第13話 衝突

「今かラ世界に害を及ぼス者を排除すル。…まずハ君かラだ、カイト・ノワリム。」


ライオットはもはや冷たさすら感じない目をこちらに向ける。


「オイ、オ前。」

「何だよ。」

「ヒトツ問ウ。答エロ。」

「今結構ピンチだけど。」


ライオットが祭壇からゆっくりとこちらに向かってくる。


「オ前ハ世界ヲ壊シタインダロ?ソレデモ、アイツヲ止メルノハナゼダ?」

「それは…俺が滅ぼす世界は、アイツの望む世界じゃないから。」


前を見据え、ライオットを睨みつける。


「俺が滅ぼしたいのは『神』という概念、世界の理だ。」

「クッ…ハハハハハ!ソウカ、ナラバ全テノチカラヲ貸シテヤル!オ前ノ『神殺シ』、見セテミロ!」


蛇が高笑いを上げると同時に、凄まじく重いが体の中に流れ込む。

それは、黒い蛇―「絶望ディスペア」の記憶だった。


「虐殺しろ!この国は今この時より、我らの領土とする!」

「誰か…誰か!助けてぇぇぇぇ!」

「妻も子供も殺され、家も祖国も焼かれた!これ以上、何を奪うというんだ…」


それはとても強い―1000年分の「絶望」。


「ぐっ…あアぁぁぁァッ!」

「耐エテミセロ!真ノ絶望ニ!」

「…ライオット。」

「分かってル…レイ、『殺せ』。」

「体が…!」


レイの剣が光り輝き、カイトを貫く。


「何だろウな…今なラ、神だっテ殺せル気がスる。」


剣が貫いていたのは、黒いローブだった。

瞬間移動したカイトの腕には黒いアザのような模様がいくつも刻まれ、黒灰色の翼のようなものが生えていた。黒いオーラを纏い、禍々しさを増している。


「気ヲツケテ。アノ『絶望』ニ耐エラレタ人間ハ1000年前ニモイナカッタ。」

「ええ…レイ、『追撃シろ』。」

「父上!これ以上は、っ…」


その光の如き速さも、今のカイトには何でもなかった。


「遅い…『プレス』。」


レイは音を立てて地面にめり込む。そこだけ重力が強いかのように。


「お前ニ恨みは無イけど…そこニいてくれ。」

「カイト・ノワリム…」


レイは泣きそうな顔で俺に言う。


「父を、止めてくれ…!」

「あア。」


短く答え、ライオットに向き直る。


「長く続けル趣味は無イ…一瞬だ。」

「良いネ、ソの方が簡単ダ。」


話が終わると同時に光がカイトに降り注ぎ、足元の床が砕け散った。それを翼で遮るようにして避ける。


「『裁断ジャッジメント』。」


迫りくる無数の斬撃を、身を翻して回避する。その勢いのまま、手を伸ばす。


「『精神掌握マインド』。」

「無駄だ…『私ニ従え』。」


手から出た黒い靄は同時に放たれた光と混ざり合い、消えた。


「強化してモ無理か。」

「力は拮抗してイる…早いガ、決着をつけよウ。」


ライオットは右手を上に掲げる。


「『楽園の門ゲート』…『開ケ』。」


突然空中に巨大な「門」が現れ、ゆっくりと開き出した。


能力スキルデ強制的ニ開ケヤガッタ!」

「完全ニ開いタ時、私の目的ハ達成されル…止めルには私の『支配者ルーラー』で再命令すルしかナい。」


ライオットはこちらを見つめた。


「君ハこれを見てモ、まダ『反逆』すルつもりカ?」


俺はその質問に答えるように、両手を伸ばした。


「『追憶レミニセンス』。」




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