その5 めんどくさがり、魔法を使ってみる

門で手続きを行い、ワーンの街から出てすぐにあるのが『ワーン平原』だ。

初めてすぐのプレイヤーはここで狩りを行うことになるので、ここからでも3つくらい戦闘しているのが見える。利便性を考えるならこの辺りでやるのが一番だが、狙いが被って面倒なことになるもの嫌なので少し進んだ先で狩りをすることにした。


ここでの目的はレベルアップと2枠目のテイムモンスター探し。戦闘中はクイに移動を任せることになるので、できれば近接アタッカーになれそうなラビット。高望みするならウルフやボアあたりを狙っていきたい。


そう考えていると、1体目のモンスターを見つけた。透き通る青みががった丸めの体、スライムだ。スライムはこちらには気づいていないようで、のんきに足元の草を食べている。

まずは自分がどのくらいできるのか確かめるために、クイに攻撃はしないように指示を出して今使える唯一の【水魔法】のアーツ、【アクアバレット】を唱える。


「青き雫は分かたれ、敵を撃つ」


これが【アクアバレット】の詠唱。LGOの魔法はこうやって詠唱を行うことで発動する。中二っぽくて恥ずかしいかもしれないが、VRゲーム自体ロールプレイ色が強いのでとっとと慣れるのが重要だ。


―ビギィ!!


詠唱により発動した【アクアバレット】は俺の目の前で5つに分かれ、一直線にスライムに突撃する。だが流石に1発では仕留めきれなかったようで、こちらに気づいたスライムは警戒の姿勢を取った。

ここでスライムに対して【鑑定】をしておく。通常のモンスターへの鑑定結果と、体力が見えるなら今の攻撃でどのくらいダメージを与えたのかの確認だ。


―――――――――――――――――――――――――

種族 :スライム

レベル:1 性別:なし

体力:5/10 魔力:3/3

状態:アクティブ

???

―――――――――――――――――――――――――


スライムならレベル、体力、魔力の3つが見えた。体力はちょうど半分、5つに分かれていたから1発1ダメってところか。確認も終わったので【アクアバレット】をもう一度発動してスライムを倒す。倒されたスライムは砕け散り、ドロップアイテムと経験値を落とした。

スライムから得られたのはジョブ経験値1Pとスライムジェル1つ。依頼の代金的にも核の方はレアドロップっぽく、出ていない。


「減ったMPは4だから、【アクアバレット】1発で2の消費。スライムに限定すれば残りのMP的にはあと14体倒せる計算か。スライムジェムが確定ドロップなら【アクアバレット】4発分を残せるな。あとはクイの【糸撃】次第か」


次に見つけたスライムはクイの【糸撃】の挙動とダメージ確認に回す。【糸撃】がライドしてても大丈夫な攻撃ならクイは移動要塞として本格採用しようと思う。


「クイ、次にスライムを見つけたらお前に任せる。俺を乗せたまま、【糸撃】で攻撃してくれ」


クイに指示を飛ばすと、クイの方から戸惑いと了解の2つの意思を感じた。まぁ俺を乗せたままは確かに困惑するかもしれないが、大事な事なんだ、分かってくれ。


というわけで1分と経たずに2体目のスライムを発見。クイから【糸撃】で攻撃できる距離まで移動できたという旨の意思が伝わってきたので、攻撃を開始させる。


―ビギィ!!


まず乗り心地への影響に関しては、ちょっとクイが溜めで前に傾くぐらいでそこまで影響しない。

【糸撃】の中身については、口から吐き出すことのできる糸をそのまま飛ばす攻撃のようだ。さらに【糸撃】を受けたスライムは、糸にからめとられているため満足に動くことができない。そんなスライムに【鑑定】を行い、状態を確認する。


―――――――――――――――――――――――――

種族 :スライム

レベル:1 性別:なし

体力:7/10 魔力:3/3

状態:アクティブ、速度低下

???

―――――――――――――――――――――――――


ダメージに関しては3ダメなので【アクアバレット】の方に軍配が上がるが、スライムの状態欄に『速度低下』の文字がある。これが【糸撃】の説明欄にもあった速度が少し下がる効果なのだろう。確認は終わったので、スライムはテイマーの初期装備のナイフで何度も刺してとどめを刺す(さっきは使うの忘れてた)。


その後スライムの他にもラビットを狩り、俺の【アクアバレット】とクイの【糸撃】についていろいろと確認したところ、それぞれ利点と欠点が見えてきた。


『俺の【アクアバレット】』

利点

・1回につき5発撃てるので、命中率が高い

・【水魔法】の特性なのか、ある程度コントロールが効く

欠点

・全弾命中しないと最大威力にならない

・魔力コストが必要なので無駄打ちできない



『クイの【糸撃】』

利点

・速度低下のデバフがつく

・魔力を消費しないので弾数に上限がない

欠点

・撃つためにある程度溜めが必要

・単発なので当たらないと仕事しない



双方の評価はそれぞれこんな感じ。

そして俺とクイの両方に共通した問題点が1つ。そう、攻撃方法的に俺もクイも後衛なのだ。手っ取り早い解決方法として、クイから俺を降ろして前衛にする考えもあるが、そんなことをすれば俺の悠々自適な楽プレイに支障が出る。だからこれは却下。

ということは、やることは1つだ。


早急に前衛を手に入れる必要がある。


_________________________


あとがきスキル解説

【騎乗】

ライド可能なモンスターなどにライドするのに役立つスキル。

スキルレベルが上がるほど、どれだけ無茶な姿勢でもライドすることができるようになるほか、無茶な移動をしても酔わなくなる。

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