碧き流星の成り上がり~ソードマスターへの道?はて?何のことでしょう?~

クラプト(Corrupt)/松浜神ヰ/ハ

第1話 まさかの転生


段々と痛みを感じ始めた。

どうやら、意識が戻って来たみたいだ。

まさか信号無視されて事故に遭うとは思いもしなかった。

でも、仕方ないだろ。テティスの固有スキルの演出が貴重演出中だったんだから。

かつて世界中で流行したゲーム『セイバーガール・ダーティーリッパー』を俺は今でもプレイしている。

廃ったと暗示したような言い方をしたが、プレイヤー人口は今でも900万人はいるんだ、最盛期よりは廃ったと言えるが未だに人気である。

歩きスマホしてる時、しかも信号を渡る時に限ってテティス様の固有スキル演出が貴重演出。そしてそこに突っ込むバイクと吹っ飛ぶ俺。


あずまテティス、テティス様は、俺、星川隆盛ほしかわりゅうせいの推しでもあり弟、友城ともきの推しでもあった。そんな弟は2年前に死んだ。

テティス様に超似た少女が階段から落ちるのを助けようとして一緒に落下し、そして脊髄を損傷して死んだ。

その少女とはゲームの趣味が合ったのも相まってあの事故からは2か月に1、2回会っていたが、最近は彼女が高校に進学した都合諸々で会えていない。


弟に続いて俺まで死んだら誰が定年後の父さんと母さんを養うんだ。俺はまだ死ねない、まだ死ぬわけにはいかないんだ…。


俺の目から、耳の辺りにかけて熱い何かがつたった。


もっと親孝行したかったし、あのとも遊びたかったし、何より、友城の分までテティス様に貢ぎたかった…。だからこそ、まだ死ねない。


俺は色々な想いが心の中で飛び交うのに夢中で、自分の目が開いていることに気がつかなかった。


真っ白な天井、薄い緑色をしたカーテン、心電図モニターの89の数字。

でも、なかなか左目が開かなかった。右目しか機能していない。


俺、生きてたんだ…。それにしても、俺の心拍数が89なんて何かあったのだろうか。いつも健康診断で測る時は68こらがせいぜいなのに。

横に視線をやると、少し驚いたような顔で看護師の人が立っていた。


「お目覚めになられましたか、星川パルス様」

「今すぐ親族の方に連絡を!」

「安静にしてお待ちください」


俺の怪我は相当なものだったのか。俺が目覚めたことに気づくや否や、急に騒がしくなった。


星川パルスとは、俺のことだろうか。苗字だけ合ってるのに名前が大幅に間違っている。俺を試しているのだろうか。メテオなら分かるが、パルスとは。

弟がパルスなら理解できなくもない。パルス――pulsは日本語で『友達』の複数形だからな。

しかし、手首に巻かれているものを見ると

『星川パルス 血液型:B型』

と書かれていた。

血液型まで違う。俺はO型だぞ。ここはやぶ医者の集まりか?それとも、ドッキリの類いなのか。


「あの…、ここは病院ですか?」

「はい、そうですよ。パルス様、あなたは事故でお顔を剣に貫かれて、5か月意識不明の重体でした」


俺はバイクにね飛ばされただけで、剣なんか物騒なものは見ていない。まさか、事故った瞬間にバイクの運転手の持っていた刃物が俺の顔を貫通した、のか?

それと、何か声高いな。声帯が事故で逝ったか。


俺が考え事に耽っている隙に付き添いの看護師は部屋の固定電話で誰かと話していた。


「はい、そうですか。分かりました、今すぐ伝えます」


看護師はすぐに俺のもとに戻ってきた。何やらほっとした表情をしている。


「パルス様、今ご両親の方がいらっしゃいました」

「そ、そうか…」


マズイマズイ!!歩きスマホが原因で撥ねられましたなんて知られてるだろうし、絶対病院ってこと忘れて大声で怒鳴られる…。できれば今日会ったらしばらく数年は顔を合わせないようにしよう。もしも絶対安静なんて言われたら毎日言葉のサンドバッグにされる未来しか見えない…。

(むしろ毎日見舞いに来られるってことだから親孝行の一環として考えれば文句を言わずにちゃんと毎日来てくれることを感謝すべきなのか?(早口))


絶対安静スリ〇リンはイヤだ、絶対安静はイヤだ…。


それに、親は両親とも30後半で俺を生んでるから29歳の俺の親が両親白髪ですなんて知られたらしばらくは職員の笑い種になるじゃねぇか…。


ああ、しかも事故で5か月意識不明だとか…。相当心配させただろうし、色んな意味で顔合わせづらいな。


「パルス!!」


しかし、部屋に飛び込んできたのは俺と同じ歳くらいに見えるカップルだった。

いや、結婚指輪があるから夫婦か。

俺、まだ童貞なんだ。そんな俺に同じくらいの歳で結婚した夫婦なんかけしかけないでくれ。

…ん?でも確か父さんと母さんが来るんじゃなかったのか?


「パルス、やっと起きてくれたのね…。お母さん、パルスが死んじゃうんじゃないかって心配で心配で…」

「そ、そっか…」


だいだい話が読めてきた。俺はこの少女『星川パルス』に転生したわけか。だとすると、これからの俺は苦労するぞ。あれだけキラキラネームが問題視される現代日本でパルスだなんて息子?いや、下の感覚ないし髪が肩甲骨の辺りまで伸びてるから娘か?…とりあえず、子供に名付けるなんて…。


「ああ、兎武美ウブミ様はそして私たちの努力を認め、パルスのことを救ってくださったのですね」


兎武美?それって『セイバーガール(以下略』の女神のことか?いやいや、名前だけじゃなく性格にもクセのあるアイツが下界の人間を救済するとか絶対ない。


「まあ、パルスが騎士姫の候補に挙がってることも相まって助けてくれたのかもな」


騎士姫って、『セイバーガール(以下略』でいずれ復活すると言われている<魔>に対抗する為の人材を育成するあの『国家機関型騎士姫育成施設カレッジオブセイバー』、通称カレセの生徒のこと、で合ってるよな?

と、すれば俺が目覚めるまでこの肉体に宿っていた魂の主は相当優秀な候補生だった、ってことか。


つまり、俺はあの『セイバーガール(以下略』の世界に転生したってこと!?


でも、それが本当だとして、本来のこの肉体の主が相当優秀だったら…。

よし、事故で記憶が色々飛んだことにしよう。そうすれば面倒事も避けられ…


と、思ったが、俺の脳裏を1つの考えがよぎった。


時代が合ってたら、テティス様に会えるんじゃね?


よし、やっぱ俺優秀になるわ。

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