第31話 ゲンカイジャー、代償と引き換えに覚醒す②
「イエロー! 大丈夫か!?」
渋谷の某所。広場には目を疑う光景が広がっていた。黒いゴーレムがイエローを殴りつけている。何度も、何度も、執拗に。工業機械の様に無慈悲に無感情に振り下ろされる拳がイエローに衝突する度、その体がバネの様に跳ね上がっている。
「レッド……ちゃん……」
息はある。意識も。
「おい、お前」
ダークゴーレムの顔らしきものがゆっくりとこちらを向く。自分でも信じられないぐらいのスピードで近づき、そのツラをぶん殴っていた。ゴーレムの比ではない硬さの物体を全力で殴った。不思議と痛みは感じない。
ゴーレムはバランスを崩して尻餅をついた。
「イエロー、ちょっとだけ休んでてくれ」
「ありがと……、ちょっとだけ任せるわね」
「ああ、任された」
大の字になって横たわるイエローを見て、怒りが沸々と湧き上がる。イエローを抱えて移動し、ベンチに寝かせると鈍重なダークゴーレムはのそりと起き上がっていた。
「別に、ヒーローなんかやりたくってやってるわけじゃないし、正義面してお前を倒す、なんて宣言するつもりもない」
一歩、また一歩とダークゴーレムに近づく。
「一つ言っておくと、お前は俺の敵じゃない。俺の敵はいつだって、“理不尽”と“法令違反”なんだよォォォォッ!!!」
“突然のコンプライアンス宣言”
“せやな、そいつら、いてこましてくれ”
“やったれ! レッド!!”
“イエローの仇をとってくれ!!”
自然と駆け出していた。
「おおおおおぉぉぉぉぉぉっっ!!!!」
殴って蹴って、斬って殴って。
「らぁぁあぁぁあぁぁぁぁっ!!!!」
叩き、穿ち、打ち、張り。
「ぬぅぅぅぅぅぅっ!!!!」
投げて、極めて、殴って、ど突く。
「ゴァァァァァ!!」
ダークゴーレムが振り下ろした一撃は重く、絶望が込められていた。こんなものを何度も何度もイエローは喰らっていたのか。
「痛くねぇっ!!!」
「ゴアガァァァァァ!!!」
例え、俺の攻撃がほとんどダメージになっていなくても、俺は攻撃を止めない。俺の攻撃ひとつが、傷でも、ヒビでも、凹みでも。未来に繋がる一分一秒を俺は惜しまない。
例え、仲間が全て倒れても、ベアリーはもう走り出している。俺が時間を掛ければ、ベアリーが傷を癒してくれればまた戦える。UQが集まればまた、パワーアップ出来る。
だから、俺が、この攻撃を最後まで止めることは、
「無いんだよっっっ!!!」
“レッド! レッド! レッド!”
“倒せるのかコレ”
“俺らに出来るのはもう応援だけだろ!”
“諦めるな!!”
当たり前だろ。誰が諦めるか。
“踏ん張れ!!”
踏ん張るさ。
“限界を超えろ!!”
社畜ってのはな、
「もう限界、と思ったそこがスタート地点だろうが!!!!!!!!」
『スキル:
は? 誰だ今サラっと恐ろしいことを言ったのは。
「うぉらぁぁぁぁぁっ!!!!!」
振り抜いた拳が、ダークゴーレムを捉えた。
ただ、今までと大きく違うのは、ダークゴーレムの顔面が大きく凹み、砕けたことだ。
「なんだこれ、力が湧いてくる」
気が付くと自身が赤いオーラを纏っているのに気が付いた。
“お、応援が届いた……?”
“そんなわけないやろ……、ないよな?”
“お約束……ってコト!?”
