チーム結成「カイナ隊」
カイナ隊、真の結成!!
「疲れたねー」
「全くヒヤヒヤしたわよ」
「流石ナル様です!!」
「あーするのは察していたけど、豪快だったな」
僕、ナナちゃん、月海ちゃん、カケルの順に話す。場所はイオリの部屋。あの後結局料理は冷えちゃったので作り直してくれることになった。ごめんなさい、だよ、ほんと……間違ってたとは思わないけどね。
「「「「……順番的にさ」」」」
と、声が揃う。僕らが見るのはイオリ。いつもは僕らが床に座ってもベッドに座ってるのに今日は床に座っていた。しかも正座。
「…………私と居たら迷惑かな」
私?! な、え、ん? 何で?!
「「「…………」」」
僕以外の三人はみんな少し驚いたようにイオリを見ていた。萌葱兄妹は目を軽く見開いて、ナナちゃんはなんか「遂に言うのね」みたいな目を……え! ワケワカメなの、僕だけ?!
「三人は知ってるだろうからこれはナル君に、だけど。ちょっと昔話をするね」
ナル、君……?! と、少し変なところに引っ掛かりながらも、僕はとりあえずイオリの言葉を待った。よくよく考えてみれば、イオリは自分の過去を僕に打ち明けてくれるんだよね。それって、かなり信用されてるってことなのかな……そうだったら良いな、と僕は頬を緩めるのだった。
◇ ◇ ◇
「どこから話せば良いんだろう。とりあえず、昔の私がどんなんだったか、からかなー」
「昔の私は今とは全然違ってんだよ。もっと大人しくて、口調もトラウマを克服する前の菜奈くらいだったかな」
「えへへ、意外でしょ。それでね、当時の私は母様やお兄様にも逆らえなくて学校の友達とかに酷いことしちゃったの。萌葱や菜奈はその時に知り合った」
「そうそう、その通りだよナル君。友達がいなくなっていく私に二人は寄り添ってくれて……でも、柊樹家の権力には二人もどうしようもなかったみたいでね」
「二人の家族にまで迷惑かけちゃったよね。それから私は家から出るのも辛くなって……二年生の夏休みから不登校。そんな私は母様の不満を買ったみたいで虐められたんだよね」
「今はもう気にしてないけど……当時は本当に辛かったよ。毎晩泣いてたもん。え、じゃあ何で今みたいになったか? 知りたいの? ナル君が可愛く頼んでくれたらいいよ♪」
「……良くできました。えっと、私が今みたいになった理由だよね。えっとね、端的に言うと小説のおかげかな。ふふふっ、ちゃんと説明するからー」
「私の部屋、見てもらえれば分かると思うけど本が一杯でしょ? え、今気付いたの……まぁいいや。兎に角この本たちはね、私が部屋に閉じこもってる時に菜奈と月海ちゃんがくれたやつなんだ」
「萌葱はくれなかった。というか来なかった。というか来ちゃいけなかった。菜奈たちもね。本当に無茶してくれてありがと」
「それでね、その本たちの中の一冊……今はもう捨てられちゃったから無いけど、その一冊がすべてを変えたの」
「えっとね、内容は貧弱な王子様が庶民の娘と会って変わっていくっていうストーリー。王子様はねその母様とかに逆らえないの。うん、私と同じだった」
「だからこそ、主人公になった気分で読めた。主人公の苦しみが分かるしね……そして、主人公が惹かれたように私も庶民の娘に惹かれたんだ」
「彼女は今の私──いや、妾のような女性じゃったよ。気高く何事も無駄を許さない。妾はそんな名もなき庶民の娘に惹かれた。故にいつからか模倣するようになったのじゃ」
「母上たちはよく思っておらんがな。父上だけは認めてくれた。だからこそ父上だけは尊敬する。父上に迷惑かけまいと、母上たちとの遭遇率を低めるためにこの物置部屋を改造させた」
「──っと、父上の話になるところじゃったな。兎にも角にも妾が妾になったのはこういった経緯からじゃ。今の方が断然楽しい故、後悔などはしておらんがな」
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