Chapter 2
「はぁ、はぁ、はぁ、はぁっ!」
陽の光が差し込まない深い深いダンジョンの中を、三つ編みを揺らして
止まったら、間違いなく、殺される。
追いかけてくるのは、得体の知れない生き物だ。
「ぐへぇやぁああ!!」
「きゃああああっ!!」
老人の顔をした、サソリの尻尾を生やしたライオン――この世界の言葉で言うところのモンスターは、ブリーギッド王国から追放された
亡き祖父譲りの鮮やかな緑色の眼の奥に、怒りが灯る。
「……あいつら、絶対に許さない……!」
「いい加減にしてよ、
クラス委員長の
このクラスに、「クズ」さんという人はいない。
それに第一、
「てめぇ、ハチホ! マジふざけんな!」
「
声を荒げるのは、ヤンキーもどきの
毒を含んだ台詞で追随するのは、この二人の太鼓持ちの
当然、無視した。誰がハチホだ、わたしは
そのまま、教室を出ようとする。
「てめぇ! あたしらだけじゃなくて、
「次、移動教室なので」
「クラス委員長として言うけど、いくら遠くに行ったご友人からのプレゼントとはいえ、ピアスつけてくるのどうかと思うんだけど?」
「そこ、どいてくれる? 遅刻したくないので」
「てめぇ、話聞けよ!」
がぁん! と派手な音が鳴った。
派手な音を立てて、机が倒れる。
机の主の
関わり合いになりたくないらしい何人かが、こっそり教室を出ていくのも。
クラス上位カーストトップ3人、読モの
あと残ったのは、文芸部の
「ハチホのくせに、ふっざけんな!」
「…………」
「下校の時覚えてろよ! アタシの今の彼氏のタクトくん、『ブラッディクロイツ』の幹部なんだからな! メンバー集めて、てめぇなんか」
「なにやってるの!」
ぴしゃり! と、甲高い声が空気を打った。
見れば、生真面目とスーツで武装した銀縁眼鏡の若い女、クラス担任で倫理教師の
その側に控えるようにして立つのは、クラス副委員長の
「げっ!? 先生!?」
「
八千穂は、嘆息した。なんで、こう、面倒が次から次へと。
「またみんなと喧嘩ですか?
「喧嘩なんかしてませんよ」
「あのことなら、先週きちんとクラスで解決したはずでしょう!? みんなの前で握手して、
「…………」
「大体、なんであなたはいつもいつもいつもいつも!」
言葉は続かなかった。
なぜなら、その直後――
八千穂は小学生の時、父に遊園地に連れて行ってもらった。
そこで初めて乗ったジェットコースターの、猛スピードで落ちる時の変な浮遊感の、なんとも言えないあの気持ち悪さを、今も覚えている。
そんなことを漠然と思った直後、目も開けられない程の光。
「きゃああああああっ!?」
思わず目をつぶる。
自分と、それ以外の悲鳴が聞こえたのを最後に、八千穂は意識を手放した。
今思えば、これが、八千穂にとって全ての始まりだったのだ。
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