視聴者以上に俺が面食らっている。今まで、手ごたえらしきものは無かったはずだ。故に、俺は時間稼ぎと割り切って攻撃を続けていたのだが。さっきの不穏な“スキル”とやらが作用しているのだろうか。
『レッド! UQの回収、終わりました!』
「ベアリー、スキルがどうとか聞こえたが何だこれ」
『UQのパワーアップ効果と思われます!』
なるほど。そう言う事なら思い切り活用させてもらおう。
「さぁ、ラウンド2だ。立てよ、鉄屑! スクラップにしてやる!!」
「ゴアァァアァァァァァ!!!」
予想外の反撃に怒っているのか、低い唸り声を上げる、ダークゴーレム。俺に近づくと、真っ直ぐに大砲の様な拳打を浴びせてきた。さっきよりも全然重さを感じない。中身のない、ドラム缶の様な攻撃だ。
「っしゃああああああっ!!」
俺は飛んできた拳に自らの拳を合わせ、ダークゴーレムの拳を粉砕した。奴はそれすら顧みずもう片方の拳を振り下ろした。
「もう一丁ッッッッ!!!!」
凄まじい音を立てて、敵の拳が弾ける。信じられない力だ。それでもダークゴーレムは怯まない。既に全身ボロボロになりながらも一切の躊躇なく突き進む姿は哀れで滑稽だ。魔物に自身の姿がほんの一瞬重なる。
「ゴォォォォォォッ!!」
「これで、終わりだ!! ゲンカイスマァァァァァァッッシュ!!!!」
最後の手段とばかりに落ちてくるダークゴーレムの頭をアッパーカット気味の打ち上げで破砕。ついにダークゴーレムは後ろ向きに崩れ落ち、動かなくなった。
“うおおおおおおおおっ”
“つええええええええええうぇwww”
“いよっしゃあああああああああああ”
“さすがゲンカイジャー!”
“限界スマッシュいただきました!!!!”
コメント欄も祝福で溢れている。どうやら、ピンク達の方もカタがついたようだ。何やらブルーの様子が気になるが、コメントだけではよくわからない。後でベアリーに聞いてみるか。
『フィールド消失確認しました!!』
「やった……わね、レッドちゃん」
「二徹残業より疲れた……。酒が飲みたい……」
「フフフ、手料理振舞ってあげるわよ」
「楽しみで仕方無い」
イエローとお互いの労をねぎらいながら談笑していると、一人の男が視界に入る。さっきまで居なかったはずだ。敵か? 自然と緩んだ緊張の糸が再び張り詰める。
「いやあ、どうもどうも。毎度お世話になっております。私、日々お取り引きさせていただいております、(神)弁財天の経理担当、計升童子でーす」
「は?」
「あ、お取り引きと言ってもそうですね。特に面識は無かったかと存じますが、御社のベアリー様、がお布施を頂いている弁財天の使いです」
「え、いや、あの」
「普段は特に顕現等させていただくことは稀なんですけれども、今回はご使用いただいた奇跡の消費量が半端なかったもので。直接ご請求に参りました」
「せ、請求!?」
「はい、あの、明細上はですね。『超化筋武ご使用量他』となっておりまして」
さっきのスキルか……!
「毎度ご贔屓いただいておりますので、端数はお値引きでいいと弁財天から承っておりますので」
微妙に良心的じゃないか……!
「来月のご請求が3,000万円という事で宜しくお願い致します」
男はペコリと頭を下げた。俺は、血の気が引く音をリアルに聞いた気がした。
「あ、一応、割賦も受け付けておりますので。では、ご検討宜しくお願い致しまーす」
“神!?”
“3,000万!?”
“もう理解が追い付かんのですが”
“神に借金する男www”
“クソワロ……いや笑えんわ”
後で聞いたところによると、俺は疲労と衝撃で泡を吹いて倒れたらしい。
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明けましておめでとうございます(遅)
年末年始遊び惚けたせいで、ストックが切れ申した。
章立てで進めている作品ではないのですが、第一章的な戦いは終わりましたので、
書き溜めに入らせていただきます。
構想はあるのでそんなに、遅くはならないと思いますのでどうか本作を見捨てないで下さい。お願い致します。本当に。
後、ここまでで面白いと思っていただけましたら、☆、♡、フォロー、感想などお待ちしておりますので宜しくお願い致しますm(_ _)m
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