第6話
「独居老人で、一人で暮らすのが寂しい人っていうのは多いんですよ」
帰りのワゴン車、リーダーの人がボソッと話し始めた。
「別に何もしなくても、そこに人が居るだけで不思議と、そう言うのって消えるんですよ」
リーダーの人がウインカーを出すと、見覚えのある景色が窓の外に見えて来た。半年も経ってないのに、何十年も帰っていないような気分だ。
「流石に『家をあげる』って言った時は驚きましたけど」
「え?」
「そうとう好きだったんですね、あなたの事」
数ヶ月後、僕の口座にまとまったお金が入っていた。
家に着くと、リーダーの人から名刺を渡された。
「また、引きこもりたくなったら連絡下さい」
冗談ぽくそう言い、家に荷物を置いて、三人は去って行った。
家に帰ると両親がいた。
思ったよりも老けていなかった。
部屋に入ると、お婆さんの家に行く前の僕の部屋があった。全部が狭く感じ、とてもジッとしていられず、コンビニに求人雑誌を買いに行った。
アルバイトは続いたり、続かなかったりを繰り返し、やっと自分でもできる仕事が見つかった。
ごみ収集の仕事で、歳をとったベテランの人とペアだった。体力はキツかったけど、ベテランの人は無口な僕でも嫌な顔しないで仕事をしてくれた。
一年が経って、お婆さんのお墓参りにまたあの場所に向かった。場所を知らないので、リーダーの人の名刺から場所を聞いた。
久しぶりにあの家に行くと、お婆さんの家はそのままの形で、知らない人の洗濯物が干してあった。
家があってホッとした。
お墓参りを済ませると、散歩コースを回った。途中、何人かのお爺さんお婆さんに声を掛けられた。
「挨拶できるようになったんだねぇ」と褒められてるのか馬鹿にされているのか分からない事を何人かに言われた。
一人になると、お婆さんが元気でいるかが気になった。もう、家族の人には会えたんだろうか?
それだけが心配だ。
数年経って、僕は正社員になった。免許も取った。
相変わらず、喋るのは苦手だ。
でも、そこにいる。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます