可能ですので、諦めて大人しくこちらの世界を楽しんで下さい。では またいずれ…”
「は?意欲って なんの意欲?聞き取れなかったんで もう一度 説明求む!説明会と謝罪会見を開きなさい…よ…」
✳︎☆✳︎☆✳︎☆✳︎☆✳︎
『なんだコレ?浮いてる。夢か?
あ…オレが倒れてる。森?』
周囲を見渡し 身体が倒れている場所が この森のほぼ中心だと分かった。
『安全地帯って言ってたけどさ…、こうやって見ると 行き倒れだよな。
…行き倒れ?あら?もしかして今、オレ 幽体離脱しちゃってる?臨死体験 半分死人?ヤバッ⁉︎』
謎の声の主の言っていた事が 真実なのは 本能的に理解した。出来てしまった。
それに、それ以上の事について説明が無かった理由も理解した。
単純に 説明しない方が この世界を楽しめそうだから。だそうだ。
だが、謎の声の主(『監視者』と仮称)の言う『安全地帯で安心して眠れ』に 安心し過ぎたのか、幽体離脱までしてしまう事は想定していなかったのだろう。これが『微小な弊害』の内のひとつなのか?僅かに慌てる『監視者』の気配が感じられる。どうした⁉︎『監視者』
『どうせ帰れないんだ。だったら ヤれるだけヤるか?
差し当たって…、情報が必要だ。今できる事は、なるべく高く飛んで 地理情報の入手だな』
物理法則に縛られない幽体ならでは。楽しくなって高く高く上昇していたら 地球で言う衛星軌道まで上がってしまった様だった。
『異世界宇宙遊泳ってか?この世界の『天国』も空には無かったか…。真実はいつも 知ってしまえば つまらなくなるな…』
時間の許す限り、世界を見渡す。昼を見て 夜も見た。何周も何周も…。
『それにしても 不思議な星だな。極点を始点に十字の大地が伸びてて反対の極点でまた交わってる。海が四つに完全分断されてる。まるで子供の落書きみたいな星だ』
“失礼ですよ?”
『ん?何か聞こえたか?ってかさ 調子乗って
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