第6話 薔薇を送れない悲しさ

「やあ、こんにちは!」

こちらもまた輝く金髪の、手袋をした手に薔薇の苗を持った、おそらく庭師と出会う。陽の光の元、さっきのメイドの髪よりプラチナに近い美しい髪の美丈夫が、白い歯を見せて人懐っこく笑う。思ったより大人の人だ。二十歳、はすぎているかも知れない。

「君のことは知ってるよ。僕は町の方で育ったけど」

「この髪を知らない人はいないでしょう」

「……お母さまのことは、残念なことだけれど、誇りなよ、君は三色分の髪色持つ、女神みたいな不思議な人だよ。三人分の髪色の人生を生きてるんだ」

励まそうとしてくれている。『特別な人』はやはりこの人かも知れない。

ミケは恥ずかしがりながら

「水の国の占いでここまで来たんです。『特別な人』をさがしに……」

ここまでは、自分が自分じゃないみたいに強気に来すぎた。

目の前の相手にカマをかける。

どうか、わたしのこの呪を祓って。

「ざんねんだけど、……」

嫌な予感がする。

「僕も年頃になった頃、恋占いをしてもらったよ。相手は、他の人が好きで思いが届かないんだ……」

「なっ!」

どういうこと!

「占術は、所詮占いだけれど百発百中。ちょっと前までは悪い縁を結んで世界を操っていた強力なものだ、安心して、いまは良縁を結ぶようにできているから。そうしないと世界どころか、星が割れるよ」

「言っている意味が、わからないのですけれど……」

万物は流転する。魂も流転した。

「かつての『老人たち』、魔術師たちが、ちっちゃいながらにも愛にがめつくてね、みんな、いろんな世界を覗いて泣くわ喚くわ、その度に天災だわだから、あまり上手くいえないけれど。要は恋占いは信じていいよ。ここ数年のわね」

手元の薔薇を愛しそうにエプロンに据える。

「誰かへの贈り物ですか?」

すると、プラチナブロンドの髪の美丈夫は苦しそうに首を横に振り、

「赤がいいんだってさ」

だから、これはあげる練習。

悲しそうに、黒薔薇の園へ合流させ、多めに水をあげていた。

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