射的

「カケル違うよ、そうじゃないってば!」

「自分も出来ないくせにうるせーな!」


 僕とカケルは射的屋の前で騒いでいた。もちろん、周りの迷惑にならないように静かにではあるけど。そんな僕たちを後ろから見守ってるのがイオリとナナちゃん。まず僕たちが何を口論してるかと言うと……


「狙いがブレてるの! 固定してよ」

「お前が横でうるさいから集中できないんだよ!」


 カケルには今、僕が考え出した絶対に射的で上手くいく方法を検証してもらってるんだけどカケルがちゃんとしてくれないの。


「うげ、残弾数が……」

「カケル、僕たちで言い争ってる場合じゃない。協力しよう」

「そうだな」


 僕とカケルは頷きあう。

 まずカケルが台に肘をつき銃を固定させる。次に僕が銃口の角度を計算して調整……


「ナルって物理学得意なの?」

「雰囲気じゃろうな」


 最後に外野の声は聞こえなかったことにして……


「発射」

「うぉぉおぉ!」


 僕らの気合十分な弾は景品に一直線に飛んでいき、景品に見事命中──


 ◇ ◇ ◇


「「はぁ…………」」


 僕らは道の脇の段差に腰掛けながら深いため息をつく。結局、射的の結果がどうなったのかは想像に任せるけど……はぁ…………………


「明らかな落ち込みようじゃな。はよ切り替えんか」


 頭上から降ってくるイオリの声。

 そうだよね、いつまでも過去を引きずってちゃダメだ。よし、忘れよう。ほらカケルも元気出して。確かに射的に二千円も溶かしちゃったけど……


「三発五百円とか高すぎるよな」

「全然切り替えれてないわよ」


 おっといけないいけない。忘れよう……もんもんもんもん…………よし忘れた。


「お前までネタキャラに走ったか」


 そんな憐れむような目で僕を見ないでよ?! というか今まで僕ってネタキャラじゃなかったの?!


「串食おうぜー」


 いや無視されたんだけど……なるほどね、これが普段カケルが味わってる気持ちか。確かにツラい……これからは、


「今日の分を何倍にもして仕返してやる……」

「何でそうなる?!」


 ペシッとツッコミの裏拳が僕に当たる。

 そのまま僕らはしばらく見つめ合った後、ほぼ同時に吹き出す。大声で笑うと周りからの視線が痛いから含み笑いみたいな感じになっちゃった。


「うん、しょっと……」


 僕はぴょんと立ち上がる。横を見るとカケルも立ち上がってた。よし、じゃあ気を取り直して屋台巡り再開しようっか♪


「まだ花火まで時間はいっぱいあるしね」

「そうじゃの、存分に楽しめよう」

「焼きそば食おうぜ」

「私はたこ焼きにしようかしら」


 確かに、お腹空いてきたかも……よし、じゃあ各々何か買ってきてどっかで会おう。どこ集合にする?


「真ん中のステージの前で良いんじゃないか?」

「そうじゃな、彼処が一番わかり易いしの」

「私はどこでも良いわよ」


 丁度皆で見たかったのあるし僕も賛成だよ〜。


「なら、ステージ前集合で、一度解散ね」

「おう。それじゃお前ら、また後でな」

「それじゃ、私も行ってくるわ。また後でね」

「さて、妾も行くとしようかの。また後での、ナル」


 よし、皆も行っちゃったし僕も何か買いに行こー。何食べようかな〜……とりあえず串でも買いに行こうかな。今日はお肉の気分だぁ…


 ◇ ◇ ◇ 〜??side〜


 はぁ、ほんとどこ行ったんだ……?

 マズイな、人も多くなってきたし早く見つけないといけない。えと、あの子が好きなのは……


「肉好きだからなぁ、とりあえず串の方でも見に行きますか……」

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