7.self hate

 高校生になり、少しでも収入を増やす為にとアルバイトを始めた。

 そこでは一番仕事が出来ると褒められるようになり、ありがたいことに長期休暇の際には限界までシフトに入っていたが、当然疲労は溜まる。

 連勤が終わり、自分の部屋に戻った途端に床で眠りについた僕の顔を蹴り、父親は『ガキが休んでるんちゃうぞ!』と怒鳴った。

 彼は、自分以外が疲れている素振りを見せるととても不機嫌になる。苦しくてついついため息を漏らしてしまうことでさえも怒鳴られる。『ガキのくせに‼︎』と。そうやって人を苦しめている自覚も無く。

 高校生になっても環境が良くなることは無く、僕は常にこんな世界で生き続ける意味を考えていた。

 生きることは権利であり、義務では無い筈だ。望まないのなら、これ以上はもう良いだろう。救われたい、苦しみを断ち切りたいとばかり考えていた。

 大学受験が近づき、将来について誰もが少しずつ考えるようになる。

 あれがしたい、これがしたいという言葉が周りから聞こえてくる中、やはり僕は自分の心が分からなかった。

 将来、自分が生きているというビジョンが見えなかった。進学するにしても、これ以上経済的な負担を負いたくないという気持ちもあった。

 高校の学費程度なら平気で払えたのだが、大学となると比べ物にはならないことは分かっていた。

 家庭内でも進路についての話が増える中、父親が一言——


「こいつがどうなろうと俺には関係無いやろ」


 それならもうこれ以上僕に干渉しないでくれ、触れないでくれ、と思うばかりであった。

 そして迷い続けて結局は1年浪人をしてから進学することになった。

 勉強をしようとするたびに頭に浮かぶ『お前みたいなバカが何しても無理や』『お前みたいなクズは〜〜』等という言葉。植え付けられた自己嫌悪や学習性無力感を持ちながらも闘おうとする日々は、今でも忘れられない。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